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3年戦争 伯都アントウェルペンでの決断 その6

「伯爵様」

「作戦は決まったか?時間に猶予は無いぞ」



 早朝に伯爵様に呼び出されたエリオス君。

緊張した顔つきで昨晩考えた作戦を伯爵様に説明する。



「籠城戦にします。

 我らは援軍をアテにし、野戦築城と夜襲とゲリラ戦術いや消耗戦で敵に対抗します」

「ほう。援軍とな?今の余にどんなアテがあるのだ?」

「ですが伯爵様には、魔法使い隊を率いて国境警備隊のローラッド大佐と合流して頂き、

 戦力を立て直して頂きます」

「どういう事だ?余に逃げよと?説明せよ」

「我らが伯都を守り抗戦します。

 その隙に傭兵隊長のジェレール中佐が傭兵を集めて戦力を集結させます。

 伯爵様が合流し、そこでようやく戦争が出来る状況を作り出します」

「・・・卿はここで死ぬ気か?」

「我らは伯爵様と民衆のために時間を稼ぎ、命を捧げましょう」

「・・・」



 エリオスが意図的に顔色を変えずにポーカーフェイスで伯爵様に答える。

それに気がつかない伯爵様ではない。

どう見ても無謀な作戦である。

昨晩に怒った影響であろうかと訝しむ伯爵様。



「軍師たる卿がそう判断したのか。

 ・・・卿は絶対に死んではならぬ。

 アナトハイム領だけではなく、この国いや世界の損失である」

「我々は負けませぬ。

 序盤にいかに苦戦しようとも、

 戦いは最後に勝った方が勝ちなのです。伯爵様」

「・・・しかし、いやそれでさえも卿がいなくては」



 ポーカーフェイスの伯爵様が珍しく狼狽える。

しかしエリオス君の考えでは他に選択肢は無い。

もはや結論は出した。後は援軍を待ち、時間を稼ぎながら対抗するしかない。

エリオス君は伯爵様との話を打ち切る事にした。



「防衛戦の準備に入ります。

 それでは伯爵様。時間がありませんので失礼致します。

 どうかご無事で」

「・・・待て、待つんだ」



 伯爵様を無視するかの如く、部屋を出て戦の準備に入るエリオス君。

防衛の指示はすでに出してあるので準備は進めているが時間が必要である。

そこに執事のデュランさんがエリオス君を見つめていた。



「デュランさん。

 伯爵様とご家族様をよろしくお願いします」

「エリオス様もご無事で」



 エリオス君がデュランさんに挨拶すると丁重にお辞儀して返すデュランさん。

説明してあるので意図は伝わっている。

執事のデュランさんに挨拶して別れるエリオス君。



「・・・エリオス殿。良いのか?」

「逃げる選択肢以外で、戦うのであれば他に方法はありません。

 ちゃー殿も伯爵様と国境へ向かって頂けますか?」

「エリオス殿。

 ちゃーを馬鹿にするでないぞ。

 昔の南の異教徒との戦争は過酷であったわ。

 ちゃーはエリオス殿と共に戦う」

「申し訳ありません。ありがとうございます」

「準備を進めようぞ。

 これだけ不利な戦いもちゃーは久しぶりじゃ。

 武者震いがするわ」

「では作戦通りよろしくお願いします」

「うむ、ちゃーに任せよ」

「ご無事で・・・」



 ここでちゃー様と別れるエリオス君。

王都駐留部隊のコネット中佐に出会う。伯爵軍の数少ない高級指揮官であった。

エリート部隊と共にエリオス君とこの籠城戦に挑む事になる。



「準備は進めている。

 しかし卿は相変わらず無謀な作戦だな」

「ここで伯爵様さえ生き残れば、我ら伯爵軍に逆襲のチャンスはあります。

 が我々がここで生き残る保証はありません。

 コネット中佐。伯爵様のためにここで我らと共に死んでもらえますか?」

「フン。私は卿のその言葉を信じよう。

 私の命はすでに伯爵様にささげてある。舐めるなよ」

「・・・ありがとうございます。

 敵は近づいているでしょう。

 配置に付きましょう」



 無謀な籠城戦に挑むエリオス君の作戦に賛同するコネット中佐。

頼もしい上官と共に戦う準備に入る。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 そしてこちらはグリーヴィス公爵軍側のラッドガー大佐

第一次ダーヌビウス川の戦いでアーシャネット大佐率いるアナトハイム軍を破り

敵が少数の事もあり、時を急ぎ主力と合流せずそのまま軍を推し進めていた。



「ここが伯都アントウェルペンか」

「古風な城ですね。城壁が高い」

「大口径の大砲を持ってきていれば、城壁に穴を開けて軍を押し込めば終わりだったな」

「主力と合流しますか?大佐」

「ここでアナトハイム卿を捕まえれば手柄だ。

 幸いにも敵は少数。

 威力偵察も兼ねて力押しで攻めて、落とせなければ主力と合流する」

「承知しました」

「ローリッジで見せたエリオスとやらの力を、今再びここで見せてもらおうか。

 アーシャネット大佐の様な名前だけの雑魚で無い事を期待しようか」



 勝ち戦に続き、大軍を率いて戦うラッドガー大佐には余裕すら見えた。

ここで伯都アントウェルペンを落とし、アナトハイム伯爵様を捕まえれば

この戦争は終わりである。

勝てばラッドガー大佐の名声は高く響き渡るであろう。

だが、ここの籠城戦は泥沼の展開に引きずり込まれる事になる。

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