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エリカお嬢様と砂糖工場の立ち上げ⑭ 伯爵様と土地の使用権の交渉


 工場のレイアウトを立案したら次は予算確保と土地の交渉である。

予算の確保、つまり資金を借りる必要があるのだが当初の予定通り

会社の株主であるグリーヴィス公爵家から借りるしかない。

当然返済は必要になるが、利息などは交渉次第である。



「工場を建てる時に必要なお金、いわゆる現金の確保は資本金では足りません」

「そこは公爵家から借り受けるわ。

 私からお父様と交渉します」

「とても重要な話ですがお願いしても良いのですか?」

「元々それが前提条件です。

 まあ渋るでしょうが、ちゃんとした技術的根拠、受注計画と

 工場立案レイアウトがある以上は最終的に納得するはずだわ」

「であればお願いします」



 エリカお嬢様に資金確保をお願いして、エリオス君は別の仕事に着手する。

伯爵様に土地の使用権を相談に行くのである。 

こちらは交渉が比較的容易であろうと思っていた。


 伯爵様の館に向かうエリオス君。

伯爵様はいつも通り執務室で仕事をしていて忙しそうである。

やることが沢山あるがスタッフが今は足りていない。

それ相応の学識のある人材を集めるのは、

それぞれの領主と領民としての関係があるので亡命に近く意外と難しかった。



「伯爵様、失礼します」

「内政官殿か。

 今日はどんな要件か?」

「実はですね、伯爵様。

 こういう背景がありまして・・・」

「それは実に興味深い話だな」



 砂糖工場の背景を伯爵様に説明するエリオス君。

雇用と税収に寄与する事をアピールする。

当然、伯爵様は乗り気になるが表情がさえない。

何かを考え込んでいる様子である。

意外に思ったエリオス君が質問する。



「ダメでしょうか?」

「認可。と直ぐに言いたい所だが、伯爵領の国際河川沿いは要所である。

 急ぎ防衛拠点を構築せねばならぬな。

 卿らの工場が戦火に巻き込まれるぞ」

「・・・伯爵様もそう思われますか?」

「将来公爵軍から喧嘩を売られるかもしれん。

 公爵家の資産であるが、余の領地と領民である。

 そうなる時、余の軍隊を出すか出さないで降伏するか。

 つまり戦争になる恐れがある」

「・・・」



 伯爵様が口にする戦争のリスク。

これはエリオス君も実は危惧していた。

本質的にアナトハイム伯爵家がリスクを負う必要はない。

しかし商売に絡みたいのも事実ではあった。

渋い顔をした伯爵様がさらに呟く。 



「どうも、公爵令嬢の個人的事情がありそうだな。

 それに巻き込まれるのもつまらん」

「ではお断りしますか」

「待て。余は別に否定をしていない。

 確かに砂糖の工場であれば、黄金以上の価値がある。

 ただ下手に出て警戒されてはならない、と言いたいだけだ」

「・・・」

「余の領内とは言え、砦を作れば警戒されるであろう。

 知恵を出せ。卿の得意分野だろう」

「・・・無茶を言わないで下さい」



 宿題と名のつくキャッチボールをそのまま投げかえされるエリオス君。

どうしたものかと考え込むエリオス君。

手元には様々な選択肢がある。

しかし伯爵家にとって、エリカお嬢様にとって

エリオス君にとって一番良い選択肢とは何であろうかと考える。

しばし目をつぶって考え込む。



「いや、砦ですね」

「・・・戦う道を選べと余に言うか」

「戦略の要地になるでしょう」

「相手はロイスター王国の大貴族だ。

 国力が違うな」

「力関係が過去と未来で同じになるとは限りません」

「アテがあるのか?」

「・・・いえ」

「フン。そうか。なら城塞都市を作るか。将来」

「・・・!」

「何、今の負傷した公爵はすぐには動けないだろう。

 警戒されるだろうが直ぐに対立する訳ではない」

「しかし、伯爵様」

「ミルチャー卿と魔王国の技術者を呼び寄せろ。

 表上では宿場町を作る。

 裏で防衛の準備を進めろ。

 あとは時間をできるだけ稼げ。

 これは余の命令である」

「承知しました」



 エリオス君の心の中を見たかの様に決断して指示する伯爵様。

この町はアナトハイム伯爵家にとって重要な拠点となる。

そして、将来に大きな禍根を作るのであった。


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