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いつだって日はまた昇る  作者: paiちゃん
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H-105 ハンタードローンはかなり使える


 ハンヴィーの後ろに取り付けた2つのモニターの片方をウイル小父さん達がジッと見つめている。

 何かあったのかな?

 後ろから覗いてみると、ピンクの中に赤い部分があった。見つけたってことか!


「サミーか。これは役立つな。見つけたぞ。少し動いているから、止まったところで砲弾を投下するよう指示を出した」


「4つの砲弾の内、2発がエアバースト弾、2発が炸裂焼夷弾だ。周りにいるゾンビと住宅を一緒に始末できるだろう」


 うまく行けば良いんだけどなぁ……。

 よく見ていると、モニター画像の中央に、レティクルのような十字のマークがある。ターゲットを十字の交点に入れるようドローンが動いているようだ。


「落としたぞ!」


 レディさんの声が聞こえたけど、急に現れた4つの黒いものがそうなんだろう。モニターの赤い光点に向かって吸い込まれるように小さくなっていくと、炸裂光でモニターが真白になってしまった。直ぐに復帰した画像には、ピンクがかったところは同じなんだけど、赤い光点は何処にも存在しない。


 ふう……、と溜息が聞こえる。

 俺も後ろを向いて深呼吸。どうやら息を堪えてモニターを見つめていたようだ。


「使えるな! 一旦ドローンを戻して、砲弾を積み込んでくれ。まだ探索していない場所が沢山あるからな」


「了解です。群れを作る前に処置出来るんですから、中隊本部も喜んでくれるでしょう。統合作戦本部にも知らせたいところです」


「報告書は任せたぞ。ランタンやジャックの設置も一段落だ。炸裂後の確認をしたなら、ガソリンスタンドが待っているからなぁ」


 その為にトロッコを1台増設したんだからね。出来ればドラム缶で運びたいところだけど、ジェリ缶10本に入れて運ぶらしい。

 ハンヴィーの燃料も満タンに出来るから、俺達の燃料備蓄がわずかではあるが増しているとのことだ。減るより増える方が良いに決まっている。

 それに道路を挟んで向かい側にあるコンビニのバックヤードは、いまだに手付かずだ。

 リュックを数個用意したから、買い物籠だけでなく背負っても運んで来れる。

 何があるのか、ちょっと楽しみなんだよなぁ。


「さて、炸裂するまで残り1時間とちょっとだ。簡単に昼食を済ませてくれ」


 昼食はサンドイッチとコーヒーだ。1人4切だけど、足りなければカロリーバーを食べれば良い。

 俺達の頭上のドローンが映し出す映像を見ながら、クリスが運んでくれたサンドイッチを頂く。

 コーヒーには角砂糖を1つ。シェラカップに半分ほど入ったコーヒーを揺らしながら砂糖を溶かしたところで水を入れて濃度を調整する。

 これで薄くて冷めたコーヒーが飲める。


「ところで、南の工場の壁はコンクリートなのか?」


「スレートのようですが、断熱材が入っているかもしれません」


「それなら破壊できそうだな。エンリケ、Mk19は全てエアバースト弾だったよな?」


「炸裂弾と炸裂焼夷弾を交互に挟んだ物が15発あるぞ。それを使うか。M203よりも高速だからスレートなら撃ち抜けるはずだ」


「その後に皆でグレネード弾を撃ち込もう。2発撃ってさっさと後退しよう」


 現在の状況では問題は無いんだろうけど、かなり沢山いるみたいだからなぁ。早めに刈り取るという事だろう。

 七海さん達に客車の上で周囲を見張って貰えれば、危険性はそれほど無いんじゃないかな。


 食事を終えると、再び周囲を見回りに出ることにした。

 頭上のドローンが降りてきたから、4方向の監視を強化しないといけない。

 監視している人達と、二言三言話しをして、次ぐに移る。

 ゾンビの声に変化な無いと伝えると、皆が笑みを返してくれる。それだけで安心感を与えることが出来るようだ。


 時計を見ると、ジャックが炸裂する時刻まで10分ほどだ。

 まだドローンは飛び立っていないから、もう1周してこよう。


 ドローンが飛び立ったのを見て、大急ぎでトロッコに戻った。

 レディさんの話では2分後だということだ。


「今のところは、大きな変化は無いな。だいぶ集まっているぞ。ジャックはゾンビには最適な兵器だ」


「線路沿いのゾンビ対策はこれでだいぶ捗るな。通常爆弾でも、ここまで効果があるかどうか考えてしまうぞ」


「集めないと効果が少ない……」


 俺の言葉に、エンリケさんまで俺に顔を向ける。


「そうだ。今までの戦とは全く異なる戦だ。第二次世界大戦までは銃弾の口径が大きかったのは知っているだろう?」


「聞いたことがあります。日ロ戦争で使用した銃弾は10mm以上あったと御祖父さんから聞きました。お爺さんの親父さんはその銃を使って熊狩りをしたと言ってましたよ。単発でしたから引き寄せるだけ引き寄せ、し止めたそうです」


「1900年当初はそうだった。だが第一次大戦で、口径が小さくなった。今の7.62mmだな。第二次大戦当時もそうだったが、日本軍は6.5mmに口径を小さくした……」


