表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
425/450

北国の野獣 晩餐会

 伯爵様は急遽、ラリオロフ陛下の歓迎の宴を開催する。

ロイスター王国内から暇な要人にも声を掛ける。

当然ながらロイスター王家にも声を掛けたが旧教徒の守り主としてやんわりと断られる。

つまり、偶然として新教徒に同情的な貴族が集う事になったのだ。


 そしてアナトハイム伯爵家としても軍人が集められた。

激戦を乗り越えた歴戦の兵揃いになっている。



「ご紹介いたします。

 こちらがミルチャー卿でございます。ラリオロフ陛下」

「ちゃーがワラキアのヴラド4世・ミルチャー・ヴァシリッサである。

 元ドラコ騎士団のヴァンパイアである」

「ほほう、あの伝説のヴァンパイアロードの勇者殿か。

 その名声は大陸中に響き渡っておる。

 朕もお会いできて光栄である」

「ちゃーはあの異教徒、南イェルデュークと戦う同士であれば歓迎しようぞ」


「朕も紹介しよう。

 こちらが我が国の将軍のフィリッツである」

「将軍のフィリッツです。

 軍人としてお目にかかれて光栄です」



 ちゃー様を見ると驚いた様子で、挨拶する。

ここで武人と武人が初会合する事になる。

この時はあまり気にもしなかった2名であった。



「妾が魔王国の士官であるロザリーナ・フォン・ルシフェルである」

「貴官が有名な魔王国のロザリーナ卿であるか。 

 朕も歴史の事は水に流し、重要なのは現在である。

 新教徒として魔王国と交流を持ちたいものである」

「良いであろ。

 妾が魔王国に使いを出しておくので、

 後日、外務大臣と交渉するがよい」

「それは実にありがたい」



 たまたま近くで暇そうにしていたロザリーナお嬢様を呼んで

ラリオロフ陛下に紹介する。

ロザリーナお嬢様としては北国に興味はなさそうであり、

軽い気持ちで外務大臣に丸投げするつもりであったが

この奇妙な多国間関係は将来の大戦争で非常に大きな影響を及ぼす事になる。

この国家の運命も・・・



「そしてこちらが宰相閣下のチェスター男爵。

 製鉄業の幹部、経営企画財務を担当して頂いております」

「チェスター男爵と申します」

「東の聖王国と隣接している貴国の宰相閣下どのの所か。

 東を攻めてくれぬか?」

「その様な事は約束できませぬ。あくまで王位継承権の内紛。

 貴国と聖王国に対しては中立を宣言させて頂きたく」

「まあ中立でも良かろう」

「我が国に兵を向けるのであれば容赦はいたしませぬ」 



 チェスター男爵は冷淡に返事する。

そもそもチェスター男爵に大きな権限を与えられていない。

遠方から宰相閣下が来れないので代理である。  



「皆様方。デザートは如何でしょうか」

「これは甘いな。

 砂糖菓子か」

「最近は余の領内で砂糖を作っているので、

 貴族からギルド、民衆まで砂糖の魔力に負けておる。

 菓子からパンや飲み物にまで砂糖を使う輩も出てきた。

 いずれ貴国にも輸出したいものである」

「・・・ほう、砂糖とな。そんな高価なものを。

 それはありがたいものだ」



 一般的に砂糖が高価な時代であるので、

エリオス君が国産化に成功した事はまだ知られていない。

金持ち貴族の戯れか?と思ったラリオロフ陛下であったが、

まさか内製化しているとは夢にも思っていない。



「そうだ、貴国は製鉄を行っているらしいな。

 なら朕の鉄鉱石や銅を買ってくれないか。

 朕の鉱山は硫黄が少なくてとても良質な鉄が作れる事で有名である」

「・・・!」



 ラリオロフ陛下の一言にエリオス君の目の色が変わる。

硫黄の脱硫技術はまだまだ難しいからだ。

低硫黄の鉄が入手出来れば、不純物の少ない強い大砲が作れる。

刃物にも最適である。



「ラリオロフ陛下」

「エリオス卿か」

「その話に興味があります。またお聞かせください」

「良い。

 貴国が良い顧客になってくれる事を朕も望んでおるぞ」

「貿易と経済は良い2国関係を作ってくれそうですね」

「ははは。

 良いことをいうの」



 お互いに笑いながら心の中で貿易のソロバンを弾く。

そしてお互いが必要な国になれば友好関係も深まるであろう。

こうして様々な思惑を持ちながらも宴は良好に進んでいった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