第13話 褒めて伸ばす特訓
翌日から、わしとブレアは剣の特訓を始めた。あまり目立たないように、練習は朝の日が昇る前から開始する。ルイが所有している別荘の庭を借りることになった。ここは高い壁があって、外からも中が見えないから完璧な条件がそろっている。
「よし、ブレア君。まずは、基本を確認する。この人形を敵だと思い、剣技を放ってみてくれ」
「はい!!」
まずは、木で作った人形を使っての基本訓練から始める。昨日の戦闘を見たところ、基本的な体力は問題ないように見えた。ブレアは、人形に木刀を撃ちつけていく。
一刀流の連続切りや胴体斬りなどを披露していく。D級レベルの剣技はある程度、使えるようだな。得意な流派は炎流か。名前の通り、パワー重視の攻撃特化の激しい剣技の流派だ。わしは、対極の属性である水流を愛用している。水流は、スピードを重視し、手数で勝負する。
「よし、ある程度はわかった。まずは、炎流のC級剣技を身につけていこう」
「えっ、水流ではなくてですか? ジークさんは、そっちの方が得意だからそっちを教えてくれるんだと思っていました」
「たしかに、そちらのほうが、わしは得意だ。だがな、教師が生徒の個性を無視して、自分の得意を教えても何にもならない。個性が潰れて、成長スピードが著しく落ちる。まずは、本人の得意なところを伸ばしていく方が、将来的な伸びしろは大きくなるんじゃよ。炎流をサポートする意味では、水流のスピードがある剣技は魅力的だが、まずはおまえさんの得意を伸ばすところから始めようと思う」
こういう新人教育は、昔から得意だった。一番大事なところは、本人のやる気を維持することだ。高いモチベーションを維持できれば、成長スピードは格段に上がるうえ、自主的な勉強も勝手にやってくれる。頭ごなしにすべてを否定するよりも、まずは認めて信頼関係を築くことが最も重要。
「今日は、ブレア君の今持っている物を理解するところから始めようと思う。次は、木刀を使って、わしと実戦練習だ。わしは防御しかしないから、ひたすら攻撃してこい」
「はい!! やあああぁぁっぁあああああ」
やはり、洞察力が高く、目線のトラップなども意識せずに実行できている。ポテンシャルだけで言えば、今まで教えてきた生徒の中でも最も高い部類だろう。ただし、おそらく独学で勉強した弊害で、基本となる重心移動や距離の詰め方に甘さがあった。ここが伸び悩みの原因じゃな。
「よし、そこまで」
「はぁ、はぁ。ジークさん、すごい。どんな攻撃をしても全部受け止められちゃう」
「なに、こっちもやっとのところだったこともあるぞ。お主は、敵の様子を観察することがうまい。それは大きな武器だ。特別な才能でもある。それを有効活用できるように、今後は鍛えていくぞ?」
「はい、師匠様!!」
こうして、褒めて伸ばしていく弟子の教育が始まった。
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次回は、特訓&ブレアとミリアのイチャイチャなどを書く予定です(笑)




