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繊維工場改造プラン その⑧ 伯爵領セントハイム村 洞窟内ダンジョン探索

今回は鉱山内部の洞窟を探索します。

産業革命以後の鉱山労働問題は非常に深刻なので

法改正など行政レベルの対応まで必要となりました。

また安全面では現代でも無くならない死亡事故が多数出てきます。

女性、子供も多数の労働者になりました。

この小説は一応ファンタジーなので、モンスターの皆さんにも登場してもらいました。

今後はどうやって対応するのでしょうか。

村長さんの要望より鉱山の洞窟を探索する。

名目はモンスター退治が目的だが、この時代の技術レベルと

労働環境を監査するのが重要な目的。

産業革命時代の鉱山の文献であまりにも酷い労働環境の話が書かれているので

実情を調査すると共に、法律整備の提案をしなくてはならない。


「思ったより広い空間なのね。」

「入り口はともかく、奥の方になると人1人が

 入れる程度の空間になるでしょう。

 奥の方は僕らが安全を確認してきます。」

「ねえエリオス君。炭鉱とかって凄く危険な労働環境って言うじゃない。

 怪我だけはしないようにね。」


エリカお嬢様が心配する。分からなくも無い。

イギリスでは1842年に 鉱山および石炭鉱業法が制定されるまで、

8才未満の子供も労働者として働かされたそうな。

非常に危険な労働で死亡事故も出た。

粉塵や火災、ガス爆発、一酸化炭素中毒など多数。

産業の発展の裏側には現場作業者の苦しみがあることを断じて忘れてはいけない。

僕がいる限り、労働者を断じて死傷させる訳にはいかないのである。


「そんな劣悪な環境にモンスターが移り住むなんてな。」

「拙者が知る限りでは、洞窟内は外敵が少ないから

 まだ安全らしいのじゃ。

 ドワーフ族の中でも有名な話じゃ。」

「そうなんですか。エトムントさん。ありがとうございます。」


ドワーフ族のエトムントさんに教えてもらう。

日本で炭鉱跡地は意外とあって佐渡ヶ島の金山とか観光地である。

そういう観光地で色々見たり聞いたりしたことはあるが、

やはり本職には敵わない。

是非教えてもらおう。


「粉塵を吸うと体に、特に肺によくありません。

 皆さんはハンカチか布を口と鼻に当てて、

 直接粉塵を吸わない様にお願いします。」

「粉塵は体に悪いのですか。メモメモです。」

「お兄。人間は体が弱いのでありますな。」

「ロイナ。そう言うな。体の作りは仕方がないのじゃ。」


ドワーフ兄弟に非難されている様に聞こえなくもないが仕方がない。

粉塵の恐ろしさを知る現代人は沢山いるであろう。

健康被害が甚大なので必ず防塵マスクは必要である。


洞窟内を見ると、実際にツルハシで削っているのは

体力のある大人が殆どであるが、単純作業は子供の労働者もいる。

運搬や清掃、不純物を取り除く解体作業といった単純作業は子供の仕事である。


「・・・実際に聞くのと見るのでは大きな違いね。

 当時はこんな過酷な労働を強いていたのね。」

「エリカお嬢様。まだ産業革命は始まっていません。

 生産量も僅かなので、全体に影響していません。

 しかし、生産が増えるとより過酷な労働環境が世界に蔓延します。

 機械的な道具や運搬トロッコ、水運もありませんし蒸気機関もまだです。

 守る保護具や労働環境も確立していません。

 今は致し方ありませんが、

 僕らが彼らを守るんです。」

「そうね。覚えておくわ。

 それが現代人の仕事よね。」


エリカお嬢様は今は貴族と言えど知性高い現代人。

異世界転生する前はどういう生活をしていたのか、

いつかこっそりと聞き出そう。

決して洗いざらい調べられている仕返しではありませんからね。


と雑談していると、奥から労働者が逃げてくる。


「モンスターだ。

 集団で抵抗してくるぞ。逃げろ。」


おいでなすったか。

ゴブリンの集団が多数。

背丈も小さめで僕ら子供と同格。


「拙者らドワーフ族が前衛を務めるじゃ。

 皆さんは後方支援を頼むのじゃ。」


ドワーフ族のエトムントさんとロイナさんが前に出ようとする。


「あら、ゴブリン風情が何人いても私の敵ではありませんわよ。

 洞窟内では炎系の魔法は危険だわね。

 ならばこちらで、

 アイスバレット!」


眼の前に氷の矢が出来て、ゴブリン達に突き刺さる。

颯爽と出てきたゴブリンをなぎ倒していく。

エリカお嬢様は複数の属性魔法を使いこなせるのか。

やはりエリート貴族魔法使いか。

ヤバイ、怖いな。

密かに怒らせない様にしよう。


「残りは我々で各個撃破だ。

 行くぞ。」


ドワーフ兄弟と双子エルフ、僕が切り込みに入る。

奇襲を受けたゴブリン達は連携を取ることが出来ず

数の有利を活かせない。

僅か10分足らずで数十体を殲滅してしまった。


出番の無かったエリノールお嬢様が呆然として眺めている。


「皆さん凄く強いんですね。

 驚きました。」

「何よエリノール。ちょっとは仕事しなさいよ。」

「いやあ、その。洞窟と技術力をチェックするのに気を取られていたと言いますか。」

「注意してないと襲われるわよ。

 貴方も帝国貴族なんですからね。しっかりしなさい。」

「えへへ。」


2人は顔見知りで仲が良いのか和やかに雑談している。

ファンタジーの世界ではやはり貴族は教育をしっかり受けていて魔法も強い。

戦争になったら女性でも問答無用で戦場に駆り出されるんだろうな、

と現代との違いに悩むエリオス君。


「まあ不定期にモンスターが入り込むのを防がないと生産に影響出ますね。」

「どうするの?」

「柵を作って夜間でも入り込み出来ないようにするとか、

 定期的に冒険者にパトロールしてもらうか。

 問題はアンデットとか動物がモンスター化したら危険。

 出てきたら専門家に任せるしかない。」

「村単位で組織的な対応になるのね。」

「専門家の派遣と協力を教会とギルドに要請しましょう。」


色々と問題が出てきているな、と実感した。

しかし鉱山経営が順調に行われなければ我々も資材を入手できなくなる。

当然、労働問題も解決せねばならない。

これからは伯爵領内経営も大きな課題を抱えてくるだろうと

頭を抱えるエリオス君だった。

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