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いつだって日はまた昇る  作者: paiちゃん
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H-118 サンディエゴ海軍基地奪回作戦の始まり


 翌朝は、仕掛けた目覚まし時計よりも先に起きることが出来た。

 3人で甲板に出ると、結構人が集まっている。

 どうやら、目的地に近づいたみたいだな。前方に見える海峡のような場所に向かって艦隊が進んでいる。

 俺達の上空を轟音を立てて、戦闘機が飛んで行った。2回目の攻撃かな?

 たっぷりと爆弾を落として欲しいところだ。

 朝日に向かって、軽く手を合わせて頭を下げる。

 さて、朝食を軽く済ませて装備を調えよう。


 インスタントのコーンスープにバタートースト、デザートは缶詰のパインだった。

 今日は動き回らないといけないから、食事は軽めにしておく。お腹が空いたらカロリーバーを齧れば良い。

 用意して来た水筒に水を入れたところで食堂を後にする。

 まだ時間があるから、娯楽室でコーヒーを飲みながら朝の一服。

 時間は7時前。娯楽室は俺達3人だけのようだ。

 一服を終えた頃に、マリアンさん達が現れた。まだ装備を調えていないから、俺と同じようにコーヒータイムと言うことなんだろう。


「甲板への集合時間は8時だったよね。そろそろ準備しなくちゃ」


「早い分には問題ないだろうね。甲板で状況を見ることもできそうだ」


 それならと全員が席を立つ。

 部屋に戻って装備を付け、銃を背負って階段を上る。

 恰好だけなら立派な海兵隊員に見られるに違いない。


 甲板に出て驚いた。目の前に大きな島がある。船首に顔を向けると、西から島に向かって繋がる連絡橋が見えた。片側2車線と言うことだからかなり幅がありそうだな。あの上にヘリから降りることになるんだよなぁ。


「住宅街にだいぶ火の手が上がっているぞ。ゾンビの姿もちらほら見えるよ」


 エディが双眼鏡で島を見ながら状況を教えてくれた。


「俺達は橋のたもとにあるゲート周辺と高速警察の事務所の偵察が任務になる。それが終われば周辺の偵察になりそうだ」


「サミー、絶対に噛まれるなよ。お前がいなくなるとこれからの人生つまらなくなりそうだ」


「ニックだって噛まれるなよ。パットに一生恨まれそうだからな」


 マリアンさん達が合流し、さらに別の海兵隊の連中も甲板に上がってきた。

 彼らもヘリンボーンで先行偵察の任務を帯びたのだろう。


「ヨォ! 初めて見る顔だな。そっちは砂洲の方に向かうのか?」


「いや、橋のたもとの口だ」


「そっちの方が大変そうだな。俺達は橋の上で簡単な阻止線を作るだけだ。気を付けて行けよ」


「ありがとう。そっちも頑張ってください」


 海兵隊は皆仲間同士、俺達の存在が気になっただけのようだ。

 一服しようかと考えていると、レディさんが軍曹と共に俺達の所にやって来た。

 俺達に笑みを浮かべると、新たなワッペンを配ってくれた。

 これって!


「サミーの家の紋章だ。中々良い出来だ。色合いは、私の先祖が暮らした国の国旗を使わせて貰ったぞ」


 地が赤でカラスは黒、黄色の刺繍で上部にUSMCFR9と描かれている。

 配色はドイツ国旗ということかな?

 だけど、この意味が分からないんだよなぁ。


「このワッペンとの違いが分からないんですけど?」


 エディの問いに俺達が頷くのを見て、おもしろそうに軍曹と笑みを交わしている。


「今付けているワッペンは特殊部隊を示すだけだったが、今配ったのは正式な部隊章なんだ。アメリカ海兵隊武装偵察部隊、通称;フォース・リーコンと呼ばれる部隊がある。俺達はその9番目の部隊になるわけだ」


「さすがに私達がフォース・リーコンを名乗ることになれば、既存の部隊の連中が憤慨するに違いない。最後の9は彼らとの区別に付けたものだが、少将は無くても良いと言ってくれたぞ。それだけ期待されているということになる」


 それならワッペンを付け替えた方が良いんだろうな。ベリっとワッペンをはがして、新たなワッペンを左の名前の上に着けておく。


「さて、準備は出来ているようだな。11番のヘリと聞いたからそろそろ乗り込むか」

 

 どれが11番機なんだ?

