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魔王国へ留学⑬ マッドサイエンティストのマルゲリーアお嬢様登場

 歓迎会で疲れてきて、テラスで一休みするエリオス君。

歓迎会のイベントはちゃー様と双子エルフと公使閣下に任せて、

こっそりと人のいない所に移動する。


「お疲れ様。エリオス君」

「エリカお嬢様も。

 遠方まではるばると」

「ふふ。

 わざわざこんな遠くに、って言いたい所だけど

 前世なら飛行機でそんなに大した距離ではないわね」

「まだ鉄道も蒸気船も自動車もありませんからね」


 現代文明に浸りきった異世界人たちが不便さにため息をつく。

しかしこの魔王国はまだロイスター王国より文明が発達している。

色々と便利なものもあるのであろうか、と想像するエリオス君。


「汝たちはこんな所にいたのか」

「ロザリーナお嬢様は元気ですね?」

「妾は慣れっこじゃからの」

「あなた魔王陛下の娘の姫様って黙っていたわね?」

「汝等も裏で気づいていたじゃろ?

 まあ聞かれてもあえて答えぬがの。

 それにランベルトもイザベラも護衛として近くにいたから危険はないの」

「…全く面倒くさい人ですわね」


 エリカお嬢様がため息をついて聞く。

異国で王族ってわざわざ公言するのも危険であったのか?

それとも護衛を信頼していたのか?

良く分からないエリオス君である。


「それより楽しんでいるか?エリオス」

「…ええ十分楽しんでいますよ。

 もっとも僕は船旅で疲れてもう眠りたいですけど」

「明日からは大学、工場見学、造船所見学、軍隊訓練…

 予定がギッシリらしいの。

 汝の母国もなかなか大変なスケジュールを組むでないか」

「ちょっと、それ僕は聞いていないですよ?」

「ん?

 事前に同盟国に日程を共有するのは当然じゃろ?

 細かい事は母国かアナトハイム卿に聞くが良いぞ」

「また裏で…騙された…」

「まあゆっくり楽しんでいくが良いぞ」


 がっくりするエリオス君とは裏腹に機嫌の良いロザリーナお嬢様。

久しぶりの母国で機嫌が良い。

そして一人の少女がやってくる。


「お姉さま」

「なんじゃ。あっちに行っているが良い。

 マルゲリーア。妾は忙しいぞよ」

「ふーん。このちびっこがお姉さまの彼氏ね」

「…どこかで見たシチュエーションだ。

 確かグリーヴィス公爵家で」

「そこでうちの妹達をネタにするのね。全く…」


 12歳くらいの小さい王女がそこにいた。

エリオス君と同い年であろうか。

銀髪でアルビノで赤い目をもつ印象的な少女である。

ドレスを着てちんまりとした 姿が実にかわいい。

魔王陛下の様な迫力は無いものの、こちらを用心深く観察してくる視点を感じる。



「私が王女のマルゲリーア・フォン・ルシフェルですわ。

 がさつなお姉さまがいつもお世話になっております」

「がさつは余計じゃ、マルゲリーア」

「せっかくど田舎に飛ばされてさぞかし嘆いていると思いきや

 お姉さまは全然元気ですもの。面白くないわね」

「妾達は疲れておるのじゃ。

 兄上たちと遊んでくるが良い」

「ふふふ。そう言って彼氏と二人きりになるチャンスを…あいたっ」


 すかさず妹をグーで制裁するロザリーナお嬢様。

こういう所はエリカお嬢様と違って容赦が無い軍人である。

大人げないとも言うかもしれない。

まあこの人は生粋の軍人であるので仕方がない。


「暴力反対!お姉さま!」

「…面倒くさいの。いったい何しに来たのじゃ?」

「そこのエリオス卿の案内役をお母様から私が押し付けられまして」

「…何と?それは妾の仕事である。ちょっと母上に抗議してくる!」

「お前は暇そうじゃから働けって…」

「妾もその発言には否定はせぬがの…

 魔法使いになんてなるからじゃ」

「あらお姉さま。魔法は便利なのですわよ。

 全て綺麗さっぱり焼き尽くしてくれますわ!」

「魔王国では大半の国民が魔法を使えるがの。

 しかしもう魔法の時代は終わりじゃ」

「それは間違いですわ、お姉さま。

 もし鉄をも溶かす魔法が出来れば製鉄所なんていらないのですわ」

「出来るのか?」

「…100年後には?」

「ダメであるな」


 妹のマルゲリーアお嬢様にツッコミを入れる。

魔法は一見便利そうに見えるが得手不得手があり、

誰もが同じ魔法を使える訳ではない。

そして力が全般的に強くない。

例えばファイアーボールでも人を吹き飛ばす事は出来ても鉄は溶かす火力は無い。

超高温を長時間維持するなど全く不向きである。

故に疲れるわりに産業用途では使いにくいので嫌がられるのであるが。



「研究は無限大の可能性を持ちますわ。

 魔法だけで高度な文明を成立させてみせますの」

「…マッドサイエンティスト系ですか」

「世の中にはこういう奇特な妹もおるのじゃ」

「火力なら確かに石炭を焼いた方が早いわね」

「人を変人呼ばわりしないで頂きたく!

 ちょっとその、私の火力が低いだけですわ!」

「それは駄目であろう」


 マルゲリーアお嬢様は魔法研究家であろうか。

マッドサイエンティストな発言をして驚くエリオス君と

手慣れたロザリーナお嬢様が疲れた顔をする。

話についていけないエリカお嬢様。  


「お姉さまもお姉さまですわ。

 こんな子供に熱をあげて。

 この大大大、だーい天才の妹が成敗してくれます」

「あー、エリオスの鬼畜っぷりは別格じゃ。

 頭の中身がおかしいレベルを相手にするのもこりたのじゃ。

 同じ視点で競うと妾は疲れるのでの。

 無理に背伸びはしない方が良いであるぞ」

「あの負けず嫌いのお姉さまが負けを認めるとは?

 貴方は相当変な人の様子ね?

 しかしご安心を。私が仇討ちをしてございますわ」

「…エリオス。お手柔らかに頼むな。

 妹のプライドを粉々にするでないぞ?」

「…それはともかく案内をよろしくお願いします」

「仕方がないわね。お母様からの任務。

 私にお任せなさいってね!」

「…本当に疲れる姉妹ですわね。

 他人事ながら」

「流石にエリカには言われたくないぞよ」


 ため息をつくエリカお嬢様とロザリーナお嬢様。

という事で魔王国視察にはマルゲリーアお嬢様が案内することになった。

マッドエンジニアたる姿をみせつつも、この国をリードしてくのは相当先の話になる。

そしてこの後に一人のとある天才少女がこの国にやってきて大騒ぎする。

とりあえず、直近のスケジュールを聞いただけで疲れるエリオス君とエリカお嬢様であった。

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