 当時に日本は資源が無かった事もあるんだろう。それに7.62mmと5.56mm

を撃てば直ぐに分かることだが、撃った時の衝撃がかなり違うんだよね。日本人は体格が良いというわけではないから、本当ならもっと口径を小さくしたかったんじゃないかな。


「俺達の銃弾なら日本人を容易に倒せる。だが日本人の撃つ弾丸は威力が小さかったんだ。その結果……」


「負傷者多数……。これが戦場では大問題になる。そのまま放っておけば周囲の兵士の士気はどんどん低下するし、後方の野戦診療所に送るには人手がいる。それに這って行くわけにいかんからな。新たな標的になり得るのだ。それに、後方に送ればその世話をする兵士も必要になる」


 要約すると、戦死は戦場から1名の兵士がいなくなるだけだが、戦傷となると2、3人がいなくなるということになるらしい。


「上層部はかなり慌てたらしいぞ。その教訓を生かしたなら、ベトナムで苦労しなかっただろうがなぁ」


 なるほど、戦場での勝利は最後に生き残った者達と言うことになるのだろう。どんどん戦場から兵士が少なくなるような戦はしない方が良いということになるのかな。

 逆に勝利を得たいなら、なるべく相手を殺さずに負傷させた方が良いということになる。


「おかげで俺達の戦い方は、相手を葬るのではなく大怪我を負わせるように変わって来てしまった。その考えが浸み込んでいるんだ」


「頭部狙撃を行うよりは胴を狙う。胴は頭と比べて面積が4倍広いのだ。ゾンビと遭遇したなら間違いなく初弾を胴に撃ちこむだろうな」


 それが今までとは違った戦いと言うことになるんだろう。ゾンビの中枢がお腹なら問題は無いんだろうけどねぇ……。


「サミーには、それがないんだろうなぁ。もっとも元日本人なら、首を刈りに行くからかな?」


 多分後者なんだろうな。苦笑いで誤魔化そう。


「その話は聞いたことがあるが、南北戦争時代に日本人は戦で相手の首を取っていたのか?」


「全てと言うことは無いでしょうけど、少なくとも名のある人物ならば刈られたでしょうね。息の根を止める方法としては西洋でも行っていたと思いますけど?」


「打ち首は昔からあったそうだ。罪人をギロチンに掛けるのは戦後まで続いていたらしいぞ」


「あれは効率化を狙ったものだろう。首を刎ねるというのは案外難しいと聞いたことがあるな。……ところで、とっくに時間が過ぎているぞ」


 レディさんの言葉に、慌ててウイル小父さんが時計を見ながら上空からの映像を確認している。


「終わってたか! 少し遠かったかなぁ。音が聞こえなかったぞ」


 モニターに映し出された画像には数十体のゾンビが同心円状に倒れていた。

 詳細は山小屋に帰ってから見ることになるのだろう。

 トランシーバーでドローンを戻してバッテリーの交換を指示している。


「パットの方はいまだに統率型ゾンビを捜索しているようだな。捜索エリアを記録しているようだから、捜索ドローンも戻すことにする。迫撃砲弾も残っているようだから、着発信管を取り付けた炸裂焼夷弾を南の工場に落としてみるか。屋根に大穴が開くなら、そこを狙ってグレネード弾を撃ちこめるだろう」


「面白そうだ。私がセットしてこよう」


 レディさんが笑みを浮かべて後方に向かって行った。

 迫撃砲弾4発だからね。グレネード弾よりも効果がありそうだ。


 それから30分後。住宅街や工場街で6発の爆弾が炸裂した。

 火の手が上がるのが見えたから、どこまで延焼してくれるか楽しみだな。


「さて、最後は南だな。一旦西に後退してハンタードローンで爆撃する。その後前進してグレネード弾を2連射、上空の監視はナナに任せるぞ。2発撃ったら、すぐにトロッコに乗ってくれ。サミーの話では南の建物にはかなりのゾンビがいるらしいからな」


 ウイル小父さんの言葉に、俺達が頷く。レディさんとバリーさんが客車の方に歩いて行ったのは見張りをしている連中にウイル小父さんの指示を伝える為だろう。


「指示を伝えたぞ。見張りをしていた者達もトロッコに乗り込んだ。ハンタードローンはもう直ぐ飛び立つはずだ」


 バリーさんはそのまま後方のトロッコにいるのかな?

 しばらく西を見ていたウイル小父さんが2機のドローンが飛び立ったのを見て、エディに後退の指示を出した。

 ゆっくりとトロッコが西に向かう。あまり速度を上げないのは直ぐに駅に戻るからだろう。300mほど後退したところでトロッコが止まると、ウイル小父さんがトランシーバーで客車に戻ったレディさんに指示を出した。


『退避完了だ。落としてくれ!』


 俺達が見守る中、工場の屋根が音を立てて炸裂した。

 状況を偵察ドローンの映像で確認すると、4発が一か所に落ちたからかなり大きな穴が出来ている。

 ゾンビは見えるかな? とジッと見ていると、何か動くものが見えた。

 頭を潰さない限り動くというのがねぇ……。


「この穴から見えるだけでも、かなりいるようだな」


「1度で全部とはいかないでしょう。次の機会もありますから、さっさとグレネードを放って後退しましょう」


「だな……。エディ、前進だ!」


 果たして次に来た時で全滅させることができるかどうか。

 建物内のゾンビを倒すのは簡単にはいかないようだ。建物内に半ば閉じ込められているゾンビをどのように措置するかは、今後の課題になりそうだな。


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― 新着の感想 ―
せっかくしっかりした壁の中に高密度に詰め込まれているのだから、可燃物を集めて来て、周囲に積み上げたり上から中へ落とし込んだりしてから火を点けて、蒸し焼きにしてしまえばよさそう
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