家族の団欒と今後の戦略の相談
今日は家族で情報交換。
主に王都での情報。
今後の方針や最近の出来事などを会話します。
歴史通りすんなり工業化が進むでしょうか?
工場見学が終わったら、
伯爵様達とは別行動になる。
「余と殿下と教授と父上は領地の館に戻る。
卿はキルテル村に泊まってから王都に戻るが良い。」
「承知しました。」
家族でゆっくりする時間を与えてくれたんだろう。
伯爵様の心遣いだろうか。
いつものメンバーは当然キルテル村でのんびりしてから帰る。
それぞれの家へバラバラに泊まる事になった。
我が家には双子エルフが寝泊まり。
ニーナさんが大分戦ったが、護衛すると宣言した双子エルフの抵抗は激しかった。
その話は長くなるので今回は伏せておく。
「エリオスも王都で大分友達を作ったようだな。
まさか、殿下や伯爵様までいらっしゃるとは。驚きだ。」
「エリオスちゃんがお友達沢山作って羨ましい。
お母さんにも紹介してね。」
お父様、それはあの方々の作戦です。
実は儲けの種の個人情報を盗みに来ているだけなんです。
お母様、その解釈はちょっと違います。
お友達と呼ぶには恐れ多い方々が多いです。雲の上の方々ばかりです。
女神様の思し召しとも言うのでしょうか?
「お父様の方こそ、あの大きな工場を何時建てたのですか?
驚きました。」
「エリオスからの手紙を読んで、あの川沿いの土地を取得して設備を入れた。
動力源として水車を導入するんだろ?
水車も手配してある。もう少し製作に時間がかかるはずだ。」
「ありがとうございます。
今人力で回している紡績機を水車の動力にする事で、
もっと沢山の設備を動かすことが可能になります。」
「そうか。どんどん改良していくな。
生産性は向上してコストも下がると良いな。」
「繊維工場の方は新型機を手配中です。
まずは水力梳綿機です。
櫛で糸を均す設備です。」
「それがあると本当に助かるな。
糸を解いて均すのは本当に大変なんだ。」
しみじみとお父様と会話する。
もうすっかり町工場の社長さんである。
細かい部品はこちらで木材加工に得意なモリソンさんに
お願いしておこう。そうすると次回取りに行くのが楽である。
「次は製紙業を進めていきたいです。」
「もう次の話か。
まだ準備は出来ていないぞ。」
「段取りはまずこちらで考えます。
現在は手製の印刷機で王都で学生新聞を作っています。
情報を発信するには木材から作る紙が足りていません。
ちょうど豊富な木材資源のあるこのキルテル村は非常に都合が良いのです。
伯爵様と一緒に、聖書を翻訳してこの国の人が読める様にしたいです。」
「聖書とはな。大きく出たな。
近くに教会が無いと神様の教えがわからないからな。
庶民の為にも、安価な書物は今後必要だろうな。」
と言って学生新聞の残りをお父様とお母様に渡す。
配った残りを見本として取っておいてある。
「まあ、これは面白いわね。
王都の最新ファッションとグルメですわ。
このお菓子美味しそうですわね。
こちらでも人気が出そう、エリオスちゃん。」
「ええ、お母様。
王都で人気が出れば欲しい人は増えると思います。
美味しいものを食べたい、新しい事を知りたい
そう思う事は普通です。
そういう情報を提供するんです。」
「この村でも入手出来る様になるの?」
「ええ、勿論。その為の商業ギルドです。」
とりあえずアピール。
女性の方がこういう情報に目ざといはず。
流通の改善は今後の課題だろう。
持ち帰って協議しよう。
「情報をお金に変えるとな。それを販売するのか?」
「情報は価値であると誰もが知っていますが、
それを発信する方法を知りません。
本でも新聞でも伝聞でも。
それが出来るのは大手ギルドのコミュニティだけです。
一般の方々にも広く沢山知って頂くのも
新しい商売です。」
「なる程な、記事は誰が書くんだ?」
「お父様、宜しくお願い致します。
もとい、各地方の方々と王都など都市の方々が
持ち寄って合体させるんです。
そして将来は全国エリアと各地域で内容を分けます。
つまりこの国内外の情報を集めて配信します。
まだ無理ですが。
ニュースであったりグルメであったり、ファッションやスポーツ
政治や外交、海外情報などなど。」
「難しそうな話だな。
でも紙に書いて送るだけなら数日遅れになるが情報は共有出来るな。」
「伝書鳩、というわけにもいかないですよね。」
まだ通信技術は無いのだ。
まあネットなんて無い時代ですからね。
鉄道か電気工学の技術が出来るまではかなり先だろう。
それまでは、郵便技術を確立させないといけない。
国がやるべきか?ギルドがやるべきか?
まだ分からない。
「ギルドが将来的には存続するかは分かりませんよ。お父様。」
「それまた爆弾発言だな。
外ではそんな事を言うなよ。エリオス。」
「今は主要な商業メンバーがギルド活動を独占していますが、
資本家が出てきて独自に活動するはずです。
またギルドの力が行き届かない地方から自立するかもしれません。
そうなると独占で利益を得ていたギルドは崩壊します。
寡占化していないと、自由に値段を決めれてしまいますから。
お客さんも安くてサービスの良い方に移ります。」
「資本家が増えると社会が変わるのか。」
「競争社会になればですが。良い方にも悪い方にも。
決して良い社会とは言えなさそうですけど。」
現代で一番ご存知の話が床屋さんでしょうか。
少し昔まで床屋さんの組合で価格などありましたが、
競争過多になり、格安店が人気ですよね。
価格決定力は寡占化によって決まるんです。
そして資本主義は労働者階級を生み出し、
貧困と過重労働が・・・とほほ。
元サラリーマンには辛い話です。
「まあそれはともかく、
機械化で仕事が楽になるとありがたい。
また、作業が簡単になれば大量生産も容易になる。
人件費も高い職人さんを使わなくても良くなるし。
ただし、設備投資にお金が相当かかるんだよね・・・。」
「設備投資は難しい判断ですが、
効率を良くした分だけ差分で儲かるんですね。
逆に設備が高すぎると、人海戦術の方が安かったり。
人件費が高い都市や国と安い地方や国でも違ったり。」
「例えば魔法使いは貴族エリートが殆どだからな。
機械に変わると誰でも使える、そういうものづくりと社会が主流になる、か。」
「戦争も、経済も、生産も、流通も、政治も
魔法の時代は終わって工業化の時代になるでしょうね。
そうなると貴族の世界から資本家と庶民の時代になるかもしれません。」
「そうなると、まずはこの工場を発展させるのが俺の使命だな。」
「お父様、宜しくお願い申し上げます。」
「おう、任された。」
あはは、と笑いながらお父様としみじみと雑談する。
規模は非常に小さいが実際お父様は既に資本家である。
この地方の小さい村から繊維工業による資本主義は既に始まっている。
工場制機械工業の小さな小さな第一歩である。
この国では産業革命はこのキルテル村から始まったから。




