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いつだって日はまた昇る  作者: paiちゃん
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H-103 バイクと車は別物だ


 朝早くにレディさんの運転するピックアップトラックに乗って、七海さん達はグランビーの飛行場に向かった。空を飛ぶんだから飛行場で訓練するという事らしいけど、本人は飛ばないんだから荒地でも良いように思えるんだけどなぁ。

 その後を俺がいつも運転するジープに乗ってエディ達が昼食のサンドイッチを持って出かけてしまった。


 乗り遅れた感じもしないではないが、飛行場ならバイクで直ぐだからね。

 小型になったゾンビの声を聴く装置は、トランジスタラジオほどの大きさまで小さくなった。小型のヘッドホンを付けると丁度良い感じだな。

 その状態で、ヘルメットを被ろうとして困ってしまった。

 やはり邪魔になるんだよなぁ。イヤホンに換えようかと思っていたら、キャシーお婆さんが料理用のボールに顎紐を付けたようなヘルメットを渡してくれた。


「ありがとうございます。これなら被れそうですが、だいぶ軽いんですね?」


「ケブラー製なの。鉄板じゃないのよ。でも9mmパラベラム程度なら貫通はしないわ」


 そんなに丈夫なのか?

 思わず受け取ったヘルメットをマジマジと見てしまった。


「安心するがいい。それは婆さんの国の正規軍も使っておるヘルメットじゃからな。通気性も良いから夏でも被っていられるぞ」


 イスラエル軍御用達の品ってことか! 実戦で使われているなら問題ないだろう。

 海兵隊の夏季迷彩服を着て、肘と膝にプロテクターを付ける。足はコンバットブーツで十分だが、手は少し厚手の手袋を付けた。

 ゴーグルをヘルメットに付けて、装備ベルトを着ける。ワルサーのホルスターと腰の小さなバッグにはタバコと予備のマガジンを2個入れてある。


「バイクはワシも乗ったもんじゃ。ハーレーじゃがな。サミーはあのヤマハで良いのか? どこかでハーレーを見付けて来れば良いものを……」


「高速や町中を乗るなら大型バイクが良いでしょうけど、俺は野山をヤマハで走りたいんです」


「まるで偵察兵ねぇ……。待ち伏せには気を付けるのよ」


 じゃシーお婆さんの忠告に、ありがたく頭を下げたんだが……。ゾンビは待ち伏せするんだろうか?


 最後にネジを使って連結するスコップの柄を繋いで左手に持った。

 そんな俺を見て、メイ小母さんが手を叩いて喜んでるんだよなぁ。また新しい小説の題材が浮かんだのかな?


