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いつだって日はまた昇る  作者: paiちゃん
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H-134 七海さん達がやってきた


「まるで宝さがしですね。ゾンビは宝の番人でしょうか」


「エディからその言葉が出るとはなぁ……。明日は雨、いや吹雪くかもしれん」


オリバンさんの評価に、俺達も思わず頷いてしまった。

確かに、らしくない……。


「フム……。クリスの教育の賜物と言うべきかもしれんな」


 クリスはファンタジー小説が大好きらしいからかな? しっかりとエディを感化しているようだ。

(なんだよ、お前達まで!) そんな目で俺とニックを見ているんだけど、俺達もレディさんの呟きこそが正しいと思っているんだよなぁ。


 場の雰囲気が重いものからいつもの軽い雰囲気に変わったのは、エディの呟きを評価したオリバンさんとレディさんのおかげなんだろう。


「まぁ、エディもだいぶ大人になったと思うことにしよう。ニックとサミーはもう少し頑張れねばいけないぞ。それで先ほど+の話に戻るが……」


 俺達の役割が、先行偵察と隠匿倉庫の確認であることを再度レディさんが皆に伝えた。


「ペンデルトンの基地が広すぎるというのも問題ではあるのだが、歩いて調べる訳ではない。それに隠匿倉庫意外については、中のゾンビを倒すのではなくその中にいるゾンビの概数を調べれば十分であることを確認している」


「要するにハンヴィーで走り回れば良いということだ。とはいえ点在していることは確かだ。我等がロッキーに戻るのは来春。それまでには終わるに違いない」


「クリス達は、まだ指揮艦で暮らすことになるんでしょうか? 島が一段落したなら、俺達と合流しても問題ないように思えるのですが」


「そうだな。確かに向こうに置いておく必要はないだろう。私から大佐殿に確認する」


 賑やかになるんじゃないかな。

 今のところ2部屋を提供して貰っているから、七海さん達がやって来てもマリアンさん達と一緒に過ごせるだろう。


「さて、それでは明日の予定を話すぞ。隠匿倉庫については、北の演習場に点在しているようだ。調査は少し先でも良いだろう。先ずは点在する施設群ごとに建屋のゾンビを確認する。最初は、ここで良いと思う。飛行場の北東から北西に走るバシロン道路の途中にあるこの施設群だ」


「アニマルシェルターがある施設群ですな。さすがに保護動物はおらんでしょう」


 保護動物センターが基地内にあるとはなぁ……。

 ペットだけではなく野生動物も対象だからだろうか? ケージや檻に入れた動物の世話をする人はゾンビになったか、それとも逃走しただろう。

 残された動物は悲惨な最後を迎えたはずだ。


「ある程度纏まりがある方が良いだろう。サミーと私で建屋内のゾンビを確認する。軍曹達は周辺の偵察と徘徊するゾンビを始末して欲しい」


「了解しました。となれば、パット達が合流したなら我等と一緒の行動でよろしいですな。ドローンでの広域偵察、町へのジャック設置も我等で行えます」


「ジャックの使用は先行偵察の範囲を越えているが、先に行っておくなら通りを徘徊するゾンビの数を減らせる。中隊長と調整する」


 日を開けて2度行えば町に入るのも安心できそうだ。基地内に町だけでなく住宅地もあるんだからなぁ。元日本人としては常識を疑いたくなる。


 明日の行動計画が出来たところで、雑談が始まる。

 話題はやはりクリスマスなんだよなぁ。

 自宅で過ごしたクリスマスよりも、ロッキーの山小屋でのクリスマスが印象深いのは皆も俺と同じなんだろう。


「ここでは、夕食のレーションにワインが1杯と言うところだろうな。この基地も通常通りであるなら盛大に祝うのだろうが……」


「やはりケーキは出ないってことなんですかね? クリスマスと言ったらケーキなんですけど……」


 俺の呟きに、皆が憐れむような顔を向けるんだよなぁ。そんなおかしな話でもないと思うんだけど。


「日本人の異文化交流と魔改造がクリスマスまで及んでいるのだからなぁ……。私が初めて日本のクリスマスケーキを見た時には、自分の眼を疑ったぞ」


「見事な丸いケーキにウエハースで作られた家。屋根の雪はクリームでしたな。家の前にはサンタクロースとトナカイのロウソク、それに小さなクリスマスツリーはさすがにプラスティックでした。ケーキは3段のイチゴケーキでしたよ。私と妻は呆れるばかりでしたが、子供達は大喜びでしたね」


「そんなケーキと一緒に、フライドチキンを食べるんだ。飲み物はアルコールの無いシャンパンだよ。たぶん炭酸飲料なんだろうけどね。それを食べて早く寝ると、翌朝枕元に望んでいたプレゼントがあるんだ。俺の場合は殆どがゲームソフトだったけどね。

 そして、ここからが一番大事なことになるんだが……。

 クリスマスからほぼ1週間後には新年になる。これは子供達にとってクリスマスに次ぐ重要な日でもあるんだ。

 新たな年の始まりには、子供達は両親や親戚からお年玉を頂ける権利がある。この権利は生まれてから大学を卒業するまであるんだ。

 落とし玉と言うのは、紙袋に入れたお金なんだけどね。親戚が多いと……そうだなぁ、千ドルを越えるんじゃないかな。さすがに赤ちゃんはそこまで集められるとは思わないけどね」


