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高炉建築 完成検査と初期評価テスト その6

 作業もなんとか進み、高炉の試運転を開始する所まで到達した。

トラブル続きだったと言えなくもないがこれからが本番である。

何しろ事故が怖い。火災が発生しても不思議ではない。

高炉の中でガス抜けが悪くなると爆発するからである。



「では完成検査を行います。

 まずは外観、それから足場、空気を送り込む水車。

 逃げる時の避難経路もしっかり安全を確認して下さい」

「承知しました」

「事前に抽出した点検項目に応じて高炉を点検して下さい。

 耐火レンガの緩み、隙間など無き様にしっかりと」



 事前に作成した点検項目に応じて完成検査を行うエリオス君。

最終的に専門家を集めて総点検する。

本来は環境影響という所も重点的に見たい所だが

まだその段階に到達出来ていないので安全を重視する。



「エリオスさん。

 異常は発見されませんでした」

「ありがとうございます。

 しっかりと記録に残しておいて下さい。

 今後2号機、3号機を立ち上げる時に必要です。

 他にも気になった所の記録も前に教えたMP情報のリストに追加しておいてください」

「あっ、前に作ったトラブル事例の一覧表の事ですね。

 この前の対策会議の内容を含めてですね」

「お願いします」



 点検項目に対しては異常は無さそうである。

基本的に外観チェックになってしまうが、今後はより細かいチェック項目も

追加していかなくてはならないだろう。

その記録は非常に重要であり、またしっかりチェックしなければ原因の特定が難しくなる。


 管理者を含めた完成検査が無事終わると、

エリオス君は承認OKを判断し、トーマス殿下にその旨を報告する。

そこで最終的に稼働OKの判断することになり動作試験を行うこととなる。



「原料の準備はOKです」

「コークスもしっかり石灰や鉄鉱石と混ぜました」

「空気を送り込む水車もいつでも行けます」

「ありがとう。引き続きチェックをお願いします」



 9メートルになる小型の高炉の1号炉を見上げながら、

物思いにふけるエリオス君と教授。

耐火レンガで積み上げた中世の原始的な高炉。

上方の煙突部分から原材料となる鉄鉱石と石灰と木炭を投入する。

温度の上がり具合と炭素量の検証が必要なので今回は石炭コークスを使わない。

重量の比率が決まっている為、簡易的な秤に乗せて計量する。

シーソー的な荷重バランスが釣り合った所で判断するしかない。  



「これが、この国の高炉か・・・」

「我が国の鉄がここから始まるのか。ここまで長かったな」

「是非、大砲を鋳造して欲しい物だ」



 トーマス殿下、宰相閣下、ジェローム皇太子殿下をはじめとして

多数の国家の重鎮がこの高炉の試運転を見に来ている。

あくまで試運転であって連続操業するものではない。

しかし技術的に検証して運転出来れば2号機、3号機と建築が始まるだろう。

貴族が欲しいのは武器となる大砲である。

そして鋳造した銑鉄を更に反射炉で鋼鉄を作り上げる事が次の目標だ。



「さあ点火します。

 今回は少量、短時間の動作テストですが

 実機試験なので火災の危険が無いとも限りませんので離れて下さい」

「分かった」

「空気を高炉に送り込みますので、水車を動かして下さい」

「承知しました」



 エリオス君が関係者に高炉から離れる様に指示する。

出来るだけ設備から離れてもらい、遠方から観察してもらう。

何が起こるかはわからないのだ。



「点火して下さい。

 その後は段階的に原料を上部から投入を」

「承知しました」



 高炉に点火して稼働を開始する。

温度が上がりきるまでに1〜2ヶ月間のテスト運転して初期評価を行う。

初期評価を行う中で、品質の確認と操業の確認を行い記録を残す。

成功しても失敗しても貴重なデータになる。



「この最初の記録が勝負どころだ。

 細かい所までしっかりと観察してデータを残す様に」

「承知しました。エリオスさん」


「ついに我が国でも高炉が稼働出来るのだな」

「ええ、トーマス殿下。

 これからが始まりです」



 これが最初のロイスター王国での高炉稼働の瞬間である。

しかし、そう簡単にはいかないのがこれから先の話となる。

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― 新着の感想 ―
[一言] 〉しかし、そう簡単にはいかないのがこれから先の話となる。 うちの国だと八幡製鉄所もいろいろ苦労したそうですしね。操業出来るようになってからも採算が取れるようになるまでさらに時間がかかったそう…
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