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高炉建築 現場監督と立ち上げ課題 その1

 ここは高炉1号機の建設予定地。製鉄プロジェクトが開始され数年。

伯都から近い、国際河川のヴァルヴァー河沿いに高炉が作られようとしていた。

土地の取得、基礎工事、耐火レンガ窯の作成、コークス炉、組み立てなど

実際に火を入れて動くかどうかはともかく一応計画通り進んでいる。

その理由は建築が主体であり、従来技術でも可能であったためでもあった。


 前回の戦争で貴族が軍を出したのも、この高炉1号機をジュリヴァ王国から守るためでもあった。

技術が確立すれば各領地で同じ高炉が作られて鉄鋼が生産されるであろう。

つまり最初の1号機の実用化が必要な壁でもあったのだ。

もっとも魔王国を中心として、他国では既に高炉は実用化されている。

良品条件さえ出せれば生産は可能と判断されていた。



 建築スタッフとしては大貴族からの派遣および、ロイスター帝国大学からも

多数の技術者が派遣されている。エリオス君があちらこちらに派遣されている際にも

プロジェクトは計画通り進められている。

 大学の研究室のラスティン先輩がエリオス君の代わりとなって

現場でチェックして指示を出していた。

他にも木炭職人のウェイシーさんがコークス炉と条件出しをしている。



「・・・そちらのレンガはここに積んで。

 それはまだ熱いから手で触らないで冷やしてから

 安全に注意して」

「お疲れ様です。

 頑張っていますね」

「エリオスさん!」

「エリオス親分!」

「副社長」



 久しぶりに建設現場に立ち寄るエリオス君と伯爵様。

プロジェクトの皆さんと現場監督である

実は密かにこのプロジェクトの会社の副社長のエリオス君であった。

トーマス殿下に面倒を押し付けられたともいう。


 教授の所のスタッフのラスティン先輩が変わりに技術指導をしてくれているので

そこは結構助かっている。やはり教授の力は偉大であった。

雇われた職人さんと研究室の学生、スタッフの皆さんが

協力しながら一生懸命作業している。

その中でもブレーンとして教授とラスティン先輩は欠かせない。



「僕は戦争に出陣していてね。

 国家の危機だったから許してほしい」

「まあ内政官殿のお陰で勝てたから戦争は良かったんだがな」

「・・・それはおめでとうございます。伯爵様、エリオス殿」



「で、どうだい。進捗は」

「建設は無事に進んでおります。

 今の所、大きな事故はありませんがレンガの落下や転倒、

 火傷に近いトラブルは出ていましてまだ安全とは言い難いです」

「そうか。FMEAを見直した方が良いのかもしれん。

 安全は全てに最優先する様に」

「分かりました。エリオス親分」



 現場を見ながら、不安全作業がないかを見て回るエリオス君。

やはり現場は自分の目で見ないと分からない。

現地に駐在しているラスティン先輩がエリオス君に説明する。

伯爵様は責任者でもあるので、現地の関係者に挨拶する必要があったので

別行動となり貴族関係者の元へ向かった。

エリオス君は工事現場に興味があるのでそちらの視察と質問を行う。



「エリオスさん」

「ラスティン先輩は元気ですか?」

「元気ではありますがやることが多いですね」

「工事現場で事故とか怪我は出ていない?」

「高所作業やレンガを積む作業、高温のレンガ炉がある関係で

 どうしても小さい怪我や火傷は出てしまいます。

 その度に作業者教育と安全対策は考えるのですが・・・」

「・・・? 他にも問題が?」

「道具とか身につける物とか高所作業とか・・・問題はなくなりません」

「そうだね。一緒に考えよう」

「ハイ」


 

 ラスティン先輩の中途半端な説明にエリオス君は疑問に思いながら、

エリオス君は工事現場をじっと見て回る事にした。

パッと見では気が付かない事が沢山ある。

しかし自分の目で見なくては分からない事が沢山ある。



 雄大に立つ建設途中の高炉1号炉。

しかし現代の建物に比べれば圧倒的に小さい。

見た目は灯台なみの大きさのイメージだろうか。

今までの苦労を考えるとしみじみと思うエリオス君であったが、

ふと見ると何か気になる所がある。



「ラスティン先輩?

 これ上部の耐火レンガを積む作業はどうやっていますか?」

「・・・どうって、普通に梯子を掛けて

 一人づつ登って作業していますよ。

 普通に」

「・・・ふーむ。

 足場を作っていないのですか?」

「足場は上部に組み上げていますが、

 そこまで登るのは梯子です」

「一応足場はあるんですね。

 しかし高所作業が気になります」



 話を聞いて、これはしまったと思ったエリオス君。

まだヘルメットや安全帯の概念が無い時代である。

当然、手すりも無い。滑って落ちる事もあるだろう。

しかし中世から近世になると当然高度な建築技術があり、

断崖絶壁の城や豪勢な寺院など優れた建築物がいっぱいある。

そのため、技術的にはさして気にしていなかったエリオス君ではあったが

実際のロイスター王国の建築技術をしっかり見ていないので

どこまで安全なのか十分理解していなかった。

そう、怪我人など日常茶飯事という事実を。



「おーい。

 また誰か落ちたぞ!」

「!!!」



 走って現地に向かう一同。

これはなんとかしないといけないな、と悩むエリオス君であった。

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