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火薬バイオテクノロジー⑤ 王都の公衆衛生対策

 いったん王都に戻り、公衆衛生の話をする。

簡単にいうと汚染物の隔離とネズミ退治である。

他にも消石灰による消毒。

 消石灰は石灰岩を砕き、1,100℃くらいまで加熱して生石灰を

作ったあとに水に溶かす事でできる。

歴史は古来から存在していたらしい。

貝殻を粉砕してカルシウム成分を取り出す事も可能だ。

 強塩基であるために取扱は注意が必要であるが、

中世ヨーロッパでは消毒用として広く使われた。


「公衆衛生で、まずはトイレか」

 

 エリオス君がつぶやく。

衛生上よろしくないが当面は汲み取り式しかない。

水洗式などは恐らく王侯貴族の家にしかないであろう。

そのうち下水道を建築して水洗式にしたいがかなり先の話になる。

古代ローマと違って簡単にはいかないのであろうか。


 トイレのイメージは高床式の小屋にして、距離を離す。

定期的に土を被せて、回収する形をイメージしていた。

将来的には川から水を引っぱって来て、一箇所に集める案も良い。

もしくは、砂便所のイメージだろう。


「・・・という事でこんな絵のイメージで作って欲しいのですけど」

「世間にあるのと少し違うが、高床式は特殊でも無いから作れるぞ」

「よろしくおねがいします」

「しかし、トイレとな・・・」


 王都にある建築職人さんに手書きの絵で相談するエリオス君。

予算があるので外注さんにお願いして作ってもらう。

まあ2〜3台目はもっと工夫するだろうが、

まずは作りやすさを優先してお願いする。


 最終的には簡単な図面を書いて、木材か石材で作るのが良いだろうか?

基本的な構造は中世でも既にトイレは数多く存在するので、製作は難しくない。

あとはエリオス君の運用の考え一つになるであろう。

建築職人さんと会話しながらエリオス君の中で

ゆっくりイメージを固めていくしかない。


「考えるのは楽しいけど、実際にやるのは大変だな」

「まあ、エリ君。

 みんなに手伝ってもらおうにゃ」

「そうですね。アイヴィーリさん。

 一人で考えても疲れるだけですし」

「そうだにゃ」


 一旦は構想案を頭の奥にしまいこんで考え直すエリオス君。

まず高床式のトイレを作ってもらい、そこから改良案を

出してみようとエリオス君は思った。

まず職人さんにお願いして、後日改良する。


 資源として再利用する事も考慮して、

最終的な都市開発のプランはトーマス殿下や宰相閣下とも

議論すべきであろうと考えて一旦は保留にする


「次は消毒方法かな・・・」

「まあ一般的には石灰水だにゃ」

「石灰水は古来から存在していますからね。

 当然、この時代でも主流ですか。

 必要量を概算で算出して備蓄しておきましょう」

「ルールを決めるにゃ」

「あと欲しいのは石鹸かな」


 ウィルスが病原であれば、

本当は消毒用アルコールが欲しいのが本音である。

水冷式蒸留器でお酒と同様に90%位までならこの時代でも

製造可能であるが当然、高価である。

低アルコール濃度では殺菌作用はほとんどない。

繰り返しの蒸留作業が大変である。


 現在の工業用アルコールは原油成分を精製する際に

ナフサ分解からエチレンを作り、加水してエタノールにする。

この異世界では消毒用アルコールを格安に製造する事はできない。

高価であるが、貴族や富豪に売りつけるなら悪くはない。


 つい商売と紐づけて考えてしまうが、

高価な消毒液を買って使う文化はまだ無いであろう。

人々の意識が変わるには相当の時間がある。


「まずは手に入るものを集めましょう。

 それからはアイヴィーリさんに色々と研究してもらいます」

「にゃ!?」 

「いや、アイヴィーリさんも研究者じゃないですか・・・」

「丸投げだにゃん。

 エリ君」


 文句を言うアイヴィーリさんだが、こういう所は

おまかせしても良いだろうと、勝手にエリオス君は思った。

化学産業の発展には時間がかかるが、

是非協力してもらおうと、まずは心の中で思うのだった。



「最後にネズミ退治ですが・・・」

「どうするにゃ?」

「毒エサかなぁ」

「エリ君、残酷・・・」

「意外な反応ですね・・・」


 現代でも古い工場はネズミとの戦いである。

天敵の蛇がいなければネズミは非常に捕まえにくい。

吸着板とか煙とか檻とかもあるが、

侵入経路を塞ぐのが第一である。

いつも同じ経路を通るので、フンなどで通り道を調べるのである。

そのあとに毒エサなどで駆除する。


 しかしネズミは毒エサに耐える奴も出てくるから注意が必要である。

奴らは結構賢い生き物なので簡単に駆除できない。

しかもすぐに数が増えるのである。

おまけに衛生的に最悪である。


「いずれにしろ、侵入経路を調査してから

 退治です。

 賞金も微量ながらつけましょう。

 都市ネズミは害獣なので駆逐しなければなりません」

「そこは調べますかにゃ」

「王都は広いですから、みんなで手分けして調べましょう。


 後日、野良ネズミ退治プロジェクトがひっそりと発足する

のであったが、簡単に駆除できる訳もなかった。

排水口とか、建屋の隙間とか、虱潰しに塞いで

侵入経路を減らしながら毒エサや檻で仕留めていくしか無い。

当然、現代のような高度なアイテムがある訳でもないから

人海戦術である。

しかし、その効果は将来必ず現れるのであった。

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