チェリーちゃんとメイヤーさん来訪
数日でチェリーちゃん家族に見つかってしまう。
まあこの狭い村なら当然だろう。
「エリたーーーん。
会いたかったよ。寂しいよ。
えーーん。」
泣きながら抱きついてくるチェリーちゃん。
・・・あのね、まだ王都に行ってからそんなに経っていないのよ?
さも何年もいなかったかの様な対応をされても困ってしまう。
そしてメイヤーさんの追い打ち。
「許嫁の私の娘を放置して遊び呆けている薄情な、
エリオス君が帰ってきたのね。
娘を放置したら許さないわよ。」
「ヒドイ言いがかりです。メイヤーさん。」
ガミガミ怒られる。
いや許嫁ではないですから。ちゃんとお断りしましたから。
「それはそうと、生産と生活の方はどうですか?」
「まー、全然だわね。
何しろ糸が入ってこないのだから。
商業ギルドが持ってきてくれたこの飛び杼が大変楽なので
ありがたいんですけど、収入が無くなると厳しいわ。」
まあ事前に聞いていたけど、大分やつれている。
ご飯ちゃんと食べていますか?
農業だけでは生産量が少なくて苦しい貧しい地方ですから。
「商業ギルドの情報ですと糸の不足はこの国全体の問題の様子です。
一気に失業者が出ているのかもしれません。」
「まあ、そうなるよね。うちだけじゃないよね。」
「お父様とお母様で糸車を沢山組み立てましたから、
今後は我が家から糸が供給出来るはずです。
ただし、作業者が足りません。
お父様とお母様だけでは無理です。
人手をご紹介頂けないでしょうか?」
「それはありがたい話ですわ。
農業をやっている場合じゃないかもね。
どちらが本業になってしまうのか...」
メイヤーさんと2人でしみじみと呟く。
こうなるのは事前に分かっていたのだ。落ち度である。
ただ、我が家だけでは紡績機と人員は足りないだろう。
安定した収入が見込めるなら、伯爵様に相談してみようかな。
「エリたんが村から出るならあたしも王都に行く。」
「ダメよ。王都で生活するには沢山のお金が必要だわ。
それに貴方1人で生活させる訳にはいかないのよ。
我が家には生きていくだけで精一杯なのが現状なの。」
メイヤーさんがチェリーちゃんを窘める。
普通はそうですよね。
国の保護と商業ギルドを介した収入が無ければ我が家も同じ。
今後はマニュファクチュアを運用してく中で
お父様に社長をやってもらいましょう。
「そう言えばエリオス君。
1人で帰郷したの?
委員長のニーナちゃんはどうしたの?」
「ニーナさんには学業に集中してもらうために
あえて黙って内緒で帰ってきました。」
「あっちゃー。それマズイよエリオス君。
多分王都に帰ったら激怒だね。
女心が分かってないの。
仕方がないからお礼も兼ねてお土産を上げる。
これで機嫌を直してもらいなさい。」
「お気遣い大変有り難うございます。
お父様からのSOSの手紙であったので
全く考えている余裕がありませんでした。」
「本当に刺されるよ、エリオス君。
私からの親心と思って素直に受け止めてね。」
というありがたい言葉とプレゼントを
メイヤーさんに頂く。
今度は王都に帰るのが怖くなってきた。
・・・殴られるかな。
殴られるだろうな。こってりと。
後日それは間違いなく現実になるのだった。
今回はメイヤーさんに地方の生活を語ってもらいます。
農業生産量は土地の影響がありまして、
農業だけでは食べてはいけない地方が沢山ありました。
特にヨーロッパの場合は寒い地域が多く、
土地や労働力を有効に扱うために
羊毛囲い込みや工業化の地盤があったという事です。