 真ん中2本がチタン製で両端がステンレスと言う棒を担いで、トンネルの駐車場に向かう。

 バイクに被せてあるシートを取ると、綺麗に磨かれたトレールバイクが姿を現す。

 そのまま引き出して、エンジンを掛けると甲高いエンジン音が辺りに響く。

 暖機をしながらタバコを楽しんだところで、革紐を取り出して棒を背中に背負う。

 そのままバイクに乗ると、クラッチを握りギヤをローに入れる。

 アクセルを引いてクラッチをパッと話すと……。

 ウイリー状態でバイクが動き出した。

 これだよこれ! そのまま体重移動で方向を変えると後輪だけで国道に向かう。


 アクセルを戻すと前輪が道路に着く。案外ここで転倒する奴もいるんだよなぁ。

 速度を上げる前にゴーグルを付けて、グランビー飛行場に向かってバイクを走らせる。

 途中で道路を離れて荒地を進む。

 シートに腰を下ろさなければ荒地を進むのも問題は無い。

 速度は時速80kmほどだ。荒地の起伏でバイクが面白いように跳ねていく。


 そんな俺の上にドローンが飛んで来た。

 偵察用ドローンだから、七海さんが動かしているんだろう。

 砂煙を上げて走っているからなぁ。気になって偵察に来たに違いない。

 そろそろ飛行場に向かった方が良さそうだ。

 ドローンに向かって、飛行場の方向を指差して進路を示すと、直具にドローンが頭上を去っていく。


 飛行場は荒地から一段高くして滑走路を造っているから、滑走路に大きくジャンプして飛び込んだ。

 多分いつものパラソル付きのテーブルにいるのだろう。

飛行場を横切って、七海さん達がいるテーブルに近づいたところで車体を倒して横滑りさせながらブレーキを掛ける。


 エディ達が驚いて席を離れているんだろうけど、そんなに慌てなくても良いと思うんだけどなぁ。

 バイクを戻してスタンドを立てるとヘルメットを脱いで、背負っていた棒もバイクに立て掛けておく。


テーブルに近づいた俺に、苦笑いを浮かべたレディさんが俺に席に座るよう腕を伸ばして開いた席を示す。


「全く恐怖のジープを動かしている本人とは、とても思えんな。バイクの技量は偵察部隊を越えるのか……」


「サミーがバイクを欲しがる理由が分かったよ。だけどあの運転ではナナは後ろ座席に座ってくれないんじゃないかな? だいたい、バイクに座って乗ってないじゃないか!」


「町中ならちゃんと座るよ。荒地では座らない方が良いんだ」


「1つ確認したいのだが……。サミーは全くバイクのメーターもギヤも見ずにバイクを動かしてるようだ。それが出来て何故車は出来ないんだ?」


「そうですねぇ……。バイクは俺の手足と一緒だからですよ。考えずとも動かせます。でも自動車は違いますよねぇ」


 メーターだって沢山ついてるし、タイヤだって4つもあるんだからなぁ。まったくの別物だから、注意しながら動かすしかないんだね。


「次にジープを動かす時は、自分の体の延長だと思え! まったくここまで極端な男は見たことが無いぞ」


 怒り出したかと思ったら、最後は呆れてるんだよなぁ。

 女性心理は中々難しいものだ。


「ところで、あの棒はゾンビ用だろう? まさかゾンビ狩りを1人で行おうなんて考えてないよな?」


「あれは用心の為だけだよ。そこまで無茶はしないさ。例の装置で街はずれを確認してきたんだが、まったくゾンビの音は無かったよ」


「偵察にも使えるという事か。だがノイズを判別できるのがサミーだけだからなぁ」


 残念そうにマリアンさん達を眺めているのは、訓練させてみようなんて考えているのかな? 最初からノイズだと思っている人達に聞かせるのは拷問にも思えるんだけどなぁ。


「それで、例のドローンは上手く操縦できるんですか?」


「基本は運搬用ドローンと同じだからな。新たにスイッチが1つ追加されただけだ。統率型ゾンビを見るための装置がカメラ画像に重なる。迫撃砲弾の投下は最初から問題なかったぞ。これでゾンビが群れを作る前に対処できることになる。迫撃砲弾4発の効果はかなりあるようだ。簡易爆撃機を手に入れたと言って中隊本部も喜んでいるよ」


 クリスがコーヒーを淹れて俺達のテーブルに運んで来てくれた。

 丁度昼食時だから、メイ小母さんのサンドイッチを一緒に頂く。


「しかし、バイクに乗ると全くの別人だな。あの棒がネイティブの槍に見えたよ」


「それぐらいは出来るよ。案山子で何度も練習したからね」


 本当なら馬でやるらしいんだけど、御祖父さんの所にバイクで行ったら案山子をバイクに乗って突いて見ろと言われたからね。

 最初はダメだったけど、2回目にはちゃんと胴に刺さったし十数回目には頭に突き刺したからなぁ。


「なるほど、バイクは現代の馬と言う事じゃな。大事にするんじゃぞ!」


 そう言いながらお小遣いを渡してくれたんだよねぇ……。


「ベテラン偵察員を見付けたと、報告しておこう。次のデンバー行きにはトロッコを1台追加すると言っていたぞ。そのバイクも持っていったらどうだ? 案外使う場所があるやもしれん。あれだけバイクを操れるなら問題は無さそうだ」


 出来れば住宅街をパトロールして残っているゾンビを倒しておきたいんだけど、さすがにウイル小父さんの許可は下りないだろうな。


「だが単独行になるからなぁ。あまり危険な場所の偵察は出来んだろう。あの棒を左手で振り回せるなら、私から1つプレゼントを贈ろう。バイクに乗った状態なら役立つに違いない」


 笑みを浮かべて頷いてしまった。

 とはいえ何だろうな? まさかあの有名なモーニングスターなんてことはないよな。

 あれを振り回してゾンビに一撃なんて想像すると、だんだん顔が緩んでくるのが自分でも分かるんだよなぁ。


「俺にもあれぐらい乗れるかなぁ?」


「慣れだよ。慣れ!」


「未だに標識にぶつけるサミーが言うと、説得力がまるでないぞ」


 俺達の会話に皆が大笑いをしている。俺達の笑い声を聞いた整備兵達も集まって来る。残ったサンドイッチをパットが勧めると、笑みを浮かべて手が出ている。

 悪い人はいないようだ。

 だからここで練習することにしたのだろう。

                ・

                ・

                ・

「それほどの乗り手とは信じられんなぁ」


「まるで映画のワンシーンのようだったぞ。それぐらいにバイクを操る。デンバー行きのトロッコを1台増設している。彼のバイクを積んで行ったらどうだろう?」


「偵察要員として使えるってことだな。あまり危険な目には合わせたくないな。俺の少ない友人のたった1人の子供だからな。だが、線路周辺なら問題は無いだろう。故障したなら線路まで走れば俺達が救出することも可能だ」


「条件付きの許可……と言うことだな。了解した。サミー、これが約束の品だ。何度か試射して感触を掴んでくれよ」


 長さ50cmほどの布包みを渡してくれた。

 何だろうと解いてみると……。


「マスターキーじゃないか! さすがに看過できんぞ!!」


「まて! バリー殿が怒るのも無理はないと思うが、海兵隊員が作戦に使用するなら問題は無いはずだが?」


 マスターキー? これがか? ただの水平2連ショットガンにしかみえないんだけどねぇ。だけどかなり変わっている。銃身は半分だし、ストックは切り取られてグリップだけだからねぇ。


「そういえば、海兵隊伍長だったな。それなら問題ないと言えなくもないが……」


「このショットガンをバリーさんがそれほど気にする理由が理解できないんですけど?」


「あまりギャング映画は見ていないようだな。バリー殿が気にするのは、このような銃を使う者は法執行機関と軍、それ以外では犯罪者しかいないということだ。通常のショットガンの半分の有効射ぐらいしかないんだが、銃身が短いことで散弾の広がりが大きくなる。室内で2連射すれば数人に重傷を与えられるぞ。それともう1つ。この銃が一番使われるのはドアのカギを破壊する時だ」


 それでマスターキーっていうのか! だけど壊して開けるんなら、バールもマスターキーと呼ばれるんじゃないかな。


「レディの言う通りだ。有効射程は20mほどだ。だが散弾の広がりが大きくなる。1発で当てようとしないで相手に向かって2連射が基本だ。サミーなら悪用はしまいが、あまり使わぬようにしてくれよ」


 一般人がこれを持っていたなら、有無を言わせず警察署で事情聴取と言う流れになるらしい。

 そんなに物騒な品には思えないんだけどねぇ

 これはビニル袋に包んでバイクと一緒に置いておこう。

 次に持っていくのはイエローボーイに決めてある。


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