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ロクサーヌ(3)

 残念ながら派手な服は持っていないので、いつものシンプルな深緑色のワンピースを着る。もう少し時間があれば、毒々しい真っ赤なワンピースを用意したのに。

 ま、その分、お化粧をがんばるからいいわ。

 ……マティアス様は、派手な女がお嫌い。そばに寄るだけでひどいしかめっ面になる。だから、わたくしも派手な女に変身しようというわけ。

 真っ赤な口紅に濃いアイシャドウ、頬にも過剰なチークを入れて……こんなものかしら?

 それと、デート中はベタベタするのだ。女性に触れられることを潔癖なまでに嫌うマティアス様なら、このデートで完全にわたくしを嫌悪するようになるだろう。

 そうそう、あれこれ買って!とワガママなお願いもしてみなくては。好きでもない女にねだられたら、きっと不快に感じるはずだわ。

 さあ、ケバケバ女作戦開始よ!


 意気揚々と待ち合わせ場所へ行く。

 街の広場の入り口にたどりついたら、マティアス様はすでに待っておられた。ラフな私服姿は初めて見るので、新鮮だ。

 しかも、すごくカッコいい。今までマティアス様が苦手でちゃんと見たことなかったけど、こんなにカッコいい方だったのね。……そういえば前世では好きなキャラだったっけ。死ぬ!ってことに衝撃を受けてすっかり忘れていたけど。

 マティアス様は、わたくしを見るなり目を丸くした。

 うん、驚かせたみたいね。スタートは悪くないかしら。

 ところが、マティアス様は盛大に吹き出した。

「ぶはっ…………な、なんだ、その顔は……ふ、ふふ……あはは…………!」

「?!」

 周りの人がわたくし達を避ける。

 え?

 え、どういうこと?

 意味が分からなくて硬直するわたくしを、マティアス様は抱えるようにした。そのまま問答無用で近くのカフェへ連れて行かれる。

「すまない、少し洗面所を貸してくれ」

 そう言って奥の洗面所に二人で入り……なんと!強引に顔を洗われてしまった!

「な、何をなさるんですか!ヒドイ!」

「そんな道化のような顔で街を歩くな。警備兵に尋問を受けるぞ。……というか、寮からここまでよく来れたな」

 道化?!

 道化ですって?

 わたくしの渾身の化粧を道化なんて!

 マティアス様はハンカチで丁寧にわたくしの顔を拭いてくれた。

「よし。これでいいだろう」

「良くないですわ!スッピンになっちゃったじゃないですか!」

「さっきより断然、いいぞ?」

「イヤです、寮へ帰ります!」

 もう、わたくしの馬鹿、馬鹿、馬鹿!ポーチに化粧道具を入れ忘れてるじゃない!

 スッピンで街を歩くなんて、無理だわ。

 そりゃ、前世で睡眠時間を優先して化粧せずに会社へ行ったことはあるわよ?でも、そのときはマスクで顔を隠していたし。会社についてすぐ、トイレで化粧したし。

 ともかく、女にとって化粧は外へ出るための武装。特に今日のようなデートで……前世でも経験したことないデートで、スッピンなんか無理~!!

 なのに、マティアス様は今までに見たことのないキラッキラな笑顔で「このまま行くぞ」とわたくしを表に連れ出した。

 ひどい。

 悪魔!

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