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いつだって日はまた昇る  作者: paiちゃん
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H-127 突入部隊を選ぶのはトランプで


「先ほど目標となる統率型ゾンビは、3階もしくは4階にいるとの話でしたね。なら、あえて騒ぎを起こしてゾンビを1階に集めることも出来るのではありませんか? 周囲のゾンビについては事前措置が可能に思えます」


 さすがは武装偵察部隊だ。直ぐにアイデアが出るんだからなぁ。事前措置は、周囲の建物でゾンビの多そうなところということになるだろう。道路の向こう側のゾンビについてはジャックを仕掛けるのもおもしろそうだ。

 でも、建物内のゾンビを集めるのは案外難しいんだよね。


「もし、事前措置を考えるなら、ゾンビの動きを考えるべきでしょう。ゾンビは階段が苦手なんです。でも物音を立てると、無理して降りようとしますよ。階段を転がり落ちるゾンビを見たことがあります」


「面白そうだな。音を立てれば良いんだな? 1回では無理そうだから、継続した音と言うことか」


「グランビーでは目覚まし時計を使っていたと聞いたぞ。建屋を探せば何個か見つかるのでは?」


「確かに言ってたな。おもしろいことを考えた奴もいるもんだと皆で笑ってたんだが、そういうことか!」


 水を向けると、ちゃんと考えてくれるみたいだな。

 脳筋だったらどうしようと思っていたんだけど、さすがは海兵隊だ。頭の回転も素早い。


「キャルル、下の連中に、大至急目覚まし時計を集めるよう伝えてくれないか。見つからない場合は揚陸指揮艦に連絡して至急送って貰うんだ!」


 曹長が通信兵に指示を出してくれたから、これで目覚まし時計は手に入るに違いない。

 

「さて、そうなるとジャックを仕掛ける場所は……」


「ここと、ここ。それに道路の反対側についても、この辺りに仕掛けた方がよろしいかと」


 地図の上に鉛筆で設置場所を描いていく。中々考えてるなぁ。俺もその位置なら同意できる。


「道路向こうは民間の店も多いですからそれなりに人が多かったはずです。ここにも仕掛けてはどうでしょうか?」


 さらに1個が追加される。

 そんなに持って来たんだろうか? 追加を要請しておかないと明日以降苦労しそうに思えるんだけどなぁ。


「これで、後方からのゾンビを少しは少なくできるだろう。だが、問題は研修棟だ。1階はエントランスに食堂、それに休憩室とトイレだったな」


「そうです。2階と3階が研修室。20人の兵士が入る部屋が6つに実習室が2つずつ」


「4階は、教官の個室が10個に補助教官の人部屋が10個。それと研修統括の校長室と会議室……」


 部屋にあった筆記用具を使って各階の見取り図が作られていく。

 全員がこの研修棟で研修を受けたということなんだろうな。


「ここが非常口で、4階までの階段はエントランスから続く通路のこの辺りと奥のトイレの隣だったぞ。こっちの階段は屋上まで行けるんだ。そこで良く一服したものだった」


 んっ! 今、屋上に至る階段と言ったよな。

 それなら……、良い手を思い付いたぞ。


「部隊の順次投入という形がよろしいかと。この階段まで制圧したなら次の部隊を呼んで上階に向かわせることが可能です」


「全部隊を動員することに成ってしまうな。さすがに後方警戒を無くすことは出来んだろう。支援を要請すべきかもしれん」


 ボルトン曹長の具申に、ワトソンさんが腕を組んで考え込んでしまった。

 さすがに、威力偵察にやって来て直ぐに救援要請出すのは問題だと思っているのだろう。


「あのう……。俺から1つ、よろしいですか?」


「ああ、サミー伍長には実績があるからね。何かいいアイデアを思い付いたのかい?」


「良いアイデアかどうかの判断は出来兼ねますが、この建屋の屋上からゾンビを掃討していったらどうでしょう。順次投入の場合は統率型ゾンビを倒すまでに時間が掛かりそうです。上からなら、上手く行けば4階で倒せますし、4階にいなければ直ぐ下の階になります」


 皆が一斉に俺に視線を向ける。

 その手があったという感じだな。海兵隊はヘリボーンが出来てあたり前らしいから、この部隊なら何ら支障がない筈だ。


「残りの3分隊を順次投入するということか?」


「いえ、1階のエントランスでゾンビを迎え撃って貰います。2個分隊なら無理はないでしょう。残り1個分隊は建屋の外の監視です。おざなりにしたなら挟撃されかねません」


 次善にあちこちにジャックを置いてゾンビを狩るとは言っても、集めたゾンビを全て跳躍爆弾で倒すことなど出来ないからなぁ。

 良くて半分、悪くすれば2割を狩れるぐらいに考えておいた方が良さそうだ。


「整備兵にも、外の監視部隊に加わって貰うのが良いでしょう。M19があればエアバースト弾が使えるんですけどねぇ……」


「あるぞ! 2丁持って来ている。今の内にバギーに搭載しておくか」


「弾種はエアバーストなんだろうな?」


「多目的弾とエアバーストが半々だ。だが、統率型ゾンビはエアバースト弾で倒したんだろう?地上から上階に撃ち込むことは出来るが、どこに撃ち込んで良いのか分からんぞ」


 軍曹の1人が俺に問いかけて来た。

 確かに今まで倒したのはエアバースト弾だった。グレネードにしても迫撃砲弾にしても……。


「銃で倒そうと思います。とはいえ初めてですから俺の推測が間違っていたなら、すかさず手榴弾を使ってください。統率型ゾンビと一般のゾンビは見ただけでは分かりません。唯一の違いは、ゾンビの声を聴く装置から聞こえる音の違いです。確実に判明したなら通常は頭に穴を開ければお終いなんですが、統率型の場合は更に銃弾を撃ち込む必要があります。こことここ……。両胸に何発か撃ち込んでください」


