3年戦争 落城 その13
そしてここ伯都アントウェルペン。
籠城戦は続いていた。敵は攻めあぐねて持久戦に入る。
エリオス君も戦闘を継続しつつ、撤退の準備を進めていた。
「そろそろ敵の本陣が来る頃ですな」
「・・・限界ですね。
民間人と怪我人を早急に城外へ」
「エリオス殿」
必死の攻防戦で既に負傷者は多数。
完全に包囲されてはいなかったので、城の外へ逃しているエリオス君。
落城した時の被害を最小限に抑えるために少しでも人減らしをしていた。
大砲も可能な限り外部へと移動させていた。
もっとも敵も序盤はともかく、途中から攻撃の頻度が下がった。
損害の大きさを鑑みて主力との合流を優先し、力攻めから持久戦に切り替えた。
結果として落城が後回しになり現在に至っている。
「敵はかなり疲弊している様に見える」
「敵の大砲の砲撃もかなり少なくなりました。
大佐、総攻撃をしましょう。
今なら落城できるかもしれません」
「駄目だ。本陣からの命令で総攻撃は禁止されている。
あんな古城を一つ落としても何の意味も無い、とさ」
「我らの戦果にはなりますが」
「そうだ、それだ。
我らが手柄を立てすぎるのが嫌なのだろう。
もっとも姫君の安全確保もあるだろうが」
「あの古城の中に姫様がいると?」
「いないだろうが、いないという保証もない」
グリーヴィス公爵家のラッドガー大佐は城の外から睨みながら、
戦況を分析する。損害を無視すれば力攻めで落城させる事は出来なくはない。
しかし敵の主力はアナトハイム伯爵率いる陸軍である。
ここで勝っても戦争の勝利にはならない。
しかし膠着状態は崩される事になる。
城壁の一部が敵に占拠されてしまった。
城壁を奪われて城門を開閉されてしまえば、多数と少数の戦いになる。
そうなれば全滅である。
「どうやらここまでの様ですね。
全軍、裏口から撤退を。
最後尾には僕が戦います」
「おっと、小僧。お前には任せられない。
小僧には無理だ」
「ジェレール中佐。危険です」
「お前を殺させるな、と伯爵様のご命令だ。
悪く思うな」
「何を、中佐」
ジェレール中佐はエリオス君を気絶させる。
そうして近くで護衛していた双子エルフを見て言う。
「おい、そこの双子のエルフ。
こいつを決して殺させるな。必ず伯爵様の下へ生きたまま連れて帰れ」
「・・・承知しました。中佐殿」
「俺の部隊はまだまだ健在だ。
ミルチャー卿にも伝えろ。
後は任せろ、とな」
「ご武運をお祈りいたします」
そう言ってエリオス君をティアナさんとシルヴィー君に渡し、馬に乗せる。
それを見届けると満足し、最後の戦いに挑むジェレール中佐。
部下を集めて戦いの準備をすべく宣言する。
「よしお前ら集まれ。
奴らに反撃して足止めする。
俺について来い」
「中佐。
武者震いがしますな」
「伯爵様への忠誠を証明する絶好の機会だ。
ここで活躍すれば歴史に名前が残るぞ。大変名誉な事だろう」
「大変名誉であります」
「なあに、後の事は英雄殿に任せて気にするな。
俺らは時間を稼ぎながら敵を倒して突破すればいい。単純だ。
奴らも勝ちが見えれば死にたくないから本気で戦わないだろう。油断する。
戦は数だけで無いことを奴らに教えてやろう。
鍛え抜かれた伯爵軍エリート部隊の剣の強さを教育してやろうではないか」
こうして敵の場内への侵入を許し乱戦になり、ジェレール中佐の部隊は殿の役目を果たす。
しかし多数に少数である。一人、また一人と倒れていった。
戦いは殲滅戦になるかと思いきや、籠城戦に苦しんだ敵兵は城内の略奪を開始する。
その数日間、進軍が止まった隙にエリオス君達は撤退する事に成功した。
もっとも多数の損害を出し、戦略的にも敗北であった。
この敗北は、誰もが伯爵軍の崩壊を予見していたのだが・・・




