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エリカ姫さま 逃亡中

 それから先方の要望より北国のラリオロフ陛下を連れて工場視察に行き、帰国して頂いた。

しかし問題は続くものでグリーヴィス公爵家より抗議が

アナトハイム伯爵家に届いていた。



「伯爵様。

 エリカ姫様を帰国させて頂きたい。

 貴領にいる事は聞いておりますぞ」

「確かに過去には余も聞いておるが、

 24時間監視している訳ではないので、余も行方までは把握しておらぬ」



 エリカお嬢様の実家のグリーヴィス公爵家からの使者であった。

新しくグリーヴィス公爵になった公子の指示で国中を探し回っているらしい。

当然、一番怪しいのは王都とこのアナトハイム領であった。



「グリーヴィス公爵様のご指示で、エリカ姫様には帰国して頂き

 婚約者と結婚して頂く。

 そういう命令である」

「公国の事情は理解した。

 見つけ次第、公国に報告いたそう」

「エリカ姫様は前公爵様の危篤時にも帰国されず、

 例え王都の大学に留学中と言えども許されざる事態であります。

 よろしく頼みましたぞ、伯爵様」



 そういうとグリーヴィス公爵の使者は帰っていった。

慇懃無礼な態度に伯爵様もイライラしながらも下手に対応する。



「という事だ。

 エリカ殿。

 余としては一旦帰国してほしい」

「嫌よ」

「余としても国内最大の貴族と事を構える訳にはいかぬのだ。

 いずれバレる」

「この瞬間に私の人生がかかっているのよ」



 奥に隠れていたエリカお嬢様と一同が出てくる。

とても嫌そうな顔をしているのは見なくても良く分かるエリオス君であった。

当然困るが、エリオス君には権力はない。



「エリカよ。

 一時帰国しても何も死ぬわけではなかろう」

「嫌よ。

 一旦帰国したら最後。

 幽閉されて二度と外出できないわ。

 あなたなら分かるはずよ」

「嫁入り時じゃの。諦めよ」

「他人事だと思って」



 ぎゃあぎゃあ必死に抗議するエリカお嬢様。

ロザリーナお嬢様も当然他人事。笑ってからかうがたちが悪い。



「そうだわエリオス君。

 私と一緒に駆け落ちしない?

 グリーヴィス公爵家の娘という地位など捨てても良いわ。

 勘当されたってエリオス君がいれば全然気にしない。

 同じ故郷の現代人仲間。きっと良い人生を歩めるわ」

「アタシのエリオス君を巻き込まないで頂ける?貴族様」

「余の内政官殿を巻き込まないで頂きたいな」

「そうだぞエリカ。おとなしく貴族の義務に従うがよろし」



 必死なエリカお嬢様にうんざりする一同。

エリオス君として同情するが、この時代のルールに逆らうのが難しいのを知っている。

しかし現代人としては耐えられない苦痛であろうか。

庶民のニーナさんは当然お怒りである。

庶民と貴族は人生が違うのだ。 政略結婚は当たり前の時代だ。



「何とかグリーヴィス公爵殿を説得してみよ。エリカ」

「無理よ。あのお兄様の頑固さは私が良く知っているわ」

「ふーむ」


「そうだなエリカ。

 どうせ駆け落ちするならエリオスと一緒に魔王国に来るが良い。

 大恩あるグリーヴィス公爵家の者なら魔王陛下も歓迎しようぞ」

「魔王国に亡命ね。

 それも良いわねエリオス君。

 きっと楽しい生活が待っているわ」

「それは認めぬ。

 余としても、大恩あるエリカ殿の意向は尊重してやりたい所だが・・・」



 エリオス君は考え込む。

もちろん駆け落ちなど出来る訳もないが、

何か良い案が無いか考える。


 涙目になるエリカお嬢様を見てしまうと見捨てられなくなってしまった。

政略結婚は諦めろ、と言うのは簡単な事であるが同情してしまう。

やはり本質は現代人なのだ。



「そうか、駆け落ちか」

「エリオス君。決断してくれるのね?」

「魔王国への留学というのはありかもしれない。

 あそこならグリーヴィス公爵家の手の届かない所だ」

「・・・まあ次善の手として容認するわ」

「一旦、国内のほとぼりが冷めるまで落ち着いて留学するといい」

「留学の資金は余が提供しよう。

 多少なりとも恩返しにな。それで良かろう」



 諦めがついたのかエリカお嬢様は同意する。

本来であれば姫様を誘拐したに等しく言語道断である。

一つ間違えれば戦争もありえる。

知らぬ存ぜぬでいつまでも押し通せる訳ではない。

この事件をきっかけにして、後日ロイスター王国に大きな傷跡を残す事になる。

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