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3年戦争 難攻不落の要塞と水源を狙った毒 その18

 ラッドガー大佐率いるグリーヴィス公爵軍の攻撃は続く。

コンクリートで固められた砦に苦戦。断崖絶壁に囲まれた砦は揺るぎもしない。

城壁は穴を地中深く掘り、コンクリートを流し込んで固めてある。

エリオス君の提案でごく一部の場所には鉄筋も入れて強度を補強してあった。



「力攻めは控えよ。

 地中に洞窟を掘れ、爆薬を使え」

「駄目です。地中まで壁があります。突破出来ません」

「!。なんという強固な」



 グリーヴィス公爵軍のラッドガー大佐は攻めあぐねる。

これ程までにコンクリートで固められた強固な砦を攻める準備はしていない。

しかし最大の目標であるアナトハイム伯爵が直ぐ側にいる。

安易に撤退を主張出来る状態では無くなっていた。



「大佐。戦況は如何でしょうか?」

「ここで長期戦の準備などしていない。兵站も長くは持たん。

 が、この戦いは長引くな。想像以上に堅固だ」

「敵は少数です。力押しで落とせませんか?

 国元も長期戦を望んでいないと思われます」

「・・・奴らの弱点を探せ。水か?食料か?衛生面か?内通者か?」



 思わぬ苦戦に苦悩するラッドガー大佐。

如何に兵力差があろうとも力攻めで落とせる雰囲気を感じさせない。

であれば弱点を探すしかないが、そう簡単に見つかるとは思えなかった。


 元々、この戦争は経済重要拠点の占拠が目的でありその他の目標は実は建前に過ぎない。

しかし連戦の快勝でアナトハイム伯爵の首と宗教戦争へと戦争目的がすり替わってしまった。

長期戦は想定していない。食料も冬越えの装備も準備していない。


 本格的に戦争するならどこかで冬準備し直す必要があったのだ。

開戦してしまえば後には引けなくなる。ここは敵地である。

不利と思われれば民衆や地域の貴族が反抗してくるかもしれない。

軍事力が健在である事を分からせねばならないのだ。



「ラッドガー大佐。奴らの水と食料はどこから調達しているのでしょうか?」

「井戸と備蓄か?」

「川や井戸に毒を投げ込みましょうぞ。

 奴らがそれを水源にしているなら効果はありましょうぞ」

「毒は下流の住民の被害が出る。しかしこの際やむをえぬか???」



 部下から毒を提案されて悩むラッドガー大佐。

毒は確実に民衆の恨みを買う。しかしここで勝ってアナトハイム伯爵の首を取れば

後の事は何とでもなる。そう悪魔は甘く囁くのであった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 アナトハイム伯爵様は上から戦況を見守る。

敵は砦の突破が困難。上からの砲撃に無防御。

力押しは困難だと理解したのであろうか?



「敵は攻めあぐねている様子だな」

「さて、どうでしょうか?伯爵様」

「卿ならどう攻める?レイモンド大佐」

「そうですなぁ」



  今の所、順調に防御出来ているアナトハイム伯爵軍。

寡兵とは言えこの砦は簡単に落ちそうにもない。



「水源は大丈夫であるか?」

「水源は河川とは隔離されております。

 外から妨害は出来ませぬ」

「それは凄い。

 余は敵が穴を掘って水源を絶ちに来ると思ったが」

「コンクリートを破って地中深く井戸の水を抜く事は困難でしょう。

 彼らにはその装備も時間も無いでありましょう」

「宜しい。戦闘を続けよ」



 レイモンド大佐が防衛状況を伯爵様に説明する。

地中から穴を掘って攻められない状況で井戸水を抜く事は無理だろうと判断。

コンクリートで埋め込んだ要塞を落城させるにはそれなり以上の技術が必要だった。



「伯爵様。ご報告があります」

「良い。報告せよ」

「敵が川に毒を放ちました」

「・・・馬鹿な。川を水源として居らぬ我らに何という無意味な」

「これは不味い事になりましたな伯爵様」

「どういう事だ、レイモンド大佐」

「この川の下流には多くの農地と民衆が水源として利用しております」

「余の民衆が毒害に合うと?」

「恐らく」



 敵の愚かな毒に頭を抱える伯爵様。

これは実際、下流の民衆の多くの怒りを買う事になった。

中立的な立場であった小さな領主さえもアナトハイム伯爵様に同情的になり、

怒りに満ちた貴族と民衆は義勇軍として伯爵軍に参戦する事になった。

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― 新着の感想 ―
結構な長期の戦闘になってきました いいですね
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