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高炉建築 火災原因分析、対策会議、再発防止 その9

 現場を駆け巡り原因を追求する一同。

今回は発火だけで終わったが、爆発した場合大惨事である。

調べ上げた内容を一旦整理するエリオス君。



「原因は原料起因。

 内部にガスがたまり、それが一気に吹き出して発火。

 そんな所だろう」

「エリオスさん。

 何故ですか。僕にはまだ分かっていません」

「ラスティン先輩。

 それはええとですね・・・」



 中世の高炉の原理として、高炉下部の空気孔から空気を流し込んで加熱させると

酸素が鉄鉱石やコークスと反応して炭素成分が二酸化炭素として上空に放出される。

そうして鉄鉱石に含まれる炭素成分を除去するのだが、

あくまで空気成分が鉄鉱石やコークス、石灰石の隙間を抜けていく場合だけである。

ここで仮に微粉が多量に含まれると高炉内にガスが蓋をされる形になってしまい、

ガスが高炉内に閉じ込められて圧力が高くなる。

あるタイミングの圧力で一気に放出され、高炉上部で空気と接触したガスが発火するのだ。


 つまり原料の比率を間違えないのと、蓋になる微粉を含んではいけないという2つ。

原料は塊の状態で投入しなければならない。

余った微粉は表面積が大きく、大気中では空気と反応してよく燃えるの

で耐火レンガの窯や燃料など色々な用途に使える。

しかし高炉内に投入してはいけない。

それも課題であった。

 


「エリオスさん。対策をどうしましょうか」

「結論に向かう前にまず対策会議を開きましょう。

 今、ここにいる幹部と班長さんを集めて下さい」

「了解しました」



 ある程度、情報が入ってきた段階で対策会議を行う事にするエリオス君。

再発防止策を決める為だ。そこに沢山の意見を取り込んで実行する。

対策会議の目的は問題点を洗い出すためではあるが、

関係者全員に参加させる事で決め事をしっかり守らせる為でもある。

自分が参加していない会議の決め事は守らない事が多いからだ。



「それでは対策会議を始めます。

 まず発生時刻は○月△日 11:00で、発生内容は轟音と共に発火。

 怪我人はゼロですが、二次災害や品質問題を考慮して一旦操業を停止。

 それから調査内容は・・・」

「火災といえども小規模だな。

 停止は大げさではないか?」

「いや、今回はたまたまです。

 高炉内部は外から見えません。

 一気に加熱した場合に爆発するかもしれません」

「・・・そうなのか?」

「ハイ」


「他には原料倉庫に大量の仕掛があり、投入比率が

 実験設備と違っていた事、それから作業者のヒヤリング内容と記録不備。

 また粉を大量に投入していて空気が排出される部分の蓋に

 なってしまい高炉内部に蓄積されて一気に噴き出して発火したと推定」

「ふーむ。俺にはちょっとよくわからないが正しいのか?」

「再現実験をしてみましょう。

 小さいツボに下から思いっきりガスを吹き込むと、

 ・・・一気に吹き出します。

 それに火が付いたと思います」

「・・・そんなものかな?」



 簡易的なツボを用意して、粉を詰めてから

水車の空気を一気に送り込む。当然加圧されて噴き出す。

模擬試験である。そういう「おもちゃ」があると意外と分かりやすい。

現代ではわざとおもちゃを作って実験する事は珍しくない。

もっとも準備は必要である。

 


「怪我人ゼロというのが救いですね」

「そうですね。

 対策を取ります。

 篩にかけて微粉を取り除いた原料だけを投入します。

 微粉は耐火レンガの窯など別の燃料として使います。

 記録のつけ方は変更します」

「原料の間違いはどうします?

 チェックリストを付けさせて徹底的に教育しましょう」

「チェックして教育するだけではなくなりません。

 物理的に異常に気付ける仕組みが必要です。

 台車に目印をつけてそれより少なければ異常とします。

 台車の色を分けて原料を目視で識別できるようにします」

「うへぇ。エリオスさん」

「人間は失敗するものなので道具の方で解決しましょう。

 ポカヨケって言葉を使います」

「ポカ・・・なんですって?」



 ポカヨケを作り対策を取るエリオス君。

チェックをいくら沢山作っても作業者がつらいだけで解決しない。

そういうものはやられなくなり、そして再発するのである。



「おい坊主。

 本当にモノになるのか?」

「トーマス殿下。

 原因が特定出来れば大丈夫です。多分」

「おいおい心配だな」

「小型実験設備を研究室のエリートだけが操作する設備と違い

 大型の量産設備は誰でも出来る様にしないと生産できないです。

 立ち上げ当初の問題は沢山出てきますが、それを乗り越えれば

 出来る様になります。多分」

「まあ坊主がそう言うならいいんだが」

「苦しいところですがひと踏ん張りです。

 皆さんもよろしく願いします」



 こうして苦労しながらも立ち上げは少しづつ進んでいくのであった。

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