各地からの手紙 近況報告
とある日の話である。
エリオス君はワーカーホリックと言われる様になり休みを取る様にした。
ここ忙しかったのは事実だが、そう言われると不満もある。
それを知ってかニーナさんが遊びに来る。
「ねえねえ。エリオス君。
遊びに行こう?」
「ニーナさんは気楽でいいね」
「ムッ。いきなりなご挨拶だわね」
つい暴言を吐いてしまうエリオス君。
別に文句を言いたいわけでもなかった。
つかれていてつい愚痴が出てしまった。
反省しなければならない。
「そうそう、アンタに手紙が届いているらしいわよ」
「ありがとうございます。
ええと、まずお父様からね」
エリオス君はお父様からの手紙を読む。
なかなか実家には戻れていない。
悪いニュースは聞ていないので、順調であると良いのであるが、
と思ったエリオス君。
「元気か?エリオス。
最近は家族も増えたし、事業も順調。おかげさまでな。
繊維工場は増産。増築。
製紙業は聖書が売れたおかげでありがたく黒字化。
流石にキルテル村の人口だけでは雇用が足りなくなってきたので
他の村にも工場を出そうと思う。
伯爵様とエリオスのおかげだ」
「順調で何よりだ」
「久しぶりにキルテル村に帰りたいわよね」
「そうだね・・・」
「家族も増えた・・・?」
エリオス君の実家の事業は順調そうである。
繊維産業も軍隊服や靴下など優先的に安く購入している。固定費を吸収できるだろう。
製紙業も活字の投資費用が膨大だったので不安だったが、
順調に聖書が売れだして、次に新聞と起動に乗りつつある。
儲かる産業にはそのうち競合も増えてくるだろう。
気になる一言があったが、後日実家に帰った時に確認が必要な気がしたエリオス君。
「次はウィルテルさんか。
確か宰相閣下の所にいるんだったな」
「あの宗教事件は大変だったね」
「まだ本番はこれからだよ。
えっと」
「エリオスさん。元気ですか?ウィルテルです。
現在は宰相閣下の元で翻訳活動と布教活動をしています。
こちらは隣の東の神聖王国からの文化交流が盛んです。過去には戦争もありました。
留学生のケンタウロス族兄弟がよく勉強に来ます。
ほとぼりが冷めたらそのうちいつかアナトハイム領に向かいたいです」
「たしか大学教授として招聘する予定だったわね」
「ウィルテルさんも元気そうで何よりです」
「翻訳か。
まだ旧約聖書や文献など、いっぱいやることはありそうですね
ウィルテルさんからの手紙を読むエリオス君。
東も気になる所である。今の所元気そうである。
アナトハイムの大学教授としてそのうち是非活躍して欲しい所であったが、
宗教問題は簡単には解決しそうにはない。
「エリオス殿。
魔王国のジュゼリオ技官です。
お久しぶりですね。
我が国は蒸気機関の改良に成功しました。
近々、船に乗せて蒸気船にするつもりです。
いずれロイスター王国にも向かってみたいです」
「ジュゼリオさんですか。
蒸気船の開発に成功しましたか。恐ろしい国だ。
技術格差は当面縮まりませんなぁ」
「誰?その人」
「魔王国の技官です。
最先端の技術を誇るの魔王国でも特に実力のある人です」
「私は留学に行っていないの。
・・・泣きついてでもエリオス君と行くべきだったわね」
「大げさですよ」
魔王国のジュゼリオ技官からの手紙であった。
開発力は相変わらず先進国で、敵になったら恐ろしい。
仲良く交流を続けていきたいものであった。
「こちらは・・・?
誰かしらね?
エリオス君知っている?」
「北方のラリオロフと申す。
一度お会いしたかな。
近日中に貴国とアナトハイム伯爵にお会いするつもりである。
貴国はともかく伯爵殿は新教徒に理解がある方とお聞きしているので
交流を深めたいものだ。
そのときはよろしく頼む」
「この人は?」
「知らないの?」
「一度お会いした事がある、と書いてあるが思い出せない。
誰だろう。
でも北方の国という話はあまり聞かないので気になる」
「揉め事は避けたいわね」
エリオス君に北方の国の知り合いはいない。
相手はエリオス君をよく知っているらしい。
非常に気になる所であるが、近日中にこちらに来るそうなので
まずは伯爵様に相談してから対応を考えようと思ったエリオス君であった。
そして、この北方の国から時代は動いていくのであった・・・