3年戦争 伯都アントウェルペンにて その4
そしてここは伯爵様のいる伯都 アントウェルペン。
砂糖の町ルガーリンでの一報を聞き、軍を集める伯爵様。
しかしグリーヴィス公爵軍の方が一足早かった。
結局、なし崩し的に開戦となってしまった。
アーシャネット大佐と国境警備隊を除くローラッド大佐を除く軍人が集められた。
その中には勿論、エリオス君もいる。
当然軍人や友人たちも含めて。緊迫した事態である。
「此度の侵略行為を余は断じて許せぬ」
「我らも伯爵様と同じであります」
伯爵様と軍人がグリーヴィス公爵軍の蛮行に怒りをしめす。
しかし敵軍はすでにこちらに向かっており猶予はない。
勝てる打算をしなくてはならない。
問題は敵が大軍であり、こちらは少数である。
「して、どう戦う。卿らよ」
「敵は多勢、我らば少数」
「・・・」
実際の戦術論になるとすぐに意見は出てこない。
ルガーリンの町を突破されてしまうと、もはや伯都まで遮るものはない。
ゆえに、籠城戦か野戦しか選択肢がなくなってしまう。
どちらも大軍相手に不利な状況は否めない。
「内政官殿はどうだ、軍師として述べよ」
「敵の戦力は強大です。
伯都アントウェルペンを放棄して、後方に下がります。
前に盗賊が住み着いていた山の砦にこもりましょう。
その後に国境警備隊と合流し、北国とジュリヴァ王国に援軍を要請します」
「外国を内に入れると言うか?国際戦争になってしまうぞ。
そのまま併合されるであろう」
「正面から対抗する戦力はありませぬ。
野戦築城しても素通りされてしまえば何の意味も持ちますまい。
何卒ご自重を」
「うるさい」
イライラを通り越した伯爵様が柄にもなく怒鳴りつける。
これは危険だと思ったエリオス君。
しかしここを収める手段が今手元にない。
まずいなと思ったエリオス君。最後の頼みの綱であるが・・・
「妾と魔王国軍は貴国の内戦には参戦せぬぞ。
中立を宣言させて頂く」
「・・・そうか」
暇つぶしに来ていた魔王国のロザリーナお嬢様が言う。
本当は参戦して暴れたいのだが、立場がある。
流石に伯爵様も魔王国には何も言えない。言える立場ではない。
「報告であります!」
「良い、入れ。
報告しろ」
「ルガーリンの町で戦い発生。
アーシャネット大佐は敵軍に少数で突撃し、その後消息不明」
「・・・」
「ルガーリンの町はその後、略奪にあい破壊。
住人たちは奴隷として・・・」
「なんと、余の民が」
怒りを通り越して、目頭を抑える伯爵様。
一方的に敗北して略奪までされたのであれば、領主としての面子は持たない。
もはや一刻を争う事態であった。
しかし打つ手がない。
「もはや許せぬ。
余は野戦にて敵を殲滅する」
「お待ちを伯爵様。
多勢に無勢であります。
せめて何か勝ち目のある策を」
「宜しい。ならば卿が勝てる作戦を考えよ。
明日の朝一番で報告せよ。
それまでに考えをまとめよ」
「・・・承知しました」
伯爵様は無理難題を押し付けて自室に戻る。
エリオス君は目を閉じて一旦諦めて、一同を集め作戦を練る事にする。