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いつだって日はまた昇る  作者: paiちゃん
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H-110 出発の日取りが決まった


「命令書には10月20日に飛行機を出すとあるな。今年のデンバーは残り2回とした方が良さそうだ。

 ん? これだと海兵隊少将の元に直接出頭することになりそうだぞ」


「陸軍や海軍の連中に合わせたくはないということなんだろう。私達は、海兵隊としての参加になるからな」


 ウイル小父さんとレディさんが視線を交わして笑みを浮かべる。


「それで十分だ。我等は海兵隊なのだからな」


「少将としても話題の人物を一目見たいだけだろう。自分の部下であると認識しているなら問題は無いはずだ」


「装備は全て支給しるとあるが、さすがに私服では拙いだろう。頂いた迷彩服で十分だ。武装は……、使い慣れた拳銃は持たせた方が良さそうだな。今の海兵隊の拳銃はグロッグだったはずだ。ベレッタとは少し異なるし、サミー達にはグリップが細いワルサーが一番だろう」


「銃弾は共通だから問題はあるまい。小銃はたぶんM4カービンを支給されるはずだ。それはそのまま持ち帰れば良いだろう。倍率2倍のドットサイトだからそれほど違和感はない筈だ。作戦前に何度か試射をさせるつもりだ」


「移動は、ハンヴィー2台とバギーにバイクが1台ずつ……。バイクはサミーなんだろうが、バギーは誰が?」


「私が乗るつもりだ。実家でさんざん乗り回していたぞ。先行偵察にサミーだけを出すわけにはいかんからな」


 バギーって、確か悪路走破が可能な窓ガラスや屋根が無い変な車だった気がする。

 トレールタイプの機動に迫れるのだろうか?

 どんな運転をするのか、ちょっと楽しみだな。


「レディがサミーとバディを組むとなれば、エディ達を指揮するものがいなくなるぞ?」


「オリバン軍曹が率いてくれることになった。いつまでも分隊指揮官では困ると小隊長が推薦してくれたぞ」


「先ずは下士官、将来は中隊の補佐ぐらいには行けそうだな。彼なら任せても問題あるまい」


 状況に応じて部下に接する態度が変わる人だった気がする。

 普段はフランクな人だからエディ達も自然体でいられるだろう。戦闘が始まれば急に厳しい態度になるけど、それだけ部下を思いやる心があるということなんだろう。


「衣食住の考慮もされているから、問題は無いな。とはいえ、最初の上陸部隊に混じることになる。それだけ危険性が高いともいえるわけだが、上陸前の攻撃ヘリによる住宅地への攻撃、その後のジャックを使ってのゾンビ狩りが行われるから、案外短時間でケリが付くかもしれん」


「初日は、連絡橋の上でキャンプすることになるやもしれん。ゾンビの進行方向が限られているし、揚陸艦へヘリで移送する事も容易だろう」


「十分だ。息子達と将来の彼らの嫁をよろしく頼む」


「了解だ。来春には無事な姿で全員を連れて帰って来る」


 2人が握手を交わしたから、それで終わりかなと思っていたら、再びウイル小父さんの確認が始まった。

 大枠合意と言う事だったんだろうか。

 これは長く続きそうだ……。

               ・

               ・

               ・

 10月15日に今年最後のデンバーでの作戦を終えて山小屋に帰ってきた。

 東の峰々はすでに山頂に雪を頂いている。

 初雪が降るのもそれほど後の事ではないだろうな。

 

 デンバーから帰投した翌日の午後、ウイル小父さんが俺達を焚火の傍に集めて、今年の総括を行う。


「順調に推移したように思えるが、やはりデンバー空港は遠いと言うことになるのだろう。だが、ここまで到達出来た。ポイントの切り替えは前部終えたと考えてよいだろう。後はまっすぐにデンバー空港に向えば良い。

 来年は、空港周囲のゾンビ及び空港内のゾンビを駆逐することになるが、ゾンビの声が聞こえる装置とジャックを使えば容易に進めることが出来そうだ。

 俺達が向かう前に、双発機で付近の住宅街を今年と同じように破壊してくれるそうだからいよいよ最初の計画が3年越しで実現できそうだ」


 あれから2年も経ったんだよなぁ。良くもここまで来たものだと感心してしまう。


「デンバー空港が使用可能になれば、サンフランシスコに集結している軍を一気に移動することが出来る。中隊の方のグランドジャンクション攻略も弾みが着くだろうし、デンバー市街のゾンビ掃討も彼らに任せることが出来そうだ」


「俺達の役目が終わるということになるのか?」


 エンリケさんが心配そうな顔をして問い掛けた。


「いや、彼らに協力することになるだろう。だが全員一緒と言う事にはならんだろうな。エディ達はレディ達と一緒に全く異なる場所でゾンビ達と戦うことになるだろうし、残った俺達も2つに分かれる可能性が高い。