 甲板を眺めると、艦首近くに停めてある輸送ヘリの横に11と番号が書かれている。あれだな……。

 すでにエンジンはアイドリング状態のようだ。

 時計を見ると8時15分。出発は8時30分の予定だから、そろそろ乗っても良いだろう。

 レディさんに連れられて、11番機に向かった。


「13分前です。全員揃ってますね?」


「ああ、これで全員だ。乗らせて貰うよ」


「降下は、ガンナーの指示に従ってください。なるべく道路傍まで降りるようにします」


「無理はしないでくれ。終わったなら、ゾンビを倒しながら帰投するんだろう」」


「ガンナーが張り切ってますよ。なるべく数を減らすようがんばります」


 かなり大きなヘリだ。貨物室兼用の区画にはベンチシートが3つも並んでいる。1つのベンチに3人は座れるし、奥の方には壁に畳まれている椅子まである。俺達は10人だから十分に乗ることが出来る。扉の上の金具にはすでに降下用のロープが取り付けられている2本あるから、全員の降下にそれほど時間は掛からないだろう。


 シートベルトが無いんだよなぁ。落っこちたらどうしようかと考えていると、横スライドの扉をガンナーが閉めてくれた。


「さて3分前だ。出来ることを出来るまで! それで行けば良い」


「「了解!!」」


 レディさんの励ましに大声で応えると、俺達を乗せたヘリがローターの音を響かせて飛び上がった。

 それほど時間も掛からずに橋の上空に到達する。

 下を見ると、ゾンビの姿は何処にも見えない。今の内に降りた方が良さそうだ。

 ヘリのパイロットも同じことを考えたのだろう。橋に向かって徐々に高度を下げていく。

 

 さすがに着地はしないようだ。数mほどの高さでホバリングを始めると、ガンナーがレディさんの肩を叩き、扉を開けてロープが結ばれた金具を引き出した。引き出し終えると金具をロックしてロープを地上に落とす。

 レディさんが入り口近くのバーに捕まって俺のヘルメットを叩く。最初は俺ということかな?