「頭だけではないってことか!」


 誰かの大声に、ゆっくりと頷いた。

 確実に分かったわけではないんだが、知能を持ったゾンビということになるなら、通常よりも脳に当たる部位が大きくないとダメだろう。そんな中枢器官が人間の体の中に納まる場所は、頭蓋骨に保護された脳と肋骨に保護された肺ぐらいしか考えられないんだよなぁ。

 オリーさんを通じて生物学の権威である学者さん達も可能性はあると言ってくれたから、かなり当たっていると思うんだけど……。


 そんな説明をすると、どうやら納得してくれた。

 やはり脳が大きいなら知能もあるんだろうと考えているに違いない。


「推定ではあるが、サミーが言ったように大統領直轄の研究機関の博士達も同意しているぐらいだ。信憑性はかなり高いと言って良いだろう。私の部隊からは、私とサミー伍長が屋上からの突入部隊に参加するつもりだ」


「待ってくれ! そうなると……」


「おいおい、抜け駆けは良くないぞ。ここは少尉殿の判断ということで良いんじゃないか? 確か前回は第2分隊が主役だったはずだ。今回は俺達の番だと思うんだけどなぁ」


 途端に賑やかになってしまった。

 早く決めないと、統率型ゾンビが動き出すかもしれないんだよなぁ。


 キャルルさんが曹長に近づいて、メモを渡している。

 メモを読んだボルトンさんの眼が大きく見開いている。テーブルの上を滑れせるようにワトソンさんの前にメモを移動させたから、何だろう? と言う感じでメモを取り上げて読んでいる。


「どうやら、要求した機材と騎兵隊を送ってくれたらしい。到着予定時刻は1330時だ。海兵隊2個分隊、それにハンヴィーが6台、レディ軍曹達の移動手段も一緒のようだ」


 それを聞いた軍曹達がちょっと焦っているんだよなぁ。

 競争相手が増えたと思ったんだろうか?


「まさか、他の部隊の特殊部隊ではないんでしょうね?」


 ブラッドさんの言葉に2人の軍曹も頷いている。

 やる気があり過ぎるのも問題なのかもしれないな。ワトソンさんが呆れた顔をしているくらいだからね。


「いや、海兵隊の連中だ。予備戦力の中から2個分隊を派遣してくる。それに、ここはペンデルトンだぞ。他の軍の連中に足を踏み込ませるなんて出来ると思うか?」


 途端に皆の顔に笑みが浮かぶ。レディさんまでもそうなんだからなぁ。

「海兵隊は良いぞ!」とウイル小父さんが言ってたのは、こんな仲間意識が強いからなんだろうな。

 困っているなら、直ぐに助けを出してくるんだからね。


「話を戻そう。レディ達の部隊には2人の軍曹がいる。おもしろい部隊構成なんだが、少し理解も出来た。サミー伍長を上手く使えるような編成ということになるんだろう。それならオリバン軍曹に残った7人を率いて貰えば、援軍の2個分隊と合わせて集まって来るであろうゾンビを迎え撃てるだろう。

 屋上から強襲する部隊は1個分隊。それにレディ軍曹とサミー伍長を加える。1階の攻撃はある意味陽動でもある。2個分隊を投入するが、場合によっては1個分隊を外の部隊に加えることもあり得る。整備兵達にはここを守って貰おう」


 それだと、前と変わらないんだよなぁ。

 再び、軍曹達が騒ぎ始めたからね。

 互いに譲るということをしないんだから困った人達だ。

 どうやら、かなり前から同じ小隊にいたようで、一般海兵として軍役をこなし、この部隊に配属になった時期は同じらしい。

 数年前のバーでの痴話喧嘩まで持ち出して、自分の優位性を説くんだからなぁ。

 最終的にクジ引きとなったのは仕方のないことだろう。

 だけどその方法が、トランプを1枚引いて数字が大きい方と言うんだから呆れてしまった。

 でも、トランプを直ぐワトソンさんが取り出したんだよなぁ。ギャンブル狂には見えないし、出したトランプも綺麗なものだった。

 この部隊は普段からこの方法でもめた時の対処を行ってるんだろうか?


「良し! 俺だ。だから最初に言ったんだよなぁ。神はちゃんと俺を見ていてくださる」


 都合の良い解釈をして笑みを浮かべたブラッドさんを、残った2日の軍曹が渋い表情で睨んでいる。

 それ以上文句を言わないのは、決まり事だからということになるんだろう。

 レディさん達もどうにか決まったというほっとした表情を浮かべているぐらいだ。


「さて、そろそろ到着する頃だ。荷受けと増援についてはボルトン曹長に任せる。アデル軍曹の兵士の中にドローンを使える者がいたな。道路向こうにジャックを仕掛けるのは任せるぞ。爆破予定時刻は1530時で良いだろう。オルゴールは1時間前から鳴らすようにしてくれ。研修建屋周辺のジャックについてはヘンリー軍曹に任せる。タイマーの設定は先ほどと同じだ。

 めでたく選ばれたブラッド軍曹は此処に残ってくれ。強襲に付いて少し話合いたい。それでは開始してくれ!」


 小隊長の言葉に、皆が一斉に席を立ち敬礼をすると2人の軍曹が部屋を出て行った。

 残った俺達が再び席に着くと、ワトソンさんがポケットからタバコを取り出し火を点けた。

 キャルルさんがまだ残っているポットのコーヒーを俺達のカップに注いでくれたところで、俺もタバコを取り出す。

 さて、どんな強襲方法になるんだか……。

 武装偵察部隊の強襲方法を教えて貰えるかもしれないな。


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