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友人の来訪とちゃー様と砦の建築計画

 設計と見積りを依頼して、全体を調整するエリオス君の元に友人達が遊びに来た。

最近、かまって上げていられないので痺れを切らし押しかけに来た形である。

嬉しく思いつつも、工場立ち上げの重要性を理解しているエリオス君は頭を抱える。


 幼馴染がやってきて、呆れた顔でエリオス君を見つめる。

わざわざ体調を確認する為に押し掛けてきた友人たち。

心配する目をしながらも嬉しそうな顔をして、つい愚痴の一言も言いたくなる。



「またエリたんは一人で仕事を抱え込んで。

 お店とチェリーはどうするのよ?

 一緒に遊んで?」

「そうよエリオス君。

 アタシもそう思うけど、アンタも働きすぎ。

 そんな大貴族のお嬢様のために働いても何も残らないわよ」

「チェリーの言う通り。

 僕もそう思うよ。

 たまにはのんびり休もう」


「・・・あー、そうね。みんな。

 ちょっと少し待っていて」



 半分投げやりな言葉を投げつつも、疲れた頭を整理しようと努力するエリオス君。

それを理解してさらに頭を抱えるチェリーちゃんとニーナさんにミネアちゃん。

少し忙しくなってはいるが、ウイリアム・マーシャルさんに仕事を

引き渡せば少しは楽になるはずであった。

購買交渉とスケジュール管理だけなら事務に慣れた人なら出来なくはない。

もう少しの頑張りのはずだった。


 エリオス君の悩みは体が一つしかないので、

一つの事に集中すると、他の事に集中できなくなる所であった。

実際の仕事では良くある事なので仕方がない。

自分の仕事を任せる人材を、日頃の時間で育成出来るかが重要となる。

そういう仕事を任せていく工夫が大事なのである。



「エリオス様。たまには勉強を教えてください。

 留年してしまいます」

「ティアナはもうちょっと頑張らないと。

 僕はギリギリなんとかなりそうです」

「あー、二人共戦争に駆り出されているからなぁ。

 色々と申し訳ない」



 シルヴィ君とティアナさんがやってくる。

学力は決して優秀ではない双子エルフだが、戦争は極めて強い。

その反面学業についていくのはとても辛いだろう。

幸い国家への貢献が大きいので、色々と甘く評価してもらっている噂でもある。


 そう思っていると、伯爵様に呼ばれたちゃー様もやってくる。

この方は純粋に軍事面での仕事である。



「うむ。

 ちゃーも呼ばれて参上したぞ。

 エリオス殿」

「これはちゃー殿。

 わざわざありがとうございます」

「ちゃーは大丈夫じゃ。

 最近は新兵の訓練だけでは退屈での。

 何か面白い仕事は無いのだろうか」

「まあ、面白いかどうかは分かりませんが。重要な任務です」



 ちゃー様が来たので伯爵様と会話した防衛設備の話を進める事にする。

ちゃー様は非常にご機嫌良さそうな表情をして新しい仕事の話を聞く。

その笑顔を見て、本当に退屈していたのだろうかと憶測するエリオス君。



「この工場予定地の周辺は街になるでしょう。

 郊外の田舎ですが、国際河川を利用した流通の要所で

 防衛拠点が必要になります。

 その構築をお願いしたいです」

「・・・重責であるな」

「例の魔王国の技師の力をお借りして、

 砦を築きましょう」

「その位置は外国からの守りには遠いな。

 ちゃーにも伯爵の考えが何となく読めたぞ」

「備えあれば、憂いなしという言葉が遠くの国のことわざにありまして」

「承知した。

 他にもヴァンパイア一族の力を借りても良いのか?」

「それはありがたい話です。

 賃金は伯爵様からも出るでしょう」

「済まない。皆に仕事を任せねばならんのでの」



 ちゃー様に仕事を快諾頂く。

この方は昔の南の異教徒との防衛戦の経験もあるので、

うってつけの人材でもある。                                  もとより遊ばせておくのも勿体ない。

この際だから、軍人として色々仕事をしてもらおう。


 せっかくの機会なので砂糖の試作品を食べてもらうことにする。

これから店舗でも販売するのである。

試作品の評判を聞いておいた方が良いであろう。



「そうだ皆さん。

 砂糖の試作品があるのですが、お茶会にしませんか?

 美味しいお菓子をたくさん作れます」

「「「お菓子???」」」



 目の色が変わる一同。

砂糖やお菓子は高級品である。

国産になれば、庶民でも沢山美味しいお菓子を食べられるだろう。

いつものお礼も兼ねて、試作品で振る舞うエリオス君。


 砂糖と言っても色々な種類がある。

立派な工業製品である。単なる結晶体だけではなく

様々な形状、純度、味などなど。

水に溶けやすくしたり、食感を整理したり。


 粉体工学では良くある話であるが、

塊を粉砕後にその粒度を制御したりする。

砂糖とは面白いものでその結晶を粉砕した時の粒の大きさによって

食感が大きく変わってしまうのである。

また水に溶けやすい、溶けにくいなども表面積によって大きく影響を受ける。


例えばチョコレートに使う砂糖などであるが、

細かい砂糖を上手に溶かして、混ぜると非常に滑らかな食感にしたりするのだが

あえてザラザラとした粒度の砂糖を加えて、複雑な食感を残した

トルコ他ヨーロッパのチョコレートを食べると食文化の違いが分かる。

もっとも日本人は滑らかな食感の方が好まれるかもしれないが。


 砂糖と言ってもその不純物、甘さの他に粒度という概念がある。

また角砂糖の様にあえて固めて、持ち運びしやすくするなど

料理により砂糖の好かれる形態は少しづつ変わるのである。

そういう作り分けや食べ比べてもらうのも

将来差別化する時の必要なデータになるかもしれない。

しかし庶民にとってはまだ贅沢品でしか無いのであるが。



「じゃあ、試食会でもしましょうか。

 前もって公爵家のコックさんに試作品を作ってもらっています。

 しっかり感想を書いて残して下さい」

「やったー。エリたん大好き」

「アンタらしくなく気が利くわね」

「僕も公爵家のお菓子を食べてよいの?」



 甘党試食会は大人気である。

将来、この国では各地で見られるようになる光景である。

今少しこの感歎を友人たちと楽しむエリオス君であった。

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