 1つは、グランビー周辺の安全確保と治安の維持だ。軍が保護している民間人をこの地に移動すればかなり安全に暮らすことが出来るだろう。

 もう1つは、軍の行う掃討作戦の後方確認になるだろう。

 海兵隊ならまだしも、他の軍の連中の掃討作業ともなれば、見落としがかなりありそうだからなぁ。いくつか俺達のような民間団体を動員して行うことを計画しているらしい」


「デンバー空港後の人選も考えないといけないのか……」


「まぁ、のんびり考えれば良いだろう。時間はたっぷりあるからな。だが1つだけ、爺さんは山小屋に残ってくれよ。さすがに此処までで十分だろう」


「仕方あるまい……。せいぜい、デンバー空港までのトロッコを動かすことで満足するよ。たまに鹿狩りをするなら、婆さんも文句は言うまい」


 思わずエディ達と顔を見合わせてしまった。それって今までと変わらないんじゃないのか? まぁ、いつも元気なお爺さんだからなぁ。


「皆も興味があると思うが、サンフランシスコの本部が大作戦を実施する。最初はサンディエゴの海軍基地の一部を奪回するだけの作戦だったのだが、サミーの提言で海軍と陸軍がやる気を出したようだ。

 サンディエゴの島だけでなく、対岸の海軍基地の奪回に向けてのゾンビ掃討、サンディエゴの北にある2つの基地の偵察、更にはカナダのバンクバーの威力偵察までもが同時に行われる。

 特にバンクーバーについては、カナダ政府との了承が得られたようだ。アメリカ国内の鉄道を繋ぐよりも、カナダの大陸間横断鉄道を使う事で太平洋と大西洋を繋ぐことになる。

 アメリカ国内のゾンビを駆逐するうえでも、兵站輸送は十分に考える必要があるんだが、まさかこんな手があるとはなぁ……」


「あまり手を広げても、得られる物が少ないという事にはならんのか?」


「当初の計画にオプションとしての追加と言うことになる。実力行使に出るのはサンディエゴだけになるだろう。他の3つは状況確認が主になるのだが、場合によっては直ぐに動くこともあり得るだろうな。特に、海兵隊の基地は食指が動いているに違いない」


「オスプレイとその後継機が保管されている。行動半径が一気に広がるだろう」


「そういう事か。場合によってはグランビー空港にオスプレイが並びそうだな」


「その前に燃料問題がある。とはいえ、作戦の規模が一気に広がることは間違いなさそうだな」


 ゾンビ掃討に弾みがつくのは良いんだけど、対応できる兵士の数が足りないんじゃないかな?

 まぁ、その辺りは上の方が考えることになるんだろうけどね。


「その作戦にサミー達を参加させることにした。レディとオリバン軍曹が同行してくれるから問題はあるまい。上陸の第一陣としての参加だ」


「危険ではないのか? さすがに第一陣と言うのは考えてしまうぞ」


「攻撃ヘリと艦砲射撃で上陸地点を攻撃するらしい。その後にジャックとランタンで動けるゾンビを集めて駆逐するとのことだ」


「今時、艦砲射撃だと! 5インチではそれほど効果があるとも思えんが?」


「強襲上陸艦の甲板に陸軍の6インチ榴弾砲を並べると言ってたぞ。まったくサミーは面白いことを考えたものだ。おかげで陸軍の士気がうなぎのぼりらしい」


 陸軍はだいぶ損耗を強いられたからなぁ。ここで一気に挽回したいということもあるんだろう。それてもゾンビ相手に奮戦して亡くなった同僚の恨みを晴らしたいという事なのかもしれないな。


「作戦要領を読む限り、俺達の行ってきた作戦の危険性より低いと思うぐらいだ。強いて言うなら、潰しきれなかった住宅街の掃討ぐらいになるだろう。俺達が別荘で行ってきたように1軒ずつ調べねばならんからな」


「あれか! だが、サミーならゾンビの有無を聞き分けることが出来る。前よりは格段に危険が少なくなったはずだ」


「そういうことだ。だから派遣に同意したよ。最初の作戦通りなら来春前には帰ることになるんだろうが、オプションがあるからなぁ。場合によっては我等でデンバー空港を目指すことになるだろう。状況次第では中隊本部が1個小隊を派遣してくれるそうだ。空港の建物は広いからなぁ。その時は遠慮なく派遣して貰うつもりだ」


「ニックも親離れということだな」


 エンリケさんの言葉に、皆が笑みを浮かべる。

 日本と違って、アメリカではいつまでも親と同居しないんだよなぁ。

 家を大切にするという日本とは、考え方が違うみたいだ。

 

「まあ、いずれはそうなる。早いか遅いかの違いはあるが、ニック達なら心配はあるまい。パット達が付いているからな」


 バニーさんの言葉に、皆が笑みを浮かべているんだよなぁ。

 だけど、娘さんの為にショットガンを手に入れたバニーさんはその時になったらどうするんだろう。

 笑みを浮かべて送り出すことが出来るとは思えないんだけどなぁ。


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