VS.エクソシスト③
ヴァルキリー様を祀るこの神殿は、大きく分けて3つの場所が存在する。
1つは、いつも勇者召喚の儀を行うのに使っている礼拝スペース。2つ目は、私やカミラが寝起きする小さな居住区。そして3つ目が、今ここにある神殿の倉庫だ。……一応、建前上は「宝物庫」なのだけどそこに収納されているもののラインナップを見れば単なる物置にしか見えない。神聖さを感じさせるものは存在せず、ただ色々なものが無造作に放り込まれている。だから一見すれば、ただの「物置」。それぐらい、この場所は神殿に似つかわしくないガラクタばかりで埋め尽くされているのだ。
「人魚さんを呼び出した時の浴槽……カミラ専用の日傘とソファー……なんだかよくわからない鎖とか槌……」
カミラと一緒に色々倉庫の中を探してみるが、役に立ちそうなものは見当たらない。そうこうしている内にも、焦りは募っていく。
ヴァルキリー様が勇者を召喚したり追い返したりす時は、いつも一瞬で全てを行っているように見える。けれど実際はその一瞬の間に魔法円を敷き、そこに魔力を流し込んで魔法円を発動させているのだ。腹井と戦っている今のヴァルキリー様にその余裕はないが、逆に言えば少しでも腹井の動きを止めることができればまた魔法円を敷きなおすことができる。
だけど、あんなに強い腹井をどうやって止めればいいのか……不安に駆られながら倉庫内を物色していると、カミラが「ぎゃっ」と大声を上げた。
「ちょっと、これ取ってあったの!? 早く捨てなさいよ!」
言いながらカミラが指さしたものを目にした私は――咄嗟にある考えを閃いた。
◇
「本当に、うまくいくんでしょうね?」
疑わし気、というより気づかわし気なカミラの言葉に、私は強く頷くことができない。
「わからない。けれど、思いつく方法がこれしかないから」
成功するかはわからない、むしろ、失敗する可能性の方が大きい。ぐだぐだな私の策なんて、信じてもらえないのが当然だろう
「……まぁ、やるしかないわね」
だけど、それでもカミラは私の提案に乗る道を選んでくれた。自分を、そしてヴァルキリー様を助けるために私の賭けに乗ってくれたのだ。なら、後はもう勢いでなんとかするしかない。
「チャンスは一度きりよ」
私はカミラに、そして自分自身に言い聞かせるようにそう口にしてヴァルキリー様と腹井のいるところへと戻っていった。