繊維工場改造プラン その⑭ 海賊との交渉、情報収集
今回は海賊との交渉件情報収集。
何やら裏がありそうですが、分かりません。
海賊の問題の宿題だけ残して、
善後策を練る事になりそうです。
村長さんのツテで海賊と会談出来る事になった。
代表者通しで会談して情報を探る。
村長さんから紹介して頂く。
「こちらが伯爵様の内政官のエリオス様です。
こちらが元村住民のボルドさんです。」
「お前が伯爵の子飼いの内政官とやらか。
この貧しい村に重税、貧困に落としこんで苦しみを与えた。
今更何しに来た。」
当然ですが、喧嘩口調。
文句を言いたい事は山ほどあるでしょう。
なにせ、非常に貧しい村である。
一体、何が会話になるというのか?
「私達は新しい産業を育成させるためにここに来た。
前例としては、キルテル村に繊維業と
セントハイム村に鉱山業を育てるつもりでいます。
この村は貿易港として拠点にしたいつもりです。」
「我々を追い出すという事か?」
「新しい仕事を作る事で収入を増やし豊かな生活が出来る様にしたい。」
「戯言を。
今までの権力者の仕打ちを忘れぬぞ。」
会話になっている様で、なっていない空気が漂う。
向こうが被害者、こちらが加害者という構図は変わっていないだろう。
雰囲気がかなり悪くなる。
エリオス君は続ける。
「村に仕事が出来れば、安定した収入により生活出来る様になります。
村に戻って仕事に従事しませんか?
ご提案です。」
「・・・」
盗賊側も考える仕草を見せる。
彼らとて、好きで海賊をしている連中だけでは無いだろう。
もっとも、海賊から逃げられない人質とかあれば話は別である。
軍隊が呼ばれないように村を脅迫している理由も裏にはあるだろう。
鍵はそこである。
「我々が生き残ってきたのは海賊としてこの村を
襲撃してきたからである。
今更受け入れてもらえる所などある訳がない。」
「別にこの村だけとは限りませんよ。
鉱山もありますし。
人手不足になれば、雇用は必要です。
貴方がたが海賊業から離れる事が出来るか、です。」
エリオス君は海賊を諭そうとするが、
目的は具体的には伝わらない。
「我々にも海賊から逃げられない理由がある。
この村を散々犠牲にしてきた。
伯爵も犯罪者として我々を容赦しないだろう。
捕らえられて縛り首にはなりたくない。」
「そうですか。残念ですね。
しかし逃亡してくるのであれば、逃げてきて下さい。
その、逃げられない理由が例えば人質とかである場合は
人質を救出するという手段もあるかもしれません。」
「・・・」
「貿易港になるならば、当然公式の海軍を設置する事になるでしょう。
そうなれば、海軍との戦いは避けられません。
戦って死ぬか逃亡するかのどちらかでしょう。
そうなった場合は、国家の敵になります。」
いきなり逆脅迫しだすエリオス君。
情報はまだ聞き出せてない。
それでは相手の態度が硬化するぞと周りは心配になる。
盗賊のボルドが続けて言う。
「伯爵は我らを皆殺しにするだろう。
落とし前としてな。
かの盗賊団と同じ様に。
もはや我々には逃げる場所はないのだ。」
「それならば他国に隠れると良いでしょう。
この村にちょっかいを掛けるという事は
今後は伯爵様は容認しないでしょう。
壊滅した盗賊団や傭兵団は他国の差金と言われています。
隣国の侵略を容認する事は不可能になります。」
一同の息を飲む仕草が聞こえる。
この子は一体何を言い出すのか?と。
「フン。生意気なガキだ。
結局最後は脅迫か。
我々を懐柔しに来たのではなかったのか。
まあ良い。言いたい事は理解した。
それだけだ。」
「ならば最後にお聞きしましょう。
貴方はリーダーですか?」
「いや、お頭はアジトだ。俺は偵察だ。
それなら俺から質問だ。
この村は貧しさから開放されるのか?」
「そうですね。
その答えなら簡単です。
この村はいずれ大都市になります。
しっかり働けばそれなりの生活になるでしょう。」
「それを聞けて良かった。
じゃあな。」
そう言って海賊は帰っていった。
呆然とする一同を目の前にしてエリオス君は呟く。
「・・・仕方がないですね。
伯爵様に報告して策を練りましょう。
村長さん、細かい情報を教えて下さい。」
「ああ。・・・・」
こうして海賊との対話は失敗に終わった。
情報を報告し、軍隊を率いる事になるだろう。
この対話に意味があったのか、この時点では誰も分からない。
この村を変えるためには海賊の殲滅は必要であろう。
誰もそう疑わなかった。