表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/69

目まぐるしく変わる日常

 ────様々な波乱を巻き起こした体育祭が幕を閉じ、早一週間が経過した。

魔法部門で見事優勝を果たした私の周囲は目まぐるしく変化し、今ではすっかり学園の人気者と化している。

二度に渡って私を襲撃したダニエル様の退学処分も決まり、本当の意味で平穏な学園生活を取り戻した。


 まあ、お姉様の方は色々と大変みたいだけど……『妹を虐げた姉』というレッテルを貼られた上、副会長の座まで奪われたから。

周囲の風当たりは、やはり強いらしい……。

幸い、嫌がらせはないみたいだけど……暴言と陰口は酷いと聞いた。


 『プライドの高いお姉様は耐えられないだろうなぁ……』と、私は遠い目をする。

でも、これは姉の撒いた種なので、どうこうするつもりはなかった。

だからと言って、周囲の行いを助長したり、自ら噂を広めたりするつもりもないが……。

『一切関わらないのが一番よね』と考えながら、私は校舎の屋上で風に当たる。

一人でボーッと空を眺める私は、手すりに寄り掛かった。


「────こんなところに居たのか」


 聞き覚えのある声が鼓膜を揺らし、私は反射的に後ろを振り返る。

すると、そこには────案の定、グレイソン殿下の姿があった。

短い黒髪を風に揺らす彼は、迷いのない足取りでこちらへ足を運ぶ。


「えっと……ごきげんよう、グレイソン殿下。もしや、私を探してここまで居らしたんですか?」


「ああ。姉に見事仕返しした勇者に、労いの言葉を掛けてやりたくてな……本当はもっと早く言うつもりだったんだが、シャーロット嬢は休み時間の度に囲まれているから、完全にタイミングを逃してしまった」


 『遅くなって悪い』と言いながら、グレイソン殿下は私の隣に並んだ。

と言っても、距離は少し離れているが……。

『恋仲だと勘違いされないために配慮したんだろう』と推測する中、彼はゆっくりと口を開く。


「自分の力で姉との因縁にきちんと決着をつけたこと、誇りに思う。不仲とはいえ、実の姉に牙を剥くのは辛かっただろう。よくやった」


 『偉かったな』と褒めてくれるグレイソン殿下を前に、私は僅かに目を剥いた。


 何故だろう……?今になって、ようやく────『やり切った』という達成感が生まれた。

他の人に何を言われても、私の心は動かなかったのに……グレイソン殿下は、特別ってことかしら?


 『事前に姉のことを打ち明けていたから?』と疑問に思いながら、私はグレイソン殿下に向き合う。そして、深々と頭を下げた。


「ありがとうございます。そう言って頂けて、大変嬉しいです」


 心からの感謝を述べる私は、清々しい気分で顔を上げる。

『やっと全部終わった』と解放感に満ち溢れる中、グレイソン殿下はスッと目を細めた。


「俺は本心を言ったまでだ。礼など、必要ない。それより、早く食堂に行くぞ。姉を見返した記念に食事でも奢ってやる」


「えっ?本当ですか……!?」


「ああ、ケーキでもマカロンでも好きなものを頼め」


 『俺からのささやかなお祝いだ』と言って、グレイソン殿下は屋上の出入り口に足を向ける。

昼休みの残り時間を気にしているのか、彼はさっさと歩き出した。

慌てて彼の後を追う私は、『また殿下と食事できるのか』と喜ぶ。

だって、グレイソン殿下と一緒に過ごす時間はどれも楽しくて……心地よいから。

────今なら、『レオナルド皇太子殿下の傍に居たい』という姉の気持ちが、少しだけ分かるような気がした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] スカーレットに対する対応は、過度に貶める必要はないし、良い塩梅だと思う。 [気になる点] 今後シャーロットとグレイソン殿下は恋愛関係に発展して、最終的に結婚という形に収まることは難しそう。…
[気になる点] 主人公の対応に批判があったのかな? いたずらに追い詰めるようなことはしない、というのは良いことだけど、嘘をついてまで擁護しようとするのは確かに良くないと思う 復讐が怖いという我が身可愛…
[良い点] シャーロット嬢が少しは報われて良かったです。 [気になる点] そこまでざまぁではない感じがします(個人的主観 今後スカーレットsideの『こんなはずでは…』的な独白等があるとスカッとしま…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