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繊維工場改造プラン その⑪ 港町開発プラン

次の製鉄業の際にどうしても必要な場所の話を討議します。

そして製鉄業を立ち上げる資本の問題も。

こうして資産家が資本を元にさらなる利益を追求することで

資本主義が発達することになるんでしょうか。

今回は、先をみたプロジェクトの情報交換です。

家族で情報交換をした後は、村長さんと情報交換する。

当然お父様にも同席してもらう。

この村の情報を詳しく知りたい。


「村長さん。お久しぶりです。」

「ボッシュさんにエリオス君か。

 エリオス君も久しぶりだな。

 今や立派な伯爵家の内政官殿だ。

 敬語で話さないと失礼か。」

「今まで通りで大丈夫ですよ。

 元々伯爵様をご紹介頂いたのも村長さんですから。」


まあ、あの会見から生活が変わり果ててしまったかもしれないが偶然だ。

王都に留学する切っ掛けも村長さんであろう。


「この村も人口が増えましたね。」

「そうだな。

 農業人口も繊維産業のお陰で吸収できて、

 副業も出来て臨時収入も増えて皆喜んでいる。

 冬場でも生活に困らない。

 エリオス君のおかげだそうじゃないか。」

「繊維業はまだ発展途上ですけどね。

 別のご相談があります。」


と言ってキルテル村の事情を確認しながら本題へ切り込む。


「今王都で耐火レンガと錬鉄の試験を行っております。」

「ふむふむ。」

「それが上手く行けば、隣のセントハイム村と海から近い場所で

 コークス炉と高炉を建設して銑鉄を作るプランを立てています。

 まずは大砲を作れと指示が降りるでしょう。

 勿論、国家プロジェクトになるはずです。」

「なんと。」

「そうなった場合、建設に必要な人員が必要になります。

 当然国内から総動員する形になるでしょう。」

「・・・つまりはこの村からも動員が必要だという話か。エリオス君。」

「そうなります。」


驚く村長さんとお父様。

人員、資材、食糧、全てが大量に必要な事態になる。


「費用は国から出るのか?」

「分かりませんが、必要な限りはこちらから手配します。」

「つまり伯爵家が主導するのか。」

「伯爵領からの繊維の収入を担保に青銅と鉄を作るのです。」

「・・・伯爵様からの指示か?」

「まだ決まってはいませんが、裏では協議しています。

 トーマス殿下がプロジェクトリーダーなので軽視は出来ないでしょう。」

「そのためのセントハイム村の鉱山か。」

「そうです。」


壮大な話に頭を抱える村長さん。

まだ話は終わっていない。


「韮山反射炉の実績を考慮すると、

 建設期間は3年半、耐火レンガ数万個/炉

 建築人員数百人。」


耐火レンガは1個3.5kgで概算すると、

数百トン単位の資材は必要である。


「エリオス、そんなに壮大な計画か。」

「ええ、お父様。

 まだ序の口ですよ。

 これを並列して作るのです。」

「そんな資金があるのか?」

「ありませんね。

 生産して儲けてさらに次の産業に投資し続けるのです。」

「当てがあるのか?」

「資金の当てはありませんが、将来の需要の予測は可能です。

 技術と製品の量産に伴い、金属需要は高まるはずです。

 初期は大砲を政府に購入させます。それを担保にさせるしかないでしょう。」


エリオス君は答える。

実際の所は、資金ぐりで最初は辛いだろうが

金属需要が高まれば時期に償却が進むであろうと。

イギリスの記録を読むと、産業用でペイ出来るようになったのは

蒸気機関と鉄道での金属採用以降である。

蒸気機関の発明によって膨大に金属需要が高まったのであろうか。

であれば、蒸気機関の開発と並行して銑鉄の製造設備立ち上げが

出来れば理想的である。


「最も、戦争が始まればそんな事を言っている余裕は無くなるかもしれません。」

「戦争か。」

「戦争のリスクは、宗教と税金と貿易と魔王国です。」

「・・・嫌な話だ。」


村長さんとお父様は苦い表情をして見つめ直してくる。

戦争になれば小銃と大砲と弾薬が必要になるのだ。

宗教は新教と旧教の問題と異教徒との衝突、

税金は国内の暴動や内乱の要因、

貿易は国際競争と海外市場の問題、

魔王国は動きが読めないが内戦終了後の変動要因。

どれかが爆発すると戦争である。

国際的な抑止力などこの時代には存在しない。


「イメージとしては、海運を使いたいので

 鉱山から近い海に貿易都市を作りたいでしょうと。

 大量輸送が可能で都市毎の関税がかからない海運が理想でしょう。

 その鉱山と貿易都市から近い場所に製鉄所が作られるイメージです。」

「壮大なプロジェクトだな。」

「なるほど。

 海からも近い、となると南のリヒハイトの村辺りか。」

「そうなりますね。村長。」

「そこに大都市を作る、労働者も集める

 という訳か。」


だんだんとイメージが固まっていく。

しかし資金的な課題が解決出来ない。


「最初のコークス炉と高炉は小さいものでも良いのです。

 量産がちゃんと出来れば。

 2号機から量産設計を見直すイメージになると思います。」

「最後の課題はやはり資金か。」

「国家から借りる事が出来なければ、

 株式会社方式になるでしょう。

 会社の権利を株式にして分配し、資本金に応じて

 会社の権利を株主が保有するやり方です。

 投資と会社の利益を資本家へ再配分します。」

「お金を出した人がその会社を保有する権利があるという訳だな。」


初期の株式会社は1600年以降のイギリスの東インド会社とオランダの東インド会社である。

膨大な資金が必要かつリスク分散するには、

多数の資本を元にした株式会社の制度が取られる様になった。

資本の私有権からの所有者からの価値観で資本主義の時代になるであろうと。 

 

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