耐火レンガの試作と殿下共の見学
さてようやく耐火レンガの試作製造を開始します。
当面は試行錯誤の繰り返しでしょうが。
レンガが割れない条件を、測定することが出来ません。
まあ、カンコツ経験を昇華させるには工夫が必要ですねというタイミング。
また本当は暇じゃない好奇心旺盛な王族共がわざわざやってきて見学をしていきます。
他のメンバーもそのうち。
まあものづくりに興味のある貴族なんて当時はどれだけいたんでしょうね?
さて、耐火レンガの製造としようか。
製造プロセスのイメージはこんな感じ。
・原料を粉砕する
・粘土を集めて水を混ぜてドロドロにする
・レンガの型に流し込む
・日干し〜100℃まで加熱して水分を飛ばす
・窯に入れて〜1300℃まで焼く
⇒多分この時代の木炭と窯の構造では良くても1000℃位までしか上がらない
・2週間程、木炭と空気を供給しながらゆっくり温度を上げる
・割れたレンガを集めて再粉砕し骨材として原料に戻す
・骨材と粘土を混ぜてレンガの型に流し込む
・以下繰り返し
割れたレンガを粉砕してシャモットと言う骨材に戻すまでが一連の作業。
最初の昇温は揮発分が出て収縮するので多分割れる。
一度焼いて水分などを飛ばさないと固まらない。
また再度、粘土を混ぜてバインダーにしないと骨材だけでは形状が保てない
そういう課題をクリアにする為でもある。
面倒だが。
割れた不良品やリサイクル品が余ってくれば、
それを粉砕して再度骨材に混ぜる事が出来るだろう。
廃棄ロスはゼロである。
ちなみに現在の耐火レンガは、断熱性能をもたせる為に
骨材を粒子にして出来るだけ気孔が出来る様に設計されている。
セラミックの考え方である。
実は空気は断熱性能を持つので、セラミックファイバーみたいに
スカスカの繊維ほど、断熱材として有効。
この当時は粉砕技術とプレス成形技術が無いので
断熱性能をもたせることが出来ない。
つまり耐火レンガから熱が漏れまくり。
エネルギー効率が悪いのでさぞかしくそ暑い現場だったろうと
想像に容易い。
また、焼成炉も現在ではコンベアでトンネルキルン炉など連続炉を使っており、
設備を丸ごと温めて冷却する時間とコストを削減しているが、
当時は窯で焼くので冷やさないとレンガを取り出し出来ない。
温度管理もガスバーナーも無いしプログラム制御も出来ない。
断熱材もない。
放射温度計も熱電対も無いので測温すら出来ない。
そこらへんは職人のカンで勝負するしか無いのであろう。
中世はよく物を作れたな。
レンガを焼く工程だけはレンガ職人さんにお願いして窯を借りるしかないが、
それ以外はこちらで工程設計する。
「ええとまず粘土を混ぜて型に詰めて乾燥させます。
固まってきたら窯に入れてもらいましょう。」
エリオス君は粘土を混ぜて型に流し込む。
最初は少数で良いだろう。割れるし。骨材として再利用する。
割れる事を前提にして雑に作って雑に焼いても良い。
リサイクルするから。
乾燥したら寸法と重量を測定して、かさ密度を算出する事を忘れない。
・・・結構ばらつき大きいな。
どこの工程か?
ケガキ針で適当にロットNoを刻印してメモする。
焼いた後で収縮率と割れ幅とかさ密度を測定するためである。
「じゃあこれをレンガ職人さんに持っていって、
2週間サイクルで焼いてもらいます。
その前に、色が白く無いレンガは除外しましょう。不純物が多いです。」
研究室の総出で作業する。
勿論、エリオス君と教授も一緒である。
「エリオス君。これで耐火レンガを作るのか?
ちゃんと焼けるんだろうか?」
教授から質問。
「最初は割れて簡単に焼けないと思いますが、
原材料はリサイクルして使います。
後は温度のタイミングが命なので、最初はゆっくり焼いてもらいます。」
水分が揮発する100℃前後が一番収縮量が多いだろう。
ゆっくり温度を上げないと厳しいかな?
後は、シリカが結晶化し始める600〜1200℃前後。
こちらは制御困難なので現時点では諦める。
放射温度計が欲しいなり。
と、作業をしていると
話を聞きつけてきたトーマス殿下とジェロード皇太子殿下が見に来る。
くそ、情報を盗みに来たな。
大学にいる限りは情報が筒抜けであるが。
この国最高の雲の上の人種が、暇なんだろうか。
「坊主。そんな感じでレンガを作るのか?
型に流し込むまでは良いが本当に炉に使えるのか?」
「割れるんで簡単には出来ないでしょう。
作り方としては多分間違っていません。
後は試行錯誤で焼き方を調整するしかないです。
将来は研究室で窯を作りたいですね。」
「サラッと、窯を作って自分で焼きたいと言う坊主が
世界のどれだけいるんだろうか・・・。
坊主は全くいつもながら変人というか。」
「卿は本当に物好きだよね。
噂だけじゃなくて実際に見てみると余計驚くよ。
面白い人物だね。」
「・・・。汚れますから、危険なので殿下達は離れて頂きたく、
お願い致します。」
「フン。そうやって俺を遠ざけようとしてもそうはいかんな。
こんなに面白いイベントを俺抜きでやろうなんて、
製鉄プロジェクトのリーダーを甘く見ない事だな。」
と殿下共が口を挟む。
やかましい、この好奇心旺盛な最上級王族共。
こっちは現代で製造業で食ってきたんだ。
口には出せないが、心の中で呟く。
・・・あ、服が汚れた。
全く仕方のないトーマス殿下だなぁ。
「本当に汚れますって・・・
じゃあ皆様、レンガを持っていって、職人さんにお願いしておきます。
今日はご協力誠にありがとうございました。
また結果はレポートで報告させて頂きます。」
と言って研究室の皆様にお礼を言う。
手押しの荷車に乗せてレンガを運ぶ。
・・・とっても重いな。子供の体力では無理か・・・。
この時ばかりは、転生前の体と体力が欲しい。
「ふふふ、坊主。
お前のちんちくりんな力では運べないな。
安心しろ。俺が部下に手配しておいてやる。
さあ、感謝するんだ。
俺をちゃんとリーダーとして敬え。事前に連絡をよこせ。
俺を無視するんじゃないぞ。」
・・・大変ありがたいトーマス殿下のご協力だが、
心の中で許したくない葛藤が生まれて悔しくなる。
そして大笑いする教授と研究室の皆様でした。
これを繰り返すので、完成まではかなり時間がかかるのであった。




