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いつだって日はまた昇る  作者: paiちゃん
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H-114 ヘリボーンの訓練が必要らしい


 食事が終わったところで部屋に案内して貰った。

 士官室と言っていたけど、どうやら士官待遇の来客用の部屋らしい。

 ブリッジより前方で船首より手前と言ったところだけど、縦揺れが少ない場所らしい。

 来客は必ずしも海兵隊と言うことではないらしいから、他にも来客があるのかもしれないな。来客専用の休息室に集まって、備え付けのポットでコーヒーを作る。

 テーブルに集まって、明日からの予定を再確認することにした。


「私とサミーは午前中別行動になる。本部への着任挨拶だから、特に問題は無いだろう。オリバン軍曹はマリアンと一緒に装備品を受け取って欲しい。明日からの訓練もあるし、早めに装備品の確認が必要だろう。ジュリー達は揚陸指揮艦の見学で構わないが、パット達にドローンの指揮所を見せてくれるよう頼んで欲しい。他のドローンも動くはずだから結構賑やかな場所のはずだ」


「車両はまだ先になるのか?」


「さすがに当日と言う事にはならんだろうが、ハンヴィーの銃座にはMK19を要求しておいた」


「可能なら、ミニミを隣に付けて貰おう。バギーとバイクには?」


「ショットガンとM4カービンを放り込んでおけるラックがあれば十分だ。サミー、バイクに何か必要か?」


「そうですね……。出来れば1.2mほどの鉄パイプが欲しいところです。2分割でネジで連結出来ればありがたいです」


「撲殺用と言う事か! 同じような品を幾つか作って貰った方が良いかもしれんな。室内調査も行わねばなるまい」


 メモに色々と書き込んでいる。装備品って結構色々とあるからなぁ。

 台車に乗せて運んで来るかもしれないぞ。


「明後日は、多分ヘリボーンの訓練を行うはずだ。パット達はドローンの操作訓練となるだろう。改良されているだろうから、早めに慣れて欲しい。軍曹は経験しただろうが、マリアン達とエディ達は初めてのはずだ。教官の指示通りに動けば安全に下りられる。

 エディ達なら木の上からロープで降りたことぐらいはあるんじゃないか?」


俺達3人が顔を見合わせる。互いに首を振っているところを見ると、無いってことなんだろう。


「木の上でなく納屋の梁の上からならロープで降りたことはあります。屋根から飛び降りたことも何度かありますよ。もっとも下は土でしたけど」


「どんな遊びをしていたのか分からんが、良くも怪我をしなかったものだ。今回は着地点が道路だから、飛び降りるのは止した方が良いな。それに高さは5mほどあるはずだ」


 3mぐらいなら行けそうだけど、さすがに5mは止めた方が無難だろう。この際だからしっかりと覚えておこう。


「確か、カラビナみたいなものを使うんですよね?」


 エディが出来るのかなぁ? と言う表情でレディさんに問いかけた。


「いや、エディ達にやって貰うのは、ファストロープと呼ばれる降下だ。ロープを伝って地面に降りる。さすがに最初はカラビナを使って行うだろうが、カラビナを使うと全員が降下するのに時間が掛かるんだ」


 再び俺達が顔を見合わせる。確かに簡単そうだけど、出来るのかな?

 俺達の様子を見ていたレディさんが笑みを浮かべている。

 どうやら、最初は倉庫で訓練を何度も行うとのことだ。下にエアマットを置いてあるから、落ちても怪我はしないだろうと言っているけど、どうなるんだろうな。


「私達も参加するの?」


 ジュリーさんがちょっと顔を青くしてたずねている。


「もちろんだ。新兵訓練でも何度もロープの昇り降りをしているはずだが? あの長さが5割マシになったと思えば良い。それにロープを登らずに済むぞ」


 話を聞いたジュリーさんが、ちょっと笑みを浮かべているところを見ると尻込みするようなものでもないらしい。

 ここは覚悟を決めねばなるまい。


「さすがにヘリボーンでは訓練終了証を出すことは無いが、エアボーン訓練ならば訓練終了証が出るぞ。特殊作戦への参加を希望するなら是非とも欲しい証明だ。作戦終了時に強請ってみるか?」


 エディが興味を示してどんな訓練かを尋ねたら、飛行機からパラシュートで降下する訓練らしい。さすがにそこまで必要になるのかな?

 とりあえずは、ヘリボーンが出来れば問題ないようだから、ジッとしていよう。鳴かない雉は撃たれないからね。


「明日からの食事は下士官食堂で取ることになる。周囲は下士官ばかりだが、気にする必要はない。このワッペンを付けておけば絡んでくる士官もいないだろう」


 袖の階級章の上にもソフトファスナーが付いてたな。ここに張るのか。

 配られたワッペンは黒字で白の刺繍が入っている。装飾文字だけど『SOF』と描かれていた。


「『スペシャル・オペレーション・フォース』ですか!」


「それを見に付けている限り、1等兵でも下士官待遇が受けられる。それでも絡んでくる者がいるなら……、サミー、教育は常に大事だぞ」


 俺が相手になってやれ! と言う事か?

