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隠すわたくしと理解するヒロイン

 私の知っているノベルの内容ではアヤカ様は高校生でアースガルドに転移されていました。

 サミュエル様は、アヤカ様が私と私の取り巻きにいじめられてるのを見て、その気持ちがなんなのか分からないまでもアヤカ様を守らなければと少しずつ変わっていき、気付けば愛するようになったアヤカ様をこの世界に連れて来たのは精霊王の自分であると思い出すのです。


 ですが、アヤカ様は現在(推定)24歳…サミュエル様は18歳…物語の強制力かアヤカ様は幸いにも24歳ながら学園に通うようになっていますが、宰相様の庇護下とは言え現在は学生寮にお住まい。

 (ライトノベルではヴィクトー様が宰相様の後継にはなっていなかったので、若い頃に社交界の花との呼び声も高かった宰相様の奥様に礼儀作法などを叩き込まれる事になっていました)


 私は姿は完璧なものの、中身としてはポンコツ極まりない悪役令嬢。現在取り巻き絶賛募集中です。


 「ちょっと、ブツブツ言いながら遠くに意識を飛ばさないでくれる?」

 「あ、申し訳ございません…」


 どうしたらあらゆる災害がアースガルドを襲うのを防げるか。


 「アヤカ様、私にいじめられて下さい」

 「は?」

 

 はうぅ、怖いw


 「いい加減洗いざらい、私に話してみなさいよ。なんだっけ?はなやしき?はなちょうちん?」

 「『花愛』です!いや、何のことですか⁉︎」


 でも、私は気になっていた事をアヤカ様に聞いてみます。


 「…アヤカ様は元の世界に…」

 「…帰りたいわよ…あなた、物語だって言うならこの結末知ってるのよね?」

 「あ…」

 「教えてよ、私の世界への帰り方‼︎」

 「……」


 …私、多分もうあちらには帰れない…あちらには私の身体はもう無いのだと思うのです。私、気がつけばこの『エトワール』になっていましたもの…

 だけど、アヤカ様はあちらに帰ることが出来たら普通の生活に戻れる…はず…


 「…ごめん、あなたのせいじゃないのは分かってるのに…」


 気がつけば私泣いていたみたいです。


 「…私の知っているお話ではアヤカ様をこちらにお呼びする為に、彼は残っている力の大半を使って…」

 「やっぱり呼び出した奴が居るのか‼︎」


 びっくりして涙が止まります。


 「おかしいと思ったのよ。死んでない。穴に落ちたのでもない。扉を開けたら異世界に繋がってましたでもない…。なんかぐぃっ!って引っ張られたみたいな感覚だったのよね⁉︎」


 アヤカ様が私の両手を握ります。私はただ黙ってコクコクと頷くことしかできません。


 「ったく、誰だよ、給料前に呼びやがったのは…あ、新作ゲーム予約して受け取ってない!」


 私、まずい事を言ってしまったかも知れないです…サミュエル様(精霊王)の心証最悪です。


   ◆◆◆


 (わたし)は白石彩花。社会人2年目の25歳。ちなみに大学は1年浪人している。


 私がこの変な世界に連れて来られたのはゴールデンウィーク&給料前のクッソ忙しい仕事が片付く寸前。あと少しで給料日で、ゲーム三昧の至福の時間が待っていた。

 元の世界に未練があるとすればそれくらいだ。

 両親は昨年事故で亡くなり兄妹もいない。仕事も食べる為に行っている様なもので、趣味はテレビを見るかゲームをするくらいなのだ。


 ブツブツ言うエトワールの『花愛』は知らないけど、『異世界転移』や『転生』なんかは知っている。ゲーム好きなので『悪役令嬢』も必須だ。


 日本から『転生』したみたいなエトワールはとても可愛らしい女の子だが、少々思い込みが強い様に思う。私が連れて来られたこの世界は『花愛』(本題は長すぎて忘れた)という今時のライトノベルの世界でエトワールは転生前、その話が大好きだったようだ。

 エトワールは登場人物の悪役令嬢に転生していて私はその物語のヒロインの立場らしい。

 物語の流れではエトワールの婚約者が私に乗り換えて彼女を切り捨てるみたいだが、私は王子様にあまりよく思われてないのを知っている。


 私がこの世界に連れて来られた時、王様、宰相様など偉い人の前に連れて行かれたが、すっごく扱いに困ってる風だった。とりあえずぞんざいに扱われる様子はなかったので安心したが、社会人経験者としては若干迷惑がられている事はひしひしと伝わってきた。

 持て余されて学園に入れられたが、やる事もないのでとりあえず助かった。そこでエトワールに話しかけられる様になった。

 私の立場は一応は口止めされている様ではあったけど、むしろ若い先生と同じくらいの歳、明らかに浮いていた。人の口に戸を立てれぬとのことわざ通り、隠していても何処からか情報は漏れるようで、怪しげな生き物を見る様に遠巻きにされていた。


 エトワールの事は最初は変な子だと思った。けれど自分のこの状況以上に変な事があろうか?

 そう思ってよくよく彼女の独り言を聞いていると端々に聞き慣れた言葉が入る。彼女は無意識で話している様だが、これは彼女が私の世界を知っている事に間違いはないだろうと確信した。

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