表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
353/450

魔王国へ留学⑰ ちゃー様とヴァンパイア族の末裔

 視察中に色々な噂が耳に入ってくる。

急いでやってくる公司閣下から相談があった。

何事であろうかと思うエリオス君ではあったが話を聞いてみる。



「実はエリオス卿。こんな噂がありまして。

 生き残りのヴァンバイアが魔王国に」

「・・・それは重要な話ですね。ちゃー殿に相談してみましょう」



 話の信憑性はともかく、ヴァンパイアの生き残りの話は

ちゃー様にとって重要な話であろう。

早速、エリオス君は公司閣下と一緒にちゃー様に相談しにいく。



「ちゃー殿」

「どうした?

 エリオス殿。公司閣下。

 そんなに急いで」


「実はお話がありまして」

「なんであるか?」

「元ワラキアのヴァンパイアの一族が魔王国に移り住んで

 小さなコミュニティを形成しているそうです」

「・・・なんと。それは本当か?

 ちゃーの民がまだ生きていたと?」

「お会いになられますか?」

「今更どの顔をして、とは思うがこれも元貴族としての定め。

 会って謝罪せねばならぬ」

「覚悟はお持ちの様子。

 それなら参りましょう」

「よろしく頼む。公司閣下」



 少し緊張しながらも、街の片隅にある

ヴァンパイアのコミュニティー街に向かう一同。


 街の外れにある小さな建屋である。

どうやらそんなに良い暮らしは出来ていない様子である。

というかかなり貧しそうである。



「ここです」

「うむ…では参ろうか」

「ドキドキしますね」

「エリオス殿はワラキアの民では無いであろうに」


「ええとどちら様でしょうか?」

「お主らと同じヴァンバイアの同胞である。

 そこの娘っ子、年配の者はおらぬか?」

「御婆様ならあそこに…

 呼んで来ます」

「頼む」



 緊張した赴きで待っていると、

1人の女性が現れた。



「…貴方様は、まさか」

「ちゃーはワラキアの貴族、

 ヴラド四世・ミルチャー・ヴァシリッサである」

「ミルチャー様。ミルチャー様が、生きてらっしゃったのですか」

「ちゃーを知っておるのか」

「ええ。勿論ですとも・・・ここでもアレなので家の中へどうぞ」



 そうしてこの年配のヴァンパイアの方に連れられて家の中に入る。

どうやら、ワラキアで異教徒に捕らえられて奴隷として生き延びてきて

逃亡して、この魔王国に辿りついたという話であった。

あまりに重い話に雰囲気も重くなる。

しかし、それが現実であった。

戦争に負けるという事は奴隷になることを意味していた。

そういう時代であった。



「ワラキアは占領され私達は奴隷になり、 

 そして闇夜にまぎれて逃亡し、長い時を経て安住の地としてこの国にたどり着きました」

「すまぬ。ちゃーが戦争に負けたために」

「この魔王国こそが今は我々の安住の地なのです」

「そうか・・・」

「我々はもう疲れました。お帰り下さい」

「・・・」



 神妙な顔の年配の女性はそう言い放つ。

長年の思いが込められて、そして泣き出してしまった。

それほどまでに過酷な過去があったのであろう。

過去は変えられない。

であれば未来を作るだけである。



「だが、ちゃーは必ず異教徒共からワラキアを取り戻す。

 そしてヴァンパイアの皆が安住出来る国を取り戻す。

 これは断固たる意思である。

 それだけは曲げぬ」

「・・・ミルチャー様」

「邪魔したの。

 もうここには顔を出すまい。

 皆の顔を見れて良かった」 

「もし、ミルチャー様が生きていたと知っていたら・・・」

「歴史にもしは無いのじゃ。

 そしてこれから歴史を作るのだ。

 ちゃーはそう思っている」

「ミルチャー様に神のご加護を」

「ではな。さらばじゃ」



 そう言い放つと、ちゃー様は翻って帰っていった。

それを追いかけるエリオス君一同。

悲しい過去は無くならない。

それは決別しなくてはいけないヴァンパイア族の宿命でもあった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