表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
404/450

高炉建築 火災発生。原料倉庫を見てみると・・・ その8

 操業記録をじっと眺めていたエリノールお嬢様が

ふと何かに気がついたかの様に顔色を変える。



「この帳簿。おかしいわね」

「えっと、それ帳簿じゃなくて記録なんですけど。

 何か変な所がありますか?

 エリノールお嬢様」

「あまりにもデータが正確すぎるわ。

 毎回ピッタリと寸分の狂いもなく」


「・・・そうですか?不思議ですか?

 ・・・

 ・・・

 ぐぬぬ。ひょっとして」

「ええ、その「ひょっとして」ですわ」

「嫌な予感がします。いやまさか。しかし。そんな。馬鹿な」

「このデータの源流を調べてみましょう」


 

 そう言って一旦現場を離れて、原材料や作業者を調べに行く一同。

しかし、離れた後に轟音と共に振動が伝わってくる。



ドーン


 高炉から大きな音と振動がして発火した。火災である。

高炉が壊れたり、設備が吹き飛んだりするレベルでは無かったが、

上部の原料投入口兼ガス抜き口から若干の炎が見えた。



「総員退去!

 今直ぐ高炉から離れろ」



 エリオス君は大きな声で叫んで全員を避難させる。

作業中の人も監視員も幹部も皆驚いて逃げてくる。

どうやら怪我になる程度では無さそうであった。

しかし事故は事故である。


 現場は騒然となるが、火災の規模が小さく時間が経って鎮火した。

おそらく内部にガスがたまりそれが圧力で拭き上げたのだろう。

設備が初号機で小さいから大きな事故にはならなかった。

高炉関係の事故としてはよくあるケースだが非常に危険である。



「エリオスさん。火は鎮火した様子です」

「ありがとうございます。

 安全の為、操業は停止しましょう。

 気になる所があります」

「承知しました」



「どうやらエリノールお嬢様の予想で当たりそうです」

「そう?

 良い結果では無さそうですけど、調べてみましょう」

「そうですね。まずは作業者への聞き込みと原料倉庫を調べてみます」



 そう言って安全を確認した後にエリオス君は原料倉庫に向かう。

ここには鉱山からやってきた鉄鉱石と焼いた木炭、コークス、石灰などが

在庫として置いてある。



「あー、残念ながら予想通りですか」

「見事に在庫の比率が違うわね」

「特定の原料がこんなに余っているという事は・・・」



 原料倉庫を見ながらうなだれるエリオス君。

つまり原料の使用比率が間違っていないか?と思ったのだ。

原料倉庫の大きさの理由で、鉱山から同じ比率で原料を調達していた。

なので、特定の原料の使用量が少ないと原料倉庫にそれだけ貯まるのだ。

原材料がちゃんと規定通り使われていなければ、均等に減っていって

原材料が大量に残るという事態には少なくともならないはずである。



「でも帳簿上ではちゃんと記入されているわね」

「それは目くら入力でしょうか?

 おそらく誰かのを真似して書いたのかもしれません」

「同じ記載が続いているのはその理由かね?」

「作業員にヒヤリングしてみましょう」



 そう予想してエリオス君は作業者にヒヤリングする。



「前の人と同じ様に書きました」

「前の人と同じ作業をしていたつもりです」 

「同じ作業をしなさい、と教えられました」


「・・・」

「まあ確かに前の人と同じ作業といえば同じ作業よね?

 エリオス君」

「・・・コメントしようもありませんが、事実そうですね」



 記録の方法、原材料の混ぜ方が少しづつ狂っていて

前の内容をそのまま記載していたそうである。

原材料の使用方法も少しづつ狂ってきていたのだろうか?

それともちゃんと教えられていたのだろうか?

文字は読めたのか?


 色々と悩ましい所があるが、現在の様にマニュアルを読め

という教え方と作業方法は難しそうである。

現代社会でもよくある事である。全然珍しくない。

エリオス君は頭を抱えながら、原因を探りつつ対策を考える事にした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