第6話 英雄無き王国
―マッシリア王国王宮―
「陛下。国境警備の兵士たちが、持ち場を脱走しています。また、徴兵拒否をした農民たちも同様です。兵の士気も下がり始めました。このままでは、軍の維持ができません」
その報告にこちらは愕然となる。まだ、ジークフリートがいなくなってから1か月も経っていないんだぞ!?
「何が原因だ!?」
怒号のような声が、王宮に響いた。自分でも驚くほど声を強めてしまった。報告者は、気まずそうに続ける。
「軍の規律が緩んでいるようなのです。下級将校は、気に食わない兵をいじめ、リンチにする事例があったそうです。その噂が国中に広まっているようです。軍に入れば、息子をいじめられるという親たちが警戒しています」
「なぜ、その者を処罰しないっ!!」
先ほど以上に大きな声を出してしまった。軍隊内での私刑は、厳罰を持って対処しなくてはいけない。
「どうやら、上官にワイロを送っていたようで、その者が事態を隠ぺいしようと裏で工作をしていたようです」
「両者を見せしめで処刑しろ」
「はっ!!」
くそ、なんでこうもうまくいかない。ジークフリートを解任した後、あいつのシンパは粛清した。さすがに、処刑まではできなかったが、地方の閑職に追いやり、中央は我が派閥で独占。反・国王派の重鎮であったジークフリートがいなくなったことで、自由に政治ができるようになった。これで、自分の国が作れると思った矢先、軍の規律が崩壊したのだ。
おそらく、ジークフリート派の内部工作だろう。あいつらは巧妙に動いているせいで、尻尾をつかむこともできない。
バカにしやがって。こうなったら恐怖政治と言われようとも、軍の規律を引き締めてやる。
※
「やっぱり、ジークフリート様がいなくなると、軍はガタガタになるな」
「そりゃあ、そうだろう。なにせ、人類最高クラスの英雄だぞ。みんな、あの人のためになら死ねると思っていたよ。まあ、反対する派閥以外はな」
「優秀なジークフリート派の人間たちをみんな解任すれば、指揮系統もズタボロになるよ。これで魔王軍の侵攻とか戦争なんか起きたら目も当てられないよ」
「だから、国境警備の奴らは、我先にと逃げてるのかもな」
「国境の奴らは、敏感だ。自分の命がかかっているんだから」
「今頃、国王陛下は、ジークフリート様に戻ってきて欲しいと思ってるかもな」
「言えてる。でも、そんなことは口が裂けても言えねぇよ。暗殺に失敗して逃げられたって噂だぜ」
「だせぇな、そりゃあ」
「だよな」




