繊維工場改造プラン その⑨ 女神様の再降臨とエリカお嬢様
久しぶりに女神様の再降臨。
状況が刻々と変化してきます。
世界の動きをまだ感じる事は出来ていませんが、
いずれ巻き込まれる予感をしています。
そしてエリカお嬢様の運命はいかに。
政略結婚相手とは?
村に戻った後のその日の夜。
再びエリカお嬢様に呼び出される。
何やらまた考え事をしている雰囲気である。
「貴方はこの国をどうするおつもりなの?
悔しいけど、貴方は私より高い学識を持っている様に見えるわ。
世界を作り変える気?」
「どうなんでしょうね。お嬢様。女神様からの指示は、
「世界の危機を救って欲しい」ですけど
世界の危機が何の事を示しているのか分かりません。」
「あの馬鹿女神の言う事ね。
言語の定義が全くされていない発言だわね。
確かに良く分からないわ。」
「僕はただ1人の平民の子供に過ぎません。
今は経済力をつけるしか方法が無いのです。」
女神様を馬鹿呼ばわりするエリカお嬢様。
気持ちは分からなくも無いが、女神様に対して失礼な態度。
そんなに嫌な目にあったのかなぁ。
「お二人とも、お元気の様子ですね。」
夜のしんみりした空気を打ち破るかの如く、
眩しい光がさして神々しいオーラを放ちながら、
また女神様が急に登場された。
ばーん。
「出たわね。いきなり急に。」
「ご無沙汰しております。女神様。」
エリカお嬢様は愚痴を言うが、僕は一応丁重にご挨拶をする。
笑顔を浮かべながら実に嬉しそうに女神様は言う。
「ご無沙汰しております。エリカとエリオス。
お二人に出会えてよかったです。
しかし二人がこの世界で出会えたのは全くの偶然。
うふふ。」
美しい笑顔を浮かべながら答える女神様。
何やら曰くつきの雰囲気を感じる。
実に怖いから不審な裏工作は辞めて欲しいな、と。
「今回は何かありましたでしょうか?」
「実は魔王国で宗教戦争が終結しそうなのです。」
旧教と新教で国家が分断して戦争をしていたアレですな。
ロザリーナお嬢様が留学する切っ掛けになったであろう宗教戦争。
ちぇ。向こうの時間の進みが早いな。
こちらはまだ聖書の印刷すら出来ていない。
魔王国が分断した国論を統一したのに、こちらは地方封建社会の時代。
超大国の絶対王政を相手にしたら乱立した小国家群などまともに相手にならない。
これでこちら側で新教宗教論争など起きて、
内政が分断されたら、なんて思うと恐ろしくて仕方がない。
「そんな事より、何故あんたは私をこんな窮屈な貴族娘に転生させたのよ。」
「あら、エリカ。
貴方が自分で望んだのではないでしょうか?
私はその意図を叶えてあげたに過ぎません。
ただ一つの人生をどう生きるかは貴方のご判断ですよ。」
やはりエリカお嬢様は女神様におねだりしたのか。
確かに一市民より貴族の方が権力、財力はあるのは間違いない。
ラブロマンスの影響かな?異世界恋愛小説の読みすぎだ。
それが嫌なら自業自得であるかも。
「こんな政略結婚で人生が終わる世界だと知っていたら望まないわよ。」
「この世界の人の願うこと、人のなす事は
人が決めることですわ。
神が決めることではありませんよ。
それに私は転生神ですし。」
この世界の宗教家が聞いたら驚く発言を平気でする。
逆にエリカお嬢様はこの時代の郷に入っては郷に従う生き方を容認出来ない現代人だろう。
現代的な価値観で勝手に異世界を定義してしまったのは仕方がないとしても
いきなり野蛮人みたいな価値観を強要されるのは確かに恐ろしい。
「それで貴人方はどうなされますか?
特にエリオス。」
女神様が問いかけてくる。
「選択肢は自在に沢山ありますが
世界の危機に対抗するには、
人的リソース、経済力、軍事力、何一つ持ち得ていません。
女神様の目的を達成する前提条件が必要になると思います。」
「私は、あのジジイと結婚させられるのが嫌なの。」
素直に返事する。
エリカお嬢様はストレートに答えるので、こちらは狼狽する。
その政略結婚相手を是非知りたいものだ。
「世界は常に流動的です。
激動の時代になれば、過去の常識が覆る事もあるかもしれません。
立場の違うお二人は是非仲良くしてくださいね。」
「・・・答えになっていないわよ。」
確かに女神様のご意見は答えになっていない。
というか答えるつもりが無いのだろう。
じゃあ質問の内容を変えてみよう。
「双子エルフがこちらに来たのは女神様のお心遣いですか?」
「いえ。秩序神の考えでしょう。
私は関与はしていません。
あの二人は元気でしょうか?」
「とても元気で大活躍しています。
いずれ秩序神様にもお礼を言いたい所です。
お会い出来ないでしょうか?」
「秩序神の行動は私には分かりません。
あの子の意思と行動一つでしょう。」
秩序神様には簡単にお会いできそうにもないな。
ふむ。意外と裏で繋がっていないのか?
あまり過信するのは危険だが。
「嘘はついておりませんわよ。エリオス。」
考えている事がバレたか。
じゃあ別の質問。
「皇太子殿下がいつの間にか友達になったのですが、
それも女神様の思し召しでしょうか?
エリカお嬢様もそうですが、あまりにも王侯貴族の
知り合いが増えるペースが早すぎます。
誰かが意図しているとしか思えません。」
「エリオス。いつの間に・・・」
「そうね。うふふ。
でも私ではありません事よ。」
あ、これは怪しいな?
でも女神様では無いという事は別の神様か?
謎は深まるばかり。
「余談はさておき、
色々な国の動きを感じます。
国境を超えた多国間の争いが増えるでしょう。
勿論、魔王国も。
貴人方の力量を楽しみにしていますよ。」
そう言うと女神様は消えていなくなった。
今回はそれが言いたかったのね。
でも参考になりますありがとうございます。
もう少し権力があれば貿易や流通のやり方も変えられますが、
そこは然るべき人に相談するしかないか。
「なによ、あの馬鹿女神。
訳の分からない内容だけ、言いたい事だけ言って帰るのね。」
エリカお嬢様の意見には同感である。
国際紛争に巻き込まれる事を前提として考える必要があるか。
既に一市民の枠を超えつつある現状をまだ理解できずに。