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ロクサーヌ(11)

 寮を出たら、マティアス様とヒューゴ様に会った。

「やあ、ロクサーヌ嬢。どこへ行くの?」

 ヒューゴ様が片手を上げて、にこやかに聞いてこられた。

「学用品を買いに街の方まで……」

「それは奇遇だなぁ。僕らも街へ行くんだ。一緒にどうだい?」

 うう、なんて残念な展開!ここにリゼットがいれば、マティアス様と街デート(仮)っぽいことをさせてあげられたのに。

 ───不本意ながら、マティアス様とヒューゴ様の3人で街へ。

 今日のマティアス様は以前に戻ったかのようだ。前を向いたまま一言もしゃべらない。ただ、前ほど剣呑な空気ではなく、元気がないというか、悄然としている感じだけど。どうされたのかしら。

 あと少しで街へ着くというときに、急にヒューゴ様が「あ!」と足を止めた。

「どうした?ヒューゴ」

「ジョージ教授に頼まれていた用事があったのを思い出した!ごめん、学院へ戻るよ。マティアス、悪いけど僕のノートとペンを買っておいて。あと、なんか甘いものも買っておいて欲しいな」

「は?なんでお前の使いっ走り……」

「よろしく~!」

 マティアス様の反論を意に介さず、ヒューゴ様はヒラヒラと手を振ってあっという間に去ってしまった。は、早い……。

 残されたわたくしとマティアス様は顔を見合わす。

「あー……じゃあ、2人で行くか」

「はい」

 2人っきり……少し気不味いわね。

 わたくしが戸惑っていたら、マティアス様が何故か切なそうな目付きをされた。

「その……ロクサーヌは俺と婚約解消をしたいのか?」

 ……したいのか、と改めて正面から問われると答えにくい。

 前に勢いで解消しましょうと言ったけれど、そもそもマティアス様のことが嫌いなわけではない。それに、わたくしから婚約解消したいと言い出したとなれば、お祖父様が激怒する。穏便な死亡エンド回避のために、ただ、マティアス様から早めの解消を言い出して欲しいだけだ。でも今はリゼットと親友になったから、いずれ婚約解消が待っているとしても、断罪イベントは起こらないはず。なので今すぐでなくてもいいのかしら……。

 答えを逡巡していたら、マティアス様は目を逸らした。

「いや、君に聞くのは間違いだな。俺が悪いのだから。……ロクサーヌ。前に相性をみるためにデートをしただろう?もう一度、やり直しをしないか?」

「デートのやり直しですか?」

「ああ。最初っからやり直したい」

 やり直す意味が分からないのだけど……マティアス様があまりに真剣な表情をなさるので、わたくしは素直に頷いた。


 デートなら手を繋ぐものだと言われて、マティアス様と手を繋いだ。

 しかも───恋人繋ぎ。

 恋人繋ぎ!!

 きゅっと指を絡められて、わたくしは内心、焦りまくった。前世も今世も恋人繋ぎなんて初めてだから、変な手汗をかきそう。ど、どうしよう。

 マティアス様の手は固くて、大きかった。わたくしよりも体温が高い。

 そして、街に入る直前。

「あ、忘れてた」とマティアス様は眼鏡を掛けた。ついで耳元のピアスに触れる。

 フッと淡い光が浮かび、瞬く間にマティアス様の髪が黒くなる。

 わたくしが驚いて見上げると、マティアス様は苦笑した。

「街へ行くときは変装しろと言われているんだ。ロクサーヌとの1回目のデートでは忘れていて……あとでだいぶ怒られた」

「まあ、そうでしたのね。……黒髪で眼鏡のマティアス様、新鮮です」

 つい、まじまじと見つめたら、マティアス様は柔らかく微笑まれた。

「あまり見られると照れるな」

 …………!!!

 キャ~~、なんですの、その笑顔!

 ま、眩しい……。

「ロクサーヌも変装した方がいいな。街で先に眼鏡を買うか」

「マティアス様と違ってわたくしは さほど顔を知られておりません。大丈夫ですわ」

「そうか?」

 そりゃそうでしょう。王族の方は国家行事で国民の前に出ることは多々ありますけど、わたくしはないもの。だから、リゼットと買い物へ何度も街に来てるけど、特に問題はなし。

 ……マティアス様と手を繋いだまま、まずは学用品を買うために文具店へ向かう。

 予定通りわたくしはノートとインク、マティアス様はノートとペンを購入した。

 ふと、ショーケースの中に美しい色とりどりのガラスペンを見つけて、足を止める。

 するとマティアス様が「欲しいのか?」と尋ねてこられた。

「いえ、綺麗だなと思っただけで……」

「せっかくだ、揃いのペンを買おう。どの色がいい?」

 お揃い?!

 やり直しデートだからって、そこまでしなくても……。

 躊躇うものの、楽しそうにガラスペンを見比べているマティアス様に要らないとは言いにくい。

 んん~、どうしようかしら……。

 そうね。わたくし、地味な色合いの持ち物が多いし。ペンくらい、華やかな色の物を使おうかしら。

 何色にしましょう?

 金色のラインはキラキラしてて本当に綺麗。これにもう一色欲しいな……赤はキツいし、自分の瞳に近い青は好きじゃない……。

 悩んだ末に金と翠の螺旋模様のガラスペンを選ぶ。

 するとマティアス様が目を見張り、すぐにとても優しく微笑まれた。

 ……あ。

(しまった、これ、マティアス様の色!!)

「では、俺はこのペンにしよう」

 マティアス様は上機嫌で黒ガラスに青銀の模様が入ったペンを手に取る。

 そ、それはわたくしの色のペンかしら。

 お互いの瞳と髪の色が入ったガラスペンを持つなんて……それじゃ本当の恋人みたいじゃない……。

あれ?あんまり甘くなってない……。


空いた時間にせっせと書くため、スマホで書いてます。

その後、PCに転送して最終チェック→更新。

しかし最近、スマホから上手くメールが送れなくなってきました……。Gメールの同期も上手くいかない。

スマホ買い替えかなぁ……。まだバッテリーの持ちも悪くないし、あと1年くらい使いたいのだけどさすがに不便すぎる~。

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第1巻では、ロクサーヌとマティアスの出会い編や、マティアスの女子寮忍び込み事件の詳細を書き下ろしています
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