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わたくしとヒロイン2

 情報をまとめてみました。


 (わたくし)は、エトワール・ブラン(17歳)転生者、金髪吊り目の悪役令嬢です。

 ヒロインはアヤカ・シライシ(推定20代半ば)茶髪ですが女の私から見ても愛らしいお顔の屈託のない女性です。

 私の婚約者、サミュエル・シュヴァリエ(18歳)月の雫のような銀髪に深い海の底のようなプルシャンブルーの瞳の物語上では人形王子と(ひょう)されているオレリアン王国第一王子です。


 今日も私は全力で白石さまを探して校内をウロウロしています。白石さまは現在宰相様の庇護の下と言う(てい)で学校に通っておられますが、日本とは違って幼年学校で最低限の知識を詰め込んで終わるので、貴族の進む進学コースは勉強をする為と言うよりも、マナー学校+若者の社交の場というような感じになっているのです。

 …白石さまは日に日に私から逃れるのが上手くなるようです…しかし、私は負けません‼︎


 「こんなところにいらっしゃったのですね⁉︎」


 そこは一度来た中庭でした。


 「うっ…一度来たところなら大丈夫と思ったのに…」


 なにやら聞き捨てのならない言葉をおっしゃっているようです。明日からは2回以上のルーティーンで探そうと思います。


 「まぁ、右も左も分からない状態で慣れろって言われても歳下のばっかりだし、珍獣扱いで遠巻きに見てるだけで話しかける事もできやしないから、ちょっと助かってるんだけどね」

 「うふふ、恐れ入ります。………駄目だわ。私白石さまをいじめないといけないんですからお礼なんて言われたら駄目駄目じゃないですか…」

 「そのライトノベルはわかったからさぁ、なんであなたの婚約者を私が誘惑しないといけないわけよ?そんなことしたら明らかに私が悪者じゃない。」


 膝から崩れ落ちる私に口を尖らせて文句を言う白石さま。うん。そのお顔かわいいです。


 「誘惑と言うか、白石さまは普通に、ごく普通にサミュエル様に接していただければ、なんて純真な娘…女性だと興味を示されるはずです。」

 「さりげなく言い換えなくて良いわよ…てか、それこそあなたが『なんで純真な…』をやれば良いでしょ?」


 どうも白石さまは『花愛』の原作を読んだことが無いようなのです。まぁ、部数も伸び悩んでいましたし、ライトなノベル的に漠然とした設定&内容でしたからねぇ…


 「私ではダメなのです。白石さまが選ばれたヒロインなのですから…」


 サミュエル様…精霊王は自らの伴侶となるべき聖なる乙女と番い、次代を育てるのですが、本来同じ世界に生まれるはずの乙女がこの世界におらず、その乙女を探すために残りの力を使い、時空を飛んで地球に生まれたご自分の伴侶、白石さまを見つけてこの世界に連れてきたものの、時間を遡り転生するのは精霊王としても並大抵ではなく、サミュエル様として転生したものの記憶を無くしているのです…


 「精霊というのは人間と同じ世界にいるようで、別の世界のものなのです。人間と番うからと言って決して人間の味方でもないのです…」


 かつて、オレリアン王国では大規模な災害に見舞われる事があったそうです。これは『花愛』の知識ではなく、次期王太子妃…次期王妃として学んだオレリアンの歴史。精霊とは日本で言う所の神様的な存在になるのでしょうか?願いを叶えてくれ、護ってくれとお願いする現代日本の神様と違い、古事記的な神様タイプのようで、触らぬ神になんとやらと言うような感じです。

 人間の生活を守ってくれる事もあれば、気まぐれに壊したりもします。聖なる乙女がいるからこそ、人間に親しみをかんじることができるのです。


 「この世界に生まれた私にはこの世界の家族がいて、私が何か行う事でその人たちを守れるものなら何をしても守りたいと思うのです。」


 物語として見ていた時は何も考えていなかったけれど、生まれ変わって、弟が生まれて、妹が生まれて…娘として姉として、私が今の立場を追われるだけでみんなを守れるのなら、悪役になれて良かったとすら思えるのです。


 「家族には嫌な思いをさせてしまいますが、物語では死ぬほどではありませんでしたので大丈夫です。」


 ガッツポーズをして見せますが、なんだか納得のいかないご様子…でもでも、ご興味のない白石さまには申し訳ないのですが、白石さまがゆくゆく精霊王と番っていただけないと『精霊王は悲しみのあまり狂い、あらゆる災害がアースガルドを襲うようになり、乙女を守れなかったオレリアン王国はいち早く滅びを迎えることになるだろう』と言うことになるらしいのです。まぁ、ノベルでは乙女と精霊王は再び巡り会うのでハッピーエンドになるのですが。


 「まぁ、よく分からないけど、ハッピーエンドを迎えるためにはあなたが婚約破棄される状況にならないといけないわけね?」


 そうそう!そうなのです!


 私は満面の笑みでコクコクと頷くのです。

 

 


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