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宗教改革 討論会への召喚状 その2

 神学部のマーガレット教授、ウィリエルさんと会話して

ウィリエルさんには教授として伯都 アントウェルペンに移ってもらう。

そこで論文を発表してもらう事になった。

受け入れ準備は伯爵様にお願いして手配して頂く事にするエリオス君。

問題は論文の内容であった。


 ウィリエルさんが論文を公開すると、当初は無視されていたが

かなり後になって教会側から反論論文が多数出てきた。

そしてそれを面白がって、学生が翻訳し新聞に投稿された。

ロイスター王国はこの学術論争の話題でひっきりなしになった。



「内政官殿。

 卿はやっかいな物を余の領内に持ってきたな」

「伯爵様。想定の範囲内では?

 大学を作られたなら教授は必要でしょう。うってつけの存在では」

「フン。

 ・・・ふふふ。次はどんな手を打ってやろうか。

 まるでチェスの駒だな。

 金にまみれた教会どもの困った顔が目に浮かぶわ」

「そう上手くいくとは思えませぬ。

 やり過ぎると宗教戦争になります。ご注意を」

「余もそこまでは考えておらぬが、

 たとえ戦っても重武装した今なら簡単には負けぬ」



 伯爵様がチェスの盤を見ながらエリオス君に呟く。

伯爵様はチェスがとても強い。

実のところ、チェスは8世紀にペルシャからロシアに伝わったとされ

伝統的なボードゲームとして現代に至っている。


 当初、教会側の反応がなかったので気長に考えていたが

教会側からある論文が出されてきた事によりエスカレートしていく。

教会側の神学者である天才ヨハネス・ダドリウムがウィリエルさんを批難した。



「教会の考え方に異論を唱える事は、しいては教皇に対する冒涜と同じ意味を持つ」

「教皇への服従はすべての神の下僕の義務なのだ」

「教皇に反するウィリエルは異端である」



 これにはロイスター王国が大騒ぎになった。

神学上での討論が、いつの間にか教会批判さらに教皇への批判にすり替えられ

気がついたらウィリエルさんは異端と名指しで批難されていた。

実の所、教皇は多額の借金を抱えており、返済に贖宥状の代金をアテにしていた。

これは教会関係者の中でも教皇に近い僅かな人間しか知り得ない極秘の事実だった。

つまり、現時点で贖宥状がなくなると借金を返せなくて困る背景だった。

当然、そんな事など伯爵様やウィリエルさんは知る由もない。

しかしこれには流石にウィリエルさんも憤慨する。



「何ですか?これは。

 これは神に対する冒涜」

「・・・ウィリエルさん落ち着いて」

「これが落ち着いていられますか?

 神に使える聖職者がこの様な安易な権威主義を、

 よりによって私を異端とは」

「教会も何故か必死の抵抗をして来ました。

 一体どんな背景があるんでしょうか」

「この様な意見は神学上で全く無価値です」


「内政官殿、余の目の前で喧嘩はするなよ」

「承知しました」



 憤慨するウィリエルさんと悩むエリオス君。

反論論文は教会の正当性と教皇の権威だけを主張するのみで

ウィリエルさんが指摘した贖宥状に関する問題を神学的に

議論出来る内容ではなかった。



「エリオス。ここにおったか」

「ロザリーナお嬢様。どうしてここに」

「何やら面白い事になっておる様じゃの。

 実は魔王国から報告が来ての、

 ホレ。これじゃ」 

「・・・これはウィリエルさんが書いた

 「贖宥の効力を明らかにするための討論」の貼り紙。

 しかも翻訳されて」

「魔王国のみならず各国に広まっておる話じゃ」

「活版印刷技術と新聞の影響力はとてつもないですね」

 


 ロザリーナお嬢様から翻訳された討論状を渡される。

これが各国に出回っている。想像以上に大きな反響があった事を示していた。



「伯爵様。手紙です」

「うむ・・・、どうやら王都で討論会を開くらしい。

 ウィリエル教授に召喚要求が来ておる」

「行くしかないであります。伯爵様」

「しかしな・・・。

 内政官殿、同行せよ」

「ハッ」

「そして腕利きの護衛を連れていけ。強者を。

 決して拉致、殺害されるでないぞ」

「承知しました」

「それからもう一つ。

 余の領内で贖宥状の販売を一切禁ずる。布令を出せ。

 販売する派閥の教会関係者を領内から全て叩き出せ」

「承知しました」


「面白くなってきたの」



 伯爵様がご指示を出す。

こうして王都での討論会が開催される事になった。

これはウィリエルさんと社会を大きく揺り動かす大事件になるのであった。

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