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2 相方YABeee!!

「バギ・・・ムーチョ・・・??」

 

 何だろう・・・カ×ムーチョの仲間それ?

 

 フリーズして口をパクパクする俺に、おっさんはあくまでも機嫌よく「へい!ボーイ。どうしたんだい。素っ頓狂な顔して」

 やたらと艶のあるバリトンボイスがまた、「おじさま」感を強くする。

「いや、あの・・・バギムーチョスって何かなぁ?・・・なんて」

 ひきっつた笑顔でそう答えると、おっさんはちょっと目を見開き、そしてやれやれと大仰に肩をすくめた。

「おぉー、ボーイ!疲れが溜まっているのかい?昨晩も俺のワイフの店で狂喜乱舞していたじゃないか!!」

 ・・・いや俺、何してんの?!

 バギムーチョスって狂喜して乱舞する位にハッピーな物なの?!バギとかムーチョスって響きにそんな要素、皆無そうだけど!

 ダメだ。これ以上は探ってはいけない闇を感じる。

 俺は適当に笑ってごまかす事にした。

「あぁ・・・そーいやぁ、そうでしたね・・・」

 ハハハ、と乾いた笑いを上げる。

 おっさんはそんな俺をしばらく見つめていたが、おもむろに鎧をガシャガシャ鳴らしながら、一直線にこちらに進んできた。

 

 え?!ちょ、何?!何か怒らせた?!

 

 余りの剣幕に思わず身を引いた瞬間、おっさんは俺の頭を両手でガシッと掴むと物凄い勢いでゴチーンと額を打ちつけて来た。

 激しい衝撃に目の裏がチカチカする。

「ちょ・・・、痛いっす・・・」

 衝突のダメージでクラクラしながら訴えるも、当の本人は至って普通な声で「ふぅむ。熱はないようだね」

 同じ位、衝撃いってるだろうにノーダメージかよ・・・

 というか、デコ突き合わせて熱測るって、おっさんじゃなくってもっとヒロインらしい美少女にやって欲しかった・・・

 おっさんは俺の面前で「ふーんむ!」と盛大に鼻息を吐いて、ようやく俺の頭を解放してくれた。

 そして、HAHAHA!とでも形容したくなる笑い声を上げる。

「ボーイの様子がおかしい気がしてね?体調でも悪いんじゃないかと、心配になったのさ」

 そら、様子もおかしくなるよ。

 なんせ、こちとらついさっきこの世界に転生したばかりで、立ち始めの鹿よりもプルプルしてる身なんだから。

「いや、何か、すんません」

「今日はまた他人行儀だなぁ」

「そう・・・ですかね?」

「普段はもっとフレンドリーだろう?HEY!ジョルジュ!って飛んできてくれるじゃないか!!」

 そんな感じ?!今までの俺ってそんなパリピっぽいノリで来る奴だったの?!

 HEY!なんて、前の人生でも言ったことないわ!

「いや、まぁ。ジョルジュ・・・さん?」

 様子を窺いながら恐る恐る言ってみるが、ジョルジュは悲し気に「おぅ」と首を振る。

 おっさん的にはダメらしい。どうしてもパリピ的ノリで返さないと納得しないらしい。

 この世界の人間はどれだけテンション高く生きてやがるんだ。勘弁してくれ。

 しかし、俺だって元日本人。

 そして、日本には「郷にいれば郷に従え」という先人のありがたい言葉がある。

 俺の腹は決まった・・・!!

 すぅっと息を吸い込む。

 俺は渾身の勇気をこめて、思いっきり雄叫んだ。

「HEY!ジョルジュ!!心配かけてすまねぇなぁ?!」

 どうだ、満足いったか!

 やってやったぜ、と目を上げるとそこにジョルジュの姿はすでになく、「この街に来たなら、一度はバギムーチョスを食ってきな!」と魅惑のバリトンボイスが反対側から朗々と響いて来た。

 そして、俺の目の前には当惑気に笑う冒険者らしい恰好の男が1人。

「いや、俺、ジョルジュじゃなくてポールです・・・」

 俺は膝から崩れ折れそうになるのを何とか耐えて、規定のセリフを告げた。

「トイナーの街へようこそ!!今日の気分はドジッ子だよ!」

 ちくしょぉぉぉ!!

 俺の勇気を返せぇぇぇ!!

 震える手で冒険者の通行証を確認しつつ、ジョルジュを恨めしく睨み付ける。

「行ってもいいです・・・どうぞ」と冒険者を通した俺に、ジョルジュは反対側からまた話しかけて来た。

「ボーイ!今日、予定はあるかい?」

「予定?タブン、ないっすよ」

 正直な所、予定があったとしても分からないけど。

 ふんふん、と頷いてジョルジュは「それならワイフの店でバギムーチョスでも食っていきな!もちろん俺の奢りさ」

 ・・・さっきから話題のバギムーチョスかぁ。

 正体を見てみたいから行ってみてもいいかな。奢ってくれるらしいし。

 俺としても街中の様子を色々と体験してみたいしな。

 まぁ、さっきの放置プレイはともかく、このおっさんは基本的に世話好きそうだから、付いて行って損はなさそうだ。

 物は試しだ。行ってみようか。

「じゃ、お願いします」

「おぉ、よかった。歓迎するよ、モブオ!!」

 ・・・モブオ?

 って、何?

 きょろきょろと辺りを見回す。

 新しい通行人でも来たかな、と最悪の結果から目を逸らしてみる。

 だが、新しい冒険者も行商人もいない。

 俺は嫌な予感に打ち震えながら、そっと自分自身を指差してジョルジュを見た。

 ジョルジュは満面の笑みで、情熱的な投げキッスを寄越してきやがった。

「いやぁ、今夜が楽しみだね。モブオ!」

 

 俺の名前、モブオかよぉぉぉ!!

 

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