クロスワードパズル
一人の紳士が悩んでいた。
目の前にあるクロスワードパズルは、白マスのほとんどが埋まっている。
残っている問題は、あと一つだ。
しかし、そこから先が進まない。
「ほぼ丸一日考え続けたが・・・・・・」
紳士は立ち上がると、そのクロスワードパズルをゴミ箱に捨てた。
いくら考えても最後の問題、答えが一つしか思いつかない。
ライバル球団の名前だ。昨年のプロ野球で、僅差で優勝をかっさらっていった球団。
「そこのファンがつくったものに違いない。あれは駄目なクロスワードパズルだ」
したがって、最後まで解くには値しない。出題者の単語選び、そのセンスは非常に稚拙だ。あんなものを解いていては、誇り高き『クロスパズラー』としての沽券に関わる。
数日後、紳士は別のクロスワードパズルに挑戦していた。
最後まで解いてから、満面の笑みで口にする。
「素晴らしい!」
今回のパズルには、自分が贔屓にしている球団の名前が出てきた。なんと「七回」も!
「これは最高のクロスワードパズルだ!」
誇り高き『クロスパズラー』として、惜しみない賞賛と拍手をおくりたい。文句なしの殿堂入りだ。ぱちぱちぱちぱち。
次回は「忍者たち」のお話です。