高炉建築 転落事故の対策会議 安全リスクFMEAの見直しと勉強会、リスク改善 その4
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FMEAを作って対策をしたつもりだったが、現場では事故が発生していた。
まさにエンジニアの机上の空論だったと認めざるを得ないエリオス君。
対策を立てても現場では運用されていない、というのはよくあるパターンである。
「でFMEAって何ですか?」
「そこからですか。
もう一度勉強会をしましょう」
「アタシにも教えてよ」
「はいはい、みんな集まって」
FMEAとは「Failure Mode and Effects Analysis」の略で
故障・不具合の防止を目的とした、潜在的な故障の体系的な分析方法と
一般的に言われている。
リスクをなぜなぜ分析の方式で抽出して点数付けをして
優先順位を付けて対策を行う、リスク抽出の仕組みである。
点数付けとしては安全、法規制のリスクを最大点数にして対策を行うのが
一般的なルールだが、実際に対策が行われているかは
だからこそ「FMEAは対策までがFMEAだ」と口を酸っぱくしてまで言われる。
言う方は楽であるが、実行する方は苦行でしかない。
日本人はここが下手くそだから自動車メーカー以外は失敗するのである。
担当者に根性論を押し付けているとも言う。
そうして色々な仕事を根性論で押し付けた挙句、破綻するのである。
日本企業は上手に分業を覚えたほうが良い。
「・・・という事で以前作ったFMEAに問題が有る様です。
それも根本的な所から」
「そんなのがあったんですね。
知りませんでした」
「・・・まず責任者のラスティン先輩が知らなかった所が問題点ですか。
とほほ・・・」
「アンタはいつも難しすぎる事ばかり言いすぎるのよ。
だから周りが誰もついてこれないのよ。
アタシを除いて」
「ニーナちゃんは理解してついてこれるのね?
本当に恐ろしい天才娘だわ」
現代知識の欠点は一部の天才を除いて発想についてこれない点にある。
異世界の人間には実行出来ないのだ。
それだけ現代知識とは高度な知識の積み重ねであり、理解するまでに時間がかかる。
しかし現代の手法は専門知識なく、学歴不問で使えるツールがある
のでこうして世界中に広まり日本は製造業で逆転されてしまったのだ。
代表的にはQC7つ道具となぜなぜ分析である。
だから異世界でも頑張れば通用出来るとエリオス君は心の中で信じていた。
「・・・というのがFMEAの中身です」
「懐かしいわね。アンタとみんなで何か表を書いたわね。
すっかり忘れていたわ」
「エリオスさん。
僕はここに書いてある項目、リスクって言うんですか?
それに気づいていなかったって事でしょうか?」
「僕はラスティン先輩にFMEAを説明しませんでしたか?
忘れていましたか?」
「スミマセン。難しすぎて理解出来ていませんでした」
「そうでしたか・・・
分からない事は聞いて下さい。
このスキル表は作り直しですね。とほほ」
難しすぎる、と言われると困るエリオス君である。
その意見は否定できない。
教えて、理解したつもりでスキル表にぐりぐり二重丸を付けてしまったのだが、
それはエリオス君の判断が甘かったようである。
「じゃあ勉強がてらにFMEAを改定しましょう」
「どうするのよ?」
「まず紙に今回のリスク項目の内容と点数を見直しします。
で改善案を皆で出し直しします。
現場で出来る対策にしないといけない」
「・・・分かりました。エリオスさん」
「そうね。
でも大工さんと現場の作業の人も呼んだほうが良いわ」
「そうしましょう。お願いします」
「ええと、この項目は転落で・・・対策は手すりを付ける。
こちらは滑りで・・・滑り止めとして輪留と靴を改良する」
「いや作業する人としては・・・こちらの方が」
「いや大工として足場を改良したほうが・・・」
色々な人に集まってもらってリスク抽出と改善案を出し直しする。
安易にルールを沢山作ると現場の反感を買うが改善する話なら
逆にどんどん現場から知恵を出してもらったほうが良い。
自分たちで考えたルールなら守ろうと努力するからだ。
上から目線では改善やルールは定着しない。
理解してもらう努力というのは凄い大変な事である。
「皆さん色々と知恵を出していただいてありがとうございます。
改善案にはそれぞれ報奨金を出します。
素晴らしい案には国家から感謝状を出します。
もちろん代表者のトーマス殿下から」
「・・・それは俺か」
「そうです。立派な国家の代表兼社長の仕事です」
「仕方ないな。俺の小遣いからも出すから納期頼むな」
もちろん国家の代表者たるトーマス殿下に表彰をして頂く事にする。
こういう時こそ普段目にしない社長の仕事である。
ただ働きにならないようにお金を分配する。
適度なバランスで、知恵に報奨金を出す事でやる気を出してもらう。
個人から全体に至るまで平等な報奨金を出す事で組織を活性化する。
実はそんなに簡単にはいかないのであるが、お金というのは仕事の道具である。
「しかしなぁ。
安全の項目がこうも軽視されているとは問題だな。
時代背景か?
これじゃ人員に犠牲が出て作業どころではない」
「エリオスさん。
僕の勉強不足で分かっていませんでした」
「ラスティン先輩もちゃんとアイデアを出して報奨金をもらってくださいね」
「・・・ありがとうございます」
結局は一人では仕事は出来ないのである。
なので皆でうごいてもらうしかない。
そのための工数や勉強会はどんどん実施しなければ人材が成長しない。
やはり組織では人材教育が全てである。
「ああ、皆さん。
リスク改善の他にもロス改善やコスト改善のネタが
あればどんどん出して下さい。
沢山報奨金を用意しますので。
主にトーマス殿下が」
「おい坊主。
まあ仕方がないか」
やはりこの国はまだ貧しい。
作業者にお金をばらまくのが仕事の効率含めもっとも効果があるのかもしれない。
国家に認められればより良い仕事が出来るようになるだろう。
その時は立派な舞台を用意して上げるのも一つの手だろうと思ったエリオス君。