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エリカお嬢様と砂糖工場の立ち上げ⑰ MP情報と改善提案

 工場の作業者を含め関係者を全員集めるエリオス君。

工場を作る前に必要な作業の一つ。ロス改善とリスク抽出の情報。

つまりMP情報を集めて集約するのである。

MPとはMaintenance Preventionの略語であり、

平たく言うと過去のトラブルや改善に必要な情報を

リストなどで取りまとめて記録しておく事であり、

次に改善活動などをするときに必要な情報である。


 新工場を作る際に、過去のトラブル事例ややりにくい作業を

改善してから建築する必要がある。

例えば不便な状態のまま新しい工場を作っても不便な工場ができるだけである。

それは多額の予算を掛けて新工場を作っても効率が悪いまま。

どうせお金をかけるならより生産性の高いものにした方が競争力が付く、

という考え方がベースになっている。



「という事でみなさんにお集まり頂きました。

 次に作る工場をより良いものにするために

 困り事、改善したい所、面倒な作業を抽出して改善しましょう」

「・・・エリオス殿。

 改善って何ですか?改善ってどうするんですか?」

「まあそこからですよね」



 ものづくりをよくするという意味なら昔からあるが、

改善という言葉は日本からTPM用語として世界に伝わったものである。

作業者は単なる歯車ではなく、日常の問題や困り事をどんどん改善していく事で

生産性を上げたりよりよい環境を作り上げていくのだ。



「今まで作業していて、やりにくい作業や困り事の意見をどんどん出していって、

 新工場を作る前に改善するんです。

 そうして、より快適で生産性の良い職場を作る活動です」

「そんなの、エリオス殿が考えれば良いのじゃないですか?

 設計者ですよね?」

「・・・一番、作業に詳しいのは実際に作業されている方々です。

 実際に毎日触っている人には勝てません。

 この職場特有の、そういう感覚は作業している方々のものです」

「エリオス殿の仰っしゃられている事が良くわかりません」



 設計者の感覚と作業者の感覚は別である。

どれだけ設計者がイメージ通りに設計しても、実際に作業する作業者は人である。

当然、手抜きをしたり独自ルールを作ったり身長など個人差があったりして現場は変わる。

職場や作業者に応じた環境を作り上げなくては作業性は上がらない。

そうは言ってもすぐには難しいかな?とエリオス君は思った。

そう思っていると、後ろでなにか言いたそうな顔をしている作業者の

ドナルートさんが手を上げてきた。



「・・・あの、エリオス殿」

「はい、ドナルー卜さん」

「この作業台が少し小さくて作業がしにくいのですが・・・」

「ありがとうございます。

 もう少し大きくしましょう。

 このくらいですか?」

「もう少し大きく・・・」

「重要な情報をありがとうございます。

 早速改善しましょう」

「・・・それなら私も」

「いや私もこの作業で腰を痛めて」

「この置き場が遠くて面倒なんです」

「この鍋が重くて」

「ビートを切断する時に指を怪我しそうで」



 ドナルー卜さんの一声をきっかけにどんどん意見が出てきた。

それをメモして記録に残すエリオス君。

やはり経営幹部+設計者に意見を言うのは難しかったのだろうか?

と反省するエリオス君。

現代でも実際にそんな場があっても発言しない人は多数であろう。

次回からサクラを何人か仕込もうと思ったエリオス君であった。



「他にも意見がある人はこの紙に書いて箱に入れて下さい。

 文字の読み書きのできない人は班長さんか他の人に書いてもらって下さい。

 提案の1件に対して、採用されましたら奨励金をお渡しします。

 よろしくおねがいします」

「・・・奨励金」



 エリオス君は現代の改善提案の形に則って奨励金を渡す事にした。

金額はさほどでも無いかもしれないが、生活の足しにはなる程度の額にする。

改善提案は単なる改善への金額だけの話ではなく、向上心の意欲に

気づいてもらうための振興策でもある。

利益の一部を作業者に還元するだけでなく、

改善を通して作業者のレベルアップと生産性を向上する仕掛けでもあった。



「・・・エリオス君。

 考え方は面白いけど、うまくいくかしら?」

「少なくても出てきたアイデアをどんどん採用して改善を続けます。

 そして将来に競合が増えてきた際に、その人材力と改善力で勝負が決まるかもしれません。

 それは新工場を作る前が一番良いんです」

「言っている事は私にも良く分からない無いけど、

 新しい工場を作る前に改善してより良い工場を作りたいって話だよね?」

「もちろんですが、それ以外にも目的と意図はたくさんあります」

「ふうん。まあ良いわ。利益が出るなら」


 

 理解がついていかないエリカお嬢様を説得しながら、

新たな新工場に向けて課題を抽出しMP情報をまとめるエリオス君であった。

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