 この艦の士気が下がらなければ良いんだけどなぁ。


「さすがにこれなら気付くでしょう。士官食堂も利用できそうです」


 オリバンさんが嬉しそうにワッペンを付けている。1度ぐらいは行ってみようなんて考えているのかもしれないな。


「さて、これぐらいかな? 部屋で喫煙は出来ないが、ここなら可能だ。明日の0830時にここに集合と言うことにするぞ」


 解散になったから、とりあえずシャワーを浴びに出掛けよう。下着の変え持って来たからね。その後は此処でワインを楽しもう。備え付けの冷蔵庫に数本入っていたから1本ぐらいは飲んでも大丈夫だろう。

 それにまだ21時を過ぎたばかりだ。早々寝られるものでもない。

                 ・

                 ・

                 ・

 翌日は七海さんに7時半に起こして貰った。部屋にある洗面台で顔を洗い、衣服を調える。

 新たな装備は下着から戦闘服まで揃えてくれるらしいんだけど、どんな品なのかは貰ってみないと分からないんだよなぁ。

 

 下士官食堂を艦内地図を頼りに向かったんだけど、ちょっとしたレストランに見えてしまう。カウンターに並んで、料理が盛られたアルミのトレイを貰う。最後にドリンクを選べるんだけど、ここはいつもの通りにコーヒーを選ぶ。角砂糖を2つスプーンに乗せて開いているテーブルに着いた。


「あまり混んでいませんね」


「0800から開いているらしい。私達は最後の方になるのだろうな」


「俺の階級章を見て驚いてたよ。でもワッペンの力は偉大だな。直ぐに笑みを浮かべていたからね」


「このワッペンを外したら、この下の食堂だ。一度行ってみるのも良いかもしれんな」


 何事も経験が大事ってことかな?

 だけど、料理そのものはレーションを使っているようにも思える。

 生鮮野菜が無いからね。フィルムラミネートの中にある2個の錠剤がトレイの片隅にあったのは不足するビタミンなどを補填するものなんだろう。

 食事を終えたところで、コーヒーと一緒に錠剤を呑む。

 出来れば一服したいところだけど、この食堂は禁煙みたいなんだよなぁ。


「奥の扉の先は下士官室だ。休憩室と言っても良い場所だから、先に行っても良いぞ」


 レディさんの言葉に笑みを浮かべたのは俺達だけではなかった。オリバン軍曹も喫煙者だからなぁ。4人で先に下士官室へと向かう。

 数人の下士官がテーブルを囲んでトランプに興じている。

 今日は休みなのかな?

 俺達は窓際のテーブルに着くと、直ぐにタバコを取り出した。

 そんな俺達を見て、トランプをしていた男性の1人が席を立って近付いてきた。


「出来ればタバコを分けてくれないか? 船の在庫が少なくなって配給が滞っているんだ」


「それなら、これをどうぞ。デンバーのコンビニで調達した品です」


 タバコを切らしているとは気の毒だ。予備で持っているタバコを腰のバッグから取り出して手渡すと、エディ達も予備を出してくれた。


「お前達が、少尉殿の話してくれた連中か! すまんな。ありがたく頂くよ」


 仲間達の元に戻ると直ぐに封を切って皆にタバコを配っている。

 やはり嗜好品の調達は考えないといけないんだろうなぁ……。


「ここにいたか。案内人がやって来たぞ」


 レディさんの後ろから現れたのは、士官服姿の人物だった。

 

「マルティ准尉です」、「クロード准尉です」


 俺達に敬礼をしながら名を告げてくれた。部隊名を言っていないから、この艦に乗船しているのだろう。

 立ち上がって答礼をしたところで、レディさんが午前中の予定をこなすと俺達に話を始めた。


「マルティ准尉が艦内の案内をしてくれる。軍曹、引率をよろしくお願いする。パット達は特にドローンのコントロール室をよく見ておくように。明日からそこが仕事場になるはずだ。昼に隣の下士官食堂に集合で良いだろう。何かあればマルティ准尉を通して連絡をお願いする。こちらはクロード准尉を通しての連絡になる。それではサミー、出掛けるぞ!」


 そうだった。今日の午前中は挨拶に出掛けるという事だった。

 レディさんの後ろに着いて行けば良いだろう。そのレディさんはクロード准尉の後ろを歩き始めた。急がないと迷子になってしまいそうだ。


 すでにどの辺りを歩いているのかさっぱり分からなくなってしまった。

 階段を2つ上がって、通路を何度か横に曲がったんだよなぁ。通路の途中に扉を設ける意味があるんだろうか? 通行の妨げ以外の何物でもない気がするんだけどね。

 今進んでいる通路の先に、また扉が見えて来た。頑丈そうな鉄扉だ。

 その扉を開けた途端。眩しい空が見えた。

 どうやら船尾の甲板に出たらしい。


 1機のヘリコプターがアイドリング状態で待機している。

 クロードさんに促されて、前かがみになりながらヘリに近づき後部座席に乗り込んだ。

 クロードさんが操縦席のパイロットの肩を叩くと、エンジンが唸りを上げる。

 スイっと浮かぶのは、やはりエレベーターの感覚と同じだな。

 昨日はあまり気にならなかったけど、結構大きな船だ。あれに乗って出掛けるのはもう直ぐだろう。

 レディさんが俺の肩を叩いて前方に腕を伸ばす。

 そこにあったのは先ほどの艦よりもさらに巨大な軍艦だった。

 原子力空母ニミッツだ。さすがに戦闘機は甲板に並んでいないけど、数機のヘリが駐機している。

 太平洋側の軍隊を全て統合化した本部は、ニミッツの中に作られている。本部を構成してるのは4つの軍隊の代表者達のようだが、その統括者は海兵隊少将になるらしい。

 あまり無理難題を押し付けられても困ってしまうけど、その辺りの判断は保留してレディさん達に考えて貰うことになりそうだな。


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