第14話 続く特訓とルーキーたちの絆
―特訓2週間目―
「いいぞ、基本となる重心移動を忘れるな。自分の体重を乗せて、攻撃を重くするんだ。そうすれば、相手は防いでも、ダメージを蓄積する。ダメージの蓄積は、相手の動きを遅くする。その瞬間を逃すな。お主の観察眼なら、間違いなくそのタイミングを見つけることができる」
「はい!!」
基本を徹底的に反復し、長所を伸ばす方針で、グレアの腕は急上昇している。良い傾向だ。ミリアも無事に退院した。心配された後遺症も大丈夫そうだ。まだ、激しい運動が伴うクエストには出ることができないが、あの様子なら心配ないだろう。
「よし、一度休憩だ」
「はい」
一度、撃ち合いをやめて、今回の特訓の振り返りをする。
「初動に大きな力を使い過ぎている。初動は、相手も準備してくるから、奇襲以外は防がれると思っていろ。狙い目は、3度目の攻撃だ。そこから攻撃の予測は難しくなる。ブレア君の観察眼ならそれ以降の攻撃は圧倒的に有利になるはずだ。お主は、持久戦向けだ。1撃目、2撃目はあくまで繋ぎだ。重い一撃はそれ以降に繰り出せ」
こんな感じで、その都度振り返りをして、次回に生かすようになっている。最初の数日は、基本的な技術に対する指摘が多かったが、今では戦いの流れに関することが多くなった。
並行して、新しい剣技をおぼえる時間を増やしている。
「ブレア、ジークさん。朝から特訓お疲れ様! 朝食を作って来たよ」
白いローブを着たミリアが、朝食を持ってきてくれたようだ。ふたりは、宿代を節約するために、この別荘に宿泊している。
「ああ、ありがとう。わしは、ちょっと汗を流してくるから、ふたりは先に食べていてくれ」
あとは、若い二人でというニュアンスをこめてその場を離れる。
※
「ジークさんに毎回、気を使われているね。ちょっと、恥ずかしいな」
ミリアは本当にそう思っているんだろう。顔を赤く染めていた。
「今日のパンも旨いよ」
「でも、いいのかな。こんなお屋敷を自由に使わせてもらって」
「なんでも大富豪の別荘らしいな。俺たちは管理人の仕事を任されているってことになっているからいいんじゃないのか?」
「贅沢すぎて、ちょっと落ち着かないんだよ。今日くらいは一緒に寝てくれない?」
「ああ、そうだな」
そして、俺たちは軽くキスをする。
「すごいね、ブレア。私から見ても、どんどんうまくなっていくよ。もう、C級冒険者さんたちとも戦えるんじゃないかな?」
「ジークさんの教え方がすごいんだよ。どんな剣術の本よりもわかりやすいし、こんなに強くなっても、あの人はまだまだ先にいる。強くなればなるほど、あの人の凄さがわかるんだ。あの人は、もう老いぼれだとか全盛期の半分も力を出せないとか言うんだけどな。たぶん、あの人はこの街で……いや、きっと今まで見た人の中でも一番強い」
いつも読んでいただきありがとうございます!
次回はご飯回にしようかなと思います!




