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ロザリーナお嬢様と封建主義、自由主義

挿絵(By みてみん)


折角助けて頂いたのでお礼の挨拶をしておこう。


「申し遅れましたが、キルテル村のエリオスと申します。

 商業ギルドに所属しております。少尉殿。

 此度はお助け頂き誠にありがとうございました。」

「私は同郷のニーナです。エリオス君の幼馴染です。」

「俺は同じDクラスのエルンです。」


皆で自己紹介をする。

一瞬困った表情をしたロザリーナお嬢様は諦めて自己紹介をする。


「妾はロザリーナ・フォン・ルシフェルよ。

 軍人だわ。ロザリーナ少尉と呼んで良いのよ。」

「ロザリーナお嬢様のメイドをしていますイザベラです。」

「同じく執事をしていますランベルトです。」


魔王国の方々も自己紹介する。

メイドさんも執事さんもどう見ても高貴な貴族にしか見えない。

しかも帯剣している。

お嬢様の護衛だろうな。

それも相当の腕利きの。

本名かどうかも疑わしいが。

ルシフェル?


「妾は付属学校と大学への留学生としてこの国に来ております。

 軍事を専門に扱う大学はまだ珍しいの。」

「お嬢様に振り回されて我々もここにいます。」

「振り回してなんていないわ。妾についてくるって

 勝手に来ただけじゃないの。」

「お嬢様を人間の国家に勝手に行かせるなんて考えられません。

 いつもいつも自重して下さい。」

「父上の命令だから仕方がないじゃないの。

 他所の国で学んでこいって。

 妾は常に戦場の最前線で戦いたいのに。」

「お嬢様にそんな許可を出すわけないじゃないですか。

 その目の中に入れても痛くない愛娘に対して。」 


呆然と会話を聞きながらもぼんやりと眺めていると、

急に腿に激痛が走る。


「・・・・!!!」


我慢しながら見ると幼馴染のニーナさんが腿をつねっている。

そして涙目で睨んでくる。


「(なによ。美少女だと思って、デレデレ鼻を伸ばしちゃって。)」

「(してないよ!)」


ヒリヒリした腿を手で抑えて必死に我慢していると

話題がこちらに移ってきた。


「汝らの様なあんな醜い貴族に無条件で平伏する様な、

 卑屈で軟弱な姿勢は気に入りません。

 妾は汝らに興味はありません。」

「少尉殿。それは我が国はまだ古典的な王侯貴族優位の封建主義国家の時代なのです。

 貴国の様な先進的な啓蒙君主国家の思想とは比べられません。

 理性を元に人権を考えるやり方が定着していないだけです。」

「...結局、その考え方が野蛮人だという事だけじゃないの。

 あの貴族も貴方達も。

 言いたいのはそれだけ?」

 

一纏めで野蛮人ですか・・・

ムっとしながら無難に答える。

言いたい事は分からなくもないが、国家の環境に合わせているだけで

全てに偏見が入った意見を断定させるなどとは。

このお方は相当の世間知らずなのかもしれない。

現代人の視点で嗜虐心が湧いてきてツッコミを入れたくなった。


「少尉殿。魔王国は内戦に明け暮れているとお聞きしました。

 罪のない平和な我々発展途上国に比べて、

 争いに明け暮れる〈野蛮〉な先進国の魔王国は、

 その戦闘行為が〈野蛮〉の象徴だと思いませんか?

 我々発展途上国を野蛮と一義に定義するのは先進国の発言とは思えませぬ。」

「妾の国の内戦は宗教戦争によるものです。

 旧教とプロテスタントの聖戦です。

 馬鹿にしないで頂きたく。」


ああ宗教戦争だったのか。

前世だと例えば30年戦争とか。

という事はヴェストファーレン条約みたいなのが締結されれば

今度は外部へ発展して人間社会との戦争になる可能性もあるな。

圧倒的な国力の差から我が国が超大国の魔王国に攻め入る事は無いが、

今後は戦争になるリスクもあるということか。

意外と貴重な情報かもしれない。


「宗教戦争で血が流れると言われるのであれば、それも野蛮な行為。

 全ての人種の信仰の自由を保証すべきなのです。

 従来の権力の締め付けからの自由。

 人種の平等、言論の自由、表現の自由。

 人権を尊重する事で野蛮な行為は無くなるべきです。」

「妾たちの方が野蛮だと言いたい訳?」

「自由主義が認められれば、王侯貴族による社会的弾圧も階級論争も宗教弾圧も無くなります。」

「・・・。」


その自由主義の先が血生臭さいフランス革命やイギリスの名誉革命になるけどな。

国王や貴族から権力を剥奪するのは大きな犠牲の後である。

まあ僕は自由主義の国で生まれ育ったので

封建社会による階級社会も宗教戦争も暴力を振るう野蛮な行為でしかない。

未来の価値観を唱えても当然、伝わらないものであるが。


「お嬢様に無礼な発言は許しません。不敬罪です。」

「黙りなさい。イザベラ。その様な発言は認めません。

 汝はエリオスとか言ったわね。名前は覚えたわ。

 貴方1人が空虚な妄想を抱えた所でこの国の社会は何も変わらないのよ。

 所詮は野蛮人の国家ですわ。

 妾に言論で勝ったつもり?フン。

 本当に口が回る生意気な年下のチビの子供の癖に。

 全く無駄な時間だわ。

 行くわよ。イザベラ、ランベルト。」


一方的に発言を遮ると、そのまま王侯貴族の校舎に向かっていった。

やっぱり王侯貴族ですよね・・・

チビは余計だろうが。くすん。

まあ、説得するつもりも無い。

涙目で睨み付けてくる幼馴染の頭を撫でて校舎に戻る。

今後ロザリーナお嬢様とはもう会話する機会も無いだろうと勝手に思っていたら、

案外この狭い学校の中で他人のフリをすることが

メイドと執事の2人の悪魔のおかげで出来なくなってしまったのは、

後日の話である。

魔王国のロザリーナお嬢様との会話の続きです。

国体と文明度の違いが発言や行動に現れてきます。

実はエリオス君は未来を語っていますがこの時はまだ誰も気づきません。

今後、メイドと執事の2人の悪魔を中心に振り回される事になりますが

この時はさほど意識もしていませんでした。

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[気になる点] この33部での「醜い貴族に無条件で平伏する様な、  卑屈で軟弱な姿勢は気に入りません。  妾は汝らに興味はありません」 「貴方1人が空虚な妄想を抱えた所でこの国の社会は何も変わらないの…
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