残酷な願い
「ふふっ処刑がこんな曇り空なんて、天にも歓迎されていないのね。私って。ねえ、貴方にお願い。私のこと、✕✕✕✕?」
彼女が乾いた唇で言った言葉は何だったか。
何よりも大切なその言葉を覚えていない。
騎士として、主君を処刑台に立たせた絶望。彼女の願いで真実を葬り、主君を殺した相手につかなければならない悔しさ。
流れ星だ。ああ、ああ、せめて、彼女の願いを思い出させてくれ。彼女の願いを、叶えさせてくれ。
あ____
思い出した。
忘れてね、そう言っていたのでは無いのか。
____ああ、嗚呼、なんて残酷なんだ。私は自らの手にかけた貴方のことを忘れられないというのに。貴方は最期の願いすら私に叶えさせてくれないのか。
居ないものである自分をオモテに、歯車に加えて欲しいという願いも、外に出たいという願いも、貴方を殺した相手を守れという願いも、果たせなかったというのに。
震える手で彼女の骨に手を触れ、紫のヒヤシンスを手向けた。花言葉は[悲しみ]。今の私の気持ちににぴったりだ。
嗚呼、貴方の気持ちは?わかっている。
死んでしまった貴方に、答えて貰うことなど出来ない。
しかし、貴方は天国で悲しみに暮れるのだろう。
唯一の味方である私は地獄行きなのだから。