繊維工場改造プラン その⑥ エリカお嬢様と転生者
いわくつきのエリカお嬢様がやってきました。
恋愛小説みたいに美貌があって男を落とし込む力量があれば良いですが、
モンテスパン侯爵夫人の様にしたたかに生きられるんでしょうか?どうでしょう。
現代人からみたら確かにこの時代の人権って無いですよね。
そんなエリカ嬢の孤軍奮闘物語の途中で、
幸か不幸かエリオス君は出会ってしまいました。
今回はそんな話にしてしまいました。
エリカお嬢様に呼ばれて別行動する。
他の方々はニーナさんとチェリーちゃんに任せて。
申し訳ないと思いつつ眼の前のエリカお嬢様にご挨拶する。
「公爵お嬢様。
何か御用でございましょうか。」
頭を下げて敬礼する。
あちらは国家の王族である。多分。
銀髪美少女のエリカお嬢様は僕を呼ぶなり、ビシッと指を刺して言う。
「この場ではそういう儀礼は不要ですわ。
私が聞きたいのは、貴方はこの世界の人間では無いわね。
どう見ても子供の持つ知識では無いわ。
どう見ても子供が作れる工場ではありませんわ。
貴方は何者ですか?」
素性を探りに来たのですか。
でも生まれと育ちには偽りはなかったり。
とりあえずそう答える。
「この村出身であることは間違いありません。
お父様もお母様も元気です。」
「そう。なら異世界から来た転生者ね。
あの馬鹿女神の。
こんな嫌な世界に飛ばして何がしたいのでしょうか。」
「女神様をご存知でしたか。」
何やらお怒りな様子のエリカお嬢様。
お仲間でしたか・・・
ついうっかり出たこの言葉が僕の失言であり、
後々、大変後悔する事になったのだが今は気が付かない。
まあ女神メサ様は何も告げずに無条件で飛ばして来おったからなぁ。
「ふふん、転生者って自白したわね。」
「自白ではないですけど、
平民より貴族のお嬢様の方が良かったのではないでしょうか?」
「本気?
自由もなく、家から出してすら貰えず
毎日お稽古に縛られて、
政略結婚で好きでも無いジジイと結婚させられそうになって、
イケメンだけど性格悪い兄にイジメられて。
こんな女性に人権もへったくれも無い時代に飛ばして
あの馬鹿女神は私に何をさせようと思っているのかしら。」
まあ、そうなのかな・・・
恋愛小説の様なラブロマンスはありませんか。
女性の人権が無い時代と言われると、中世は本当に辛いですね。
平民の女性は労働力として酷使されたそうですが。
ちなみに中世ヨーロッパでは貴族の女性は所有物の様に扱われ
被選挙権も含めた普通選挙が実現したのも1894年のオーストラリアが初である。
19世紀末なのであった。
宗教が悪影響していたのが女性の人権であった。
フェニミズムが欧米で流行っているのも、
女性蔑視の宗教の反動であろうとも言われている。
「恋愛小説みたいには上手に行きませんかね?
中世の貴族は政略結婚の裏で愛人を沢山作っていたらしいですけど。」
「そうよ、それ。
愛人。結局、王族か権力者のお金持ちと結婚するしかないの。
・・・でもそれだけじゃ寂しいわね。
そうだ貴方、私と共にこの国を出て新しい国を作らない?
女性の人権を認めた現代的な憲法を作った軍事国家を作るの。
そうして軍事大国を作り上げて、この世界の遅れた国々を併呑してしまいましょう。」
「それは400年後の未来の話ですね。」
ガックリするエリカお嬢様。
何というアグレッシブな性格。危険な思想だなぁ。
僕も平民ゆえに縛られてる所はありますが、
産業革命初期の資本家になれば比較的拘束はされないのかもしれません。
貧しい国々だったから子供と女性の庶民は労働者。
過酷な労働が記録に沢山残っていますよね。
それも宜しくない歴史的事実。
しかし貴族様は・・・
「まあ、女性と言ってもマリア・テレジアの様な女傑もいらっしゃった事だし。」
「・・・そうも言ってられないのよ。
とにかく、今の状況から考えられる私の未来が嫌なの。
貴方と私で手を組まない?
私が世界を変えれば良いことですわね。
この世界の女性の権利を変えてやるわ。」
「それは、そんな簡単には。」
「良く見たら貴方は可愛い顔をしているわね。
そして現代的な考え方で女性を縛り付けたりはしなそうだし。
女性の権利も大切にしているはず。
ふふん。貴方がモテる理由が分かった気がするわ。
貴方は公爵家に来ない?
私達の世界を作りましょう。」
「それは無理です。
僕1人では何も出来ません。
フランス革命や名誉革命みたいに革命しますか?
しかしそれだけでは沢山の血が流れて終わりです。
民衆の意識を掴む必要があります。
王族や貴族は排除されて権力者が変わってしまうだけです。」
考え込むエリカお嬢様。
自由の国を作り上げるのも簡単では無いのだ。
「・・・そうね。
でも私の政略結婚さえ防げばやり様はあるわね。
現代人の知恵を見せてやりましょうかしら。
貴方、私に協力しなさい。
これから貴方は私の仲間です。」
「・・・嫌です、と言って
それは僕に拒否権はあるのでしょうか?」
「勿論、無いわ!
余計な事を言うと転生者ってバラすわよ。
そして危険人物として国外追放だわ。
それに比べれば、私と仲良くする位大した事では無いわね。
決まり。もう異論は挟まない事。
宜しくね。」
「僕の意見も少しは聞いて下さい・・・」
恐ろしい勢いでエリカお嬢様が話しかける。
多分、相当フラストレーションが溜まっているんだろうな。
まあ貴族に生まれた方もそれはそれの苦労があるんだろうな。
我が家はお父様とお母様が優しい人だったので感謝です。
これも、女神様の理解していない一方的な善意だろうか、
それともエリカお嬢様が女神様におねだりしたんだろうか?
僕には分からないが、別の暴走お嬢様が仲間になってしまいましたとさ。




