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高炉建築 転落事故の対策会議 何か重要な事を忘れていませんか? その3

 エリオス君は心の中でため息をついて現状を整理しようと試みる。

まずやらねばならぬ事は工事を続けるために工期に間に合わせる為に

「安全」である。そして「教育」。

決して欠員を出してはならぬ。離職ゼロ化がモットーなのである。

高所作業や怪我を恐れて逃亡者を出し続けていてはさすがに作業どころではない。

この国家プロジェクトを失敗させてはいけないのである。



「まず足場の話でしたね。

 足場を作りましょう。王都から詳しい職人を呼んできます。

 それから安全帯・・・代わりに転落防止としてロープを腰に巻くようにしましょう」

「ロープですか?

 エリオスさん」

「高所作業する時はまず風が吹いても倒れない足場、

 それに転倒防止の命綱です。

 まずそれから行いましょう。

 ラスティン先輩。後で教えますから作業者に教育を」

「引き受けました」



 なぜなぜの次に暫定対策を決めるエリオス君。

しかし何故その程度の事が出来なかったのか、と反省する。

古代から足場を使った建築物など無数にある。

建築技術が低いと決めつけるより専門家が少なかったのかもしれない。



「そんなの魔法でパパっとやっちゃいなさいよ」

「ニーナさんは・・・

 前のエリカお嬢様と同じ話になりますので割愛しますが、

 そんな事ばかり言っていますと現場監督やらせますよ?

 人間と人間の関係の辛さを学ばせますよ?」

「アタシはまだ入学したばかりの大学生だもん」

「そうですね。

 誰でも出来る作業、計画通り出来る工数をめざして

 一緒に勉強していきましょう」



 実際には土木建築から技術者まで沢山の人員が必要である。

特に現場で作業する人達にエリートを沢山置く程、人的リソースに余裕がない。

誰でも出来る作業で計画を立てねばならない。

 人間の心の中は多種多様であり、エリートの人の思考からは遠く及ばない所がある。

だからこそ、フェイスToフェイスで顔を見て設備を見て現場を見て会話する

仕事のやり方を覚えてほしいものである。

最終的には人間は感情である。特に現場では。



「次に落下しないように梯子で昇降中の作業を禁止します。

 不安定な状態で手が塞がるからです。

 足場の上に乗って、ロープで固定してから出ないと作業してはいけません」

「・・・厳しいルールですね」 

「作業には必要な工数、それには時間と工員が必要です。

 それを確保するという事に全力を尽くしましょう。

 怪我や病気などもっての他です」

「・・・」



「この事業は国家プロジェクトです。

 必ずなし得なければなりません。

 僕らはそれに任ぜられました。

 後は全力を尽くしましょう」

「承知しました」



 エリオス君の言葉にラスティン先輩が沈黙する。

色々と今までの行動で考えることがあったのだろうか。

ラスティン先輩は顔を下に向けてつぶやいている。

エリオス君からは見えない角度である。



「あっはっは。

 坊主。面白い事を言うな」

「トーマス殿下」

「社長」

「ふん。俺様が社長だ。最高権力者だぞ。

 俺にひれ伏せ」

「間違っていませんが、殿下が言うと洒落にならないので・・・」

「冗談だ。

 所で以前坊主に聞いた、なんだったっけ、エフなんとか言う物は機能したのか?」

「ギクっ。

 流石はトーマス殿下。

 痛い所をついてきますね。

 ご指摘どおりで面目ありません」

「流石は俺だろ?」

「エリオスさん。

 何ですか?そのエフなんとかって?

「・・・(これは困ったな)

 聞いていなかったんですね。後でお教えします。

 とほほ」



 機能していなかったFMEAを突っ込まれて非常に苦しいエリオス君。

そうだろう、実際に事故が起こっているのだから。

あれだけ苦労して作っても機能していないなら無価値である。

そしてそれを聞いていないという発言するラスティン先輩に

申し訳なく深く反省するエリオス君だった。

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