「そんなに貰えるのかい? 子供時代は日本で過ごしたいな」


「親は大変ね。クリスマスの次はお年玉ってことでしょう?」


「その為にボーナスが12月に出ると親父が言ってたよ。早々、ボーナスと言えばもう1つは夏に出るんだ。それはお盆に備える為だとも言ってたな」


 お年玉なんて、もう貰うことは無いだろうな。いつか子供が生まれて、その子供が物心つくころになったら渡してみよう。伝統は続けることに意義があるんだからね。


「全く日本人の宗教感覚には、開いた口がふさがらないな。それで、日本人はサンタクロースを信じているのか?」


「ジュニアスクール前の子供達なら、9割は信じていると思いますよ。ジュニアスクールになるとませた子供がいますからね」


「その辺りはアメリカと同じなのね。それでいてキリスト教徒じゃないんでしょう?」


「皆が楽しめるならそれで十分という感じなんでしょうね。ですから本来のキリスト教徒的な祈りは何処にもありませんよ」


 そんな憐れむような眼で俺を見ないで欲しいんだけどなぁ……。


「それで天国に行けるか? それはちょっとなぁ……」


「行けると思うよ。だから山小屋で石を刻んだんだからね。葬る時には、エディに読んで欲しいね」


「出来たのか? 確かに私でも読めるのだが……」


 ちょっと戸惑っているようだ。まぁ、エディの事だ。宗教的なことは無視して友情で読んでくれるだろう。

                ・

                ・

                ・

 七海さん達が基地にやって来たのはそれから2日後の事だった。

 食料をたっぷりと持たされたらしいけど、レーションではねぇ……。

 

「とりあえず、部隊全員が揃ったな。春までは此処から動かずに済みそうだ」


「ヘリから見たんだけど、大きな基地ね。近くに町があるけど」


「近くに町があるんじゃなくて、基地の中に町があるんだ。その町からゾンビを掃討するのは別の部隊が行うが、建物内に潜むゾンビを確認するのは私達の仕事だ。円滑に行うためにジャックを何度か仕掛けて欲しい」


 うんうんと頷いているから、任せておけるだろう。どこに仕掛けるかはオリバン軍曹が指示してくれるはずだ。


 翌日から、七海さん達がエディ達と一緒にハンヴィーで出発する。

 マリアンさんの運転するハンヴィーにはピックアップトラックの荷台ほどの大きさのトレーラーが付いていた。

 あのトレーラーにドローンが積んであるんだろうな。

今日は北東にあるオニール湖周辺の建物を調べるらしい。オニール湖の北には住宅街もある。早速ジャックを仕掛けるに違いない。


「さて、私達も出掛けるぞ。今日はコンバットタウンを2つ巡って、射撃場を2つだ。射撃場の先に町があるのだが、目視確認だけでもしておこうか。ナビは私がする。先行してくれ」


 アイドリング状態のバイクに乗って、北に向かう。左手の大きな格納庫を過ぎたところで右に曲がると、駐車場の真ん中に道がある。その道の先がバンデグリフ道路との十字路になる。

 左に曲がり、次の三差路を左に曲がればバシロン道路だ。

 途中に脇道があるな。あの先にも建物があるんだろうか?


『次の小さな十字路を右だ』


『了解です』


 それほどキツイ山ではないけど、林間道路を走っている気分だ。対向車の心配が無いから道の真ん中を走れるのが嬉しくなる。

 レディさんの言っていた十字路はあれだな。

 体を神義に倒しながら後輪にブレーキを掛ける。後輪がロックしバイクが横滑りするのを体重移動でバランスを取る。

右手の道路が見えたところでブレーキから足を話してアクセルを回す。土煙を上げながらあまり速度を落とすことなく右手に進路を変えてバイクが走り出した。


 バックミラーで後ろを見ると、バギーとの距離が少し離れてしまったようだ。

 速度を緩めてバギーが近付くのを待つ。


『次の三差路は左だ!』


『了解!』


 Y字型の三差路を左に進む。

 やがて前方に廃墟が見えて来た。


『あれがコンバットタウンだ。最初のT字路で止まってくれ』


『了解です。でも廃墟ですよ』


『誰も住んだことは無いぞ。中身が無いからな』


 通信の最後は俺の言葉を面白がっているのか、含み笑いが漏れていた。

 指示通りにバイクを止める。

 周囲を見渡したがゾンビはいないようだな。集音装置を作動させてゾンビの声を確認すると、はっきりとゾンビの声が聞こえてきた。

 廃墟だからなんだろうか? 結構よく聞こえるな。数は……、5体だな。この町の一角を廃墟にしたような建物のどこかに潜んでいるということなんだろう。


 バギーがバイクの隣に止まる。

 周囲にゾンビが見えないから、タバコを1本取り出し火を点ける。

 レディさんもタバコを取り出したから、小休止ということになるんだろう。


「5体いますね。姿が見えませんから建物の中かもしれません」


「ここは市街戦の訓練施設なんだ。窓はあるが壁と扉だけが殆どだ。中には2階を持つ建物もあるぞ」


「町の一角を再現しているようですね」


「その通りだ。ここはヨーロッパ的な雰囲気に作ってあるが、アラブの住宅を模したものや、アジア風のコンバットタウンも作られている」


 世界のどこに行っても戦えるように、訓練するということなんだろうな。

 案外他の軍も同じような訓練施設を持っているかもしれない。

 無駄使いにも思えてしまうが、他の部隊と共有は考えていないようだ。それだけ自主性を重視してるんだろうな。


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