 席を立ってロープを掴むと、ヘリのソリに足を乗せた。金具がソリよりも飛び出しているから、このまま降りても体をソリに打ち付けることは無いだろう。

 ロープを掴んだ手に力を入れて足をソリから離す。

 足にロープを軽くからませてロープを握った力を緩めると、するすると体が滑り下りる。

 着地したなら直ぐにヘリに向かって手を振る。次はニックとエディのようだな。

 担いでいたM4カービンを両手に持ち、先ずは周辺を素早く確認する。

 近くにもう1機ヘリが近付いて来た。確か橋の上に阻止線を作ると言っていたから、その連中に違いない。


「どうだ? いたか?」


「全く見えないね。橋を下りたらどうなるか分からないけど……」


 周辺監視の人間がどんどん増えてくる。

 最後に降りてきたのはレディさんだった。周辺にゾンビがいないことを伝えると、直ぐにトランシーバーで指揮艦に連絡しているようだ。


『了解、ここで待機する』


 どうやら終わったのかな。直ぐに俺達を呼び寄せると、簡単に状況を説明してくれた。

 今のところ戦闘に至った部隊はいないらしい。次のヘリが俺達の乗り物を運んで来るとのことだから、それまでここをキープするとのことだった。

 キープと言えば聞こえは良いけど、ここで待てということだよね。


 輸送ヘリが網でハンヴィーを懸架してきた。俺達から少し離れた場所にハンヴィーを下ろすと、次のヘリが別のハンヴィーを下ろす。

 先に降りた海兵隊がヘリとトランシーバーで交信しながら、下ろす位置を指示しているようだ。


『来たか! 了解した。直ぐに出発する』


 トランシーバーでどこかと話していたレディさんが俺達を集めた。


「バイクとバギー、それにハンヴィーが2台届いた。私とサミーで先行偵察を行う。軍曹は2台のハンヴィーを率いてここで待機、指示を待て」


「「了解!!」」


 少し橋の奥に向かう。だいぶハンヴィーが止まっているな。

 その中に俺達の目的の品が置いてあった。ハンヴィーと一緒に網で運んで来たのかな?


「レディ軍曹殿ですか? それが依頼の品です」


「確かに受け取った。だいぶハンヴィーを揃えるな」


「偵察部隊に8台、レディ殿の部隊に2台ですからね。それではお気を付けて!」


 レディさんがバギーに乗り、俺がバイクに乗る。

 ヤマハだな。かなり改造してあるけど、元はヤマハのトレールバイクだ。250ccのエンジンをアイドリングしながら、バイクの装備を確認する。後輪の左右にアタッシュケースほどの収納箱が付いている。表面はブラウンの革が張ってある。バイク自体がブラウンだから色を合わせたのかな?

 ハンドルを見て驚いた。ハンドルの強化バーだと思っていた黒いストラップの下から現れたのは、金属製の棒だった。2本あるのは連結して使えるということだな。こんな形で搭載してくれたんだ。

 さすがにライト類は前照灯だけだな。

 さて、レディさんの準備は出来たんだろうか?

 レディさんに顔を向けたら、いきなり何かを放り投げてくれた。受け取ってみると小さなトランシーバーだ。胸ポケットにトランシーバーを入れて、ヘッドセットへの接続プラグをゾンビの音を聞くために付けているヘッドセットに差し込む。優先をヘッドセットにしておけば着信があれば直ぐに交信が出来る。


『こちらはOKだ。サミーが先導してくれ』


 ヘッドセットから聞こえた声に、レディさんに顔を向けてゴーサインを出した。

 バイクに飛び乗ると、車列と人を避けながら北の出口に向かう。エディ達に手を振ったところで速度を上げた。

 バックミラーでレディさんのバギーが付いて来ることを確認して、さらに速度を上げる。

 先ずはゲートを確認しないといけない。

 すでにゾンビの声を聴く装置の電源が入っているんだが、遠くからの声だけなんだよなぁ。この島のゾンビは住宅街に集中しているんだろうか……。


 ゲートに到着すると、ちょっと拍子抜けだ。

 料金所かと思っていたんだがそんなブースがどこにも無い。

 車両の通行状況を確認するカメラが車線毎に設置されているんだが、ここで交通規制も行うのだろう。ゲート付近は車線が2倍に増えてるんだよね。


『サミーからレディ―さんへ。ゲートにゾンビの姿はありません。周辺も静かなものです。次に高速警察の事務所に移動します』


『了解した。エディ達をゲートまで移動させる。まだ中には入るなよ。1人での偵察は周囲だけだ!』


『了解です!』


 室内に入るなら、2人以上は必要だ。扉近くで中の音を聞くだけで十分かもしれないな。

 ゲートから高速警察の事務所は100mも離れていない。事務所の前にパトカーが1台だけ止めてある。

 パトカーの隣にバイクを止めるとM4カービンを前方に向けながら、事務所に近付いて行った。

 事務所の周囲に植栽があるのが面倒だな。急にゾンビが飛び出して来ないとも限らない。

 ハンドセットから聞こえて来るコオロギの声が高くなったから余計にそう思えるのかもしれない。かなり近くにいるようだ。

 植栽をよく見てもゾンビの姿が無いところをみると、やはり事務所の中ということになりそうだ。


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