幼馴染のニーナさんの心配事
エリオス君は商業ギルドに手紙を届けてトーマスさんと
分かれて一旦、学生寮に戻る事にする。
当然であろうが怒りにみちたニーナさんが待ち構えている。
正直怖かった。
一人で出歩いて、そして危険な目にあうだろうと心配していただろう。
それが分かっていたので実は帰るのを躊躇していたのである。
「エリオス君。元気そうね。
アタシの言いたい事は分かるよね?
そこに座りなさいよ」
「ニ、ニーナさん。
元気そうだね。
お土産を持ってきたよ」
「ねえ、エリオス君?
アタシが我慢して我慢して
優しく言っているうちに
早くそこに座りなさいな。話があるわ」
「…怖い」
ニーナさんはご機嫌斜めである。
エリオス君は腰が引けてしまっている。
もうカンカンである。
怒りに満ちて聞く耳を全く持たないだろう。
幼馴染という鬼が・・・。
「何故、アンタは、
盗賊が出る危険なこの街道を誰にも相談せずに?」
「・・・。スミマセン。
実家の危機で」
「アタシが聞きたいのは、
自分の身を何故大切にしないの、と」
急にぽろぽろとニーナさんが泣き出した。
今まで我慢していたものが流れてしまう。
そしてエリオス君は驚く。
「アタシは、
何故、アンタが、
皆に内緒で無断で帰郷したのか。
伯爵様にも相談せずに。
それが許せないわ。しくしく。
もし盗賊に襲われて怪我でもしたら後悔するわ。
アタシがどれだけ心配したか、
エリオス君は理解していますか?」
「・・・」
当然エリオス君は理解しているが、言葉には出せない。
緊急の事態であればあるほど、
引きずり込む訳にはいかなくなってしまうのである。
言ったらニーナさんは絶対ついてくるだろう。
そして、他人の人生もふりまわしてしまう。
商業ギルドも護衛を出してくれたので、
それで十分だろうと過信したエリオス君である。
「商業ギルドがちゃんと護衛を出してくれたから、
危険を回避して往復できたんだ。
それは感謝している。
もちろん可愛い幼馴染を巻き込みたくなかった」
「…」
ニーナさんに泣かれた。
そして引っ叩かれた。
エリオス君の予想通りであった。
「以前盗賊に襲われたよね?
覚えている?
皆で協力して撃退できたけど、いつもそうなるとは限らない。
貴方は、何故、いつも、どうして、
そんなに、アタシたちが信頼出来ないの?
アタシは貴方に追いつくために努力しているのよ。
ね?手を取り合って助け合おうよ」
「…ニーナさんの大切な命を個人的都合で振り回す訳には」
そうしてまた泣かれた。
泣き出して大暴れするニーナさんである。
現代の日本と違って確かに安全ではない。
街道整備と盗賊退治は課題である。
アナトハイム伯爵領はまだ安全とは決して言えなかった。
「ともかく、今後は必ずアタシに相談してね。
自分1人で悩みを抱え込まなくて良いからね。エリオス君。
アタシと貴方がいれば不可能は存在しないわ。多分」
「・・・。ニーナさん?
お父様と家族と村の危機だったのです。
もう少し冷静に・・・ね?」
興奮するニーナさんをなだめるエリオス君。
そうして最後にとっておきのプレゼントを
ニーナさんに渡すエリオス君。
このために、ちゃんと帰ってきたのだ。
「ニーナさん、メイヤーさんとお母様からお土産をもらって来たから。
メイヤーさん特製の可愛いハンカチーフとお母様の手製のお菓子。
一緒に食べようね?」
「ぐすん、ぐすん。可愛い。美味しい」
ずっと泣き止まないニーナさん。
この後も散々説教されたエリオス君。
今後は相談してから帰郷することを約束した。
しかし、将来の戦争では誰にも止められない、
沢山の血が流れる程の大きな大きな戦いになってしまう。
そうした時は皆がエリオス君についていくしかないのであった。
予想通りのニーナさんのお説教タイムです。
まだ盗賊が徒党を組んでいる時代なので安全ではなかったりします。
そんな所が背景でしょうか。
あまりに苦情が多くて不人気な話だったので、内容を少しやんわりと修正しました。




