3年戦争 伯都アントウェルペン攻城戦開始 その7
城壁内側の広場に人々を集めて言うエリオス君。
そこには軍人だけでなく、一部の民衆が残ってしまった。
家族や身寄りの無い者、ここで死ぬ覚悟の年寄り。傭兵。冒険者。そして少数の義勇兵。
「皆さん。
今回は侵略者から家族と伯都を守る戦いです。
この戦いは城壁の修理で決まります」
「城壁の修理?」
「そうです。敵は大砲で城壁を破壊しようとする。
敵の大軍が城内部に侵入すれば数の力で負けです。
我々軍人が敵を迎撃する。その間に皆で協力して城壁を修理する。
大量に用意した土嚢、レンガ、セメントで城壁を復旧させます。
これは土木戦争です」
「・・・土木戦争。それなら俺らにも」
今回の戦いの趣旨を念を押して説明するエリオス君。
最終的には城壁を守りきる事が勝利条件であった。
当然突破される所は出てくるだろう。2重防衛できる様に仕掛けを作るしかない。
「伯爵様は国境警備隊と合流して傭兵も雇用します。そして援軍も来ます。
それまで持ちこたえれば勝ちです。
皆さんは死ぬ気で塹壕を掘り、土嚢を積み上げて壁にして
マスケット銃を持って防衛線を構築して下さい。対価は皆さんの命です」
「・・・」
「守れねば、ルガーリンの町の様に略奪にあい皆殺しでしょう」
エリオス君はキツめに宣言する。
元々戦力が違いすぎるのだ。死ぬ気で防衛しなければ負ける。
そういう戦いになると意識付けさせなければならない。
ビビる人には先に逃げてほしい。
「エリオス殿。
しかし援軍は本当に来るのですか?」
「それは大丈夫です。
あの娘は絶対に僕らを見捨てない。自分の運命も全てを今に掛けているから。
世界の果てでも来てくれそうな気がします」
「・・・あの娘???」
「さあ準備を進めて下さい。
すぐに敵は攻めて来るでしょう」
「・・・承知しました」
エリオス君は防衛戦の指示を出す。
そして開戦の火蓋は切って落とされるのであった。
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グリーヴィス公爵家のラッドガー大佐が城の包囲をすすめる。
敵は少数。一気に力攻めしたい所であったが、当然損害は出る。
大口径の大砲は無いので小口径の大砲では大きな穴は開けられない。
なれば・・・
「この城は上から攻めるか?
正面から攻めるか?
下から穴を掘って攻めるか?
どうだ参謀」
「理想は上からでしょうな大佐」
「今は上空から城を攻撃出来る武器を持っていない」
「であれば地中からでしょうか?」
「穴を掘るには時間がかかりすぎる。数ヶ月はかかるだろう。
本陣が先に到着してしまうわ」
「合流なされるのでは?」
「フン。それでは武功にならん」
「なら正面からですか?
力攻めか食料攻めで?」
「・・・仕方がないな。まず少数で威力偵察するか。
敵の戦力を確実に把握する。主力は城の包囲をそのまま進めろ。
準備させろ」
「承知しました。大佐」
敵を少数と侮ったラッドガー大佐が城攻めの準備をすすめる。
エリオス君の準備が整う前に総力戦にしてしまうべきだった。
そしてその時間は城の防衛に有利に働くのであった。
「まずは威力偵察。攻撃を開始せよ」
「承知しました。大佐」
こうして伯都アントウェルペン攻城戦は始まったのであった